行政書士の過去問
令和元年度
法令等 問10
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問題
行政書士試験 令和元年度 法令等 問10 (訂正依頼・報告はこちら)
次の文章は、公有水面埋立てに関する最高裁判所判決の一節である。次の下線を引いた(ア)~(オ)の用語のうち、誤っているものの組合せはどれか。
( 1 )海は、特定人による独占的排他的支配の許されないものであり、現行法上、海水に覆われたままの状態でその一定範囲を区画してこれを私人の所有に帰属させるという制度は採用されていないから、海水に覆われたままの状態においては、私法上(ア)所有権の客体となる土地に当たらない(略)。また、海面を埋め立てるために土砂が投入されて埋立地が造成されても、原則として、埋立権者が竣功認可を受けて当該埋立地の(ア)所有権を取得するまでは、その土砂は、海面下の地盤に付合するものではなく、公有水面埋立法・・・に定める原状回復義務の対象となり得るものである(略)。これらのことからすれば、海面の埋立工事が完成して陸地が形成されても、同項に定める原状回復義務の対象となり得る限りは、海面下の地盤の上に独立した動産たる土砂が置かれているにすぎないから、この時点ではいまだ当該埋立地は私法上(ア)所有権の客体となる土地に当たらないというべきである。
( 2 )公有水面埋立法・・・に定める上記原状回復義務は、海の公共性を回復するために埋立てをした者に課せられた義務である。そうすると、長年にわたり当該埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置され、(イ)公共用財産としての形態、機能を完全に喪失し、その上に他人の平穏かつ公然の(ウ)占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、これを(イ)公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、もはや同項に定める原状回復義務の対象とならないと解すべきである。したがって、竣功未認可埋立地であっても、上記の場合には、当該埋立地は、もはや公有水面に復元されることなく私法上所有権の客体となる土地として存続することが確定し、同時に、(エ)明示的に公用が廃止されたものとして、(オ)消滅時効の対象となるというべきである。
(最二小判平成17年12月16日民集59巻10号2931頁)
( 1 )海は、特定人による独占的排他的支配の許されないものであり、現行法上、海水に覆われたままの状態でその一定範囲を区画してこれを私人の所有に帰属させるという制度は採用されていないから、海水に覆われたままの状態においては、私法上(ア)所有権の客体となる土地に当たらない(略)。また、海面を埋め立てるために土砂が投入されて埋立地が造成されても、原則として、埋立権者が竣功認可を受けて当該埋立地の(ア)所有権を取得するまでは、その土砂は、海面下の地盤に付合するものではなく、公有水面埋立法・・・に定める原状回復義務の対象となり得るものである(略)。これらのことからすれば、海面の埋立工事が完成して陸地が形成されても、同項に定める原状回復義務の対象となり得る限りは、海面下の地盤の上に独立した動産たる土砂が置かれているにすぎないから、この時点ではいまだ当該埋立地は私法上(ア)所有権の客体となる土地に当たらないというべきである。
( 2 )公有水面埋立法・・・に定める上記原状回復義務は、海の公共性を回復するために埋立てをした者に課せられた義務である。そうすると、長年にわたり当該埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置され、(イ)公共用財産としての形態、機能を完全に喪失し、その上に他人の平穏かつ公然の(ウ)占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、これを(イ)公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、もはや同項に定める原状回復義務の対象とならないと解すべきである。したがって、竣功未認可埋立地であっても、上記の場合には、当該埋立地は、もはや公有水面に復元されることなく私法上所有権の客体となる土地として存続することが確定し、同時に、(エ)明示的に公用が廃止されたものとして、(オ)消滅時効の対象となるというべきである。
(最二小判平成17年12月16日民集59巻10号2931頁)
- ア・ウ
- ア・オ
- イ・ウ
- イ・エ
- エ・オ
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この過去問の解説 (3件)
01
同裁判の要旨は次の通りです。「公有水面埋立法に基づく埋立免許を受けて埋立工事が完成した後竣功認可がされていない埋立地であっても,長年にわたり当該埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置され,公共用財産としての形態,機能を完全に喪失し,その上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したがそのため実際上公の目的が害されるようなこともなく,これを公共用財産として維持すべき理由がなくなり,同法に基づく原状回復義務の対象とならなくなった場合には,土地として私法上所有権の客体になる。」
ア〇 所有権 「海は,特定人による独占的排他的支配の許されないものであり,現行法上,海水に覆われたままの状態でその一定範囲を区画してこれを私人の所有に帰属させるという制度は採用されていないから,海水に覆われたままの状態においては,私法上『所有権』の客体となる土地に当たらない」
イ〇 公共用 「長年にわたり当該埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置され,『公共用』財産としての形態,機能を完全に喪失し,その上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが,そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく,これを『公共用』財産として維持すべき理由がなくなった場合には,もはや同項に定める原状回復義務の対象とならないと解すべきである。」
ウ〇 占有 「長年にわたり当該埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置され,公共用財産としての形態,機能を完全に喪失し,その上に他人の平穏かつ公然の『占有』が継続したが,そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく,これを公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には,もはや同項に定める原状回復義務の対象とならないと解すべきである。」
エ× 明示的→黙示的 「したがって,竣功未認可埋立地であっても,上記の場合には,当該埋立地は,もはや公有水面に復元されることなく私法上所有権の客体となる土地として存続することが確定し,同時に,『黙示的』に公用が廃止されたものとして,取得時効の対象となるというべきである」
オ× 消滅時効→取得時効 「したがって,竣功未認可埋立地であっても,上記の場合には,当該埋立地は,もはや公有水面に復元されることなく私法上所有権の客体となる土地として存続することが確定し,同時に,黙示的に公用が廃止されたものとして,『取得時効』の対象となるというべきである」
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02
ア:〇
海は、公物であって、海水に覆われたままの状態においては、私法上「所有権」の客体となる土地にはあたりません。
判例(最判S61.12.16)は、「海は、古来より自然の状態のままで一般公衆の共同使用に供されてきたところのいわゆる公共用物であって、国の直接の公法的支配管理に服し、特定人による排他的支配の許されないものであるから、そのままの状態においては、所有権の客体たる土地にあたらない」としています。
イ:〇
海や河川などの自然は、一般公衆の共同使用となる公共用物です。
ウ:〇
占有とは、物や土地を支配している状態のことをいいます。
エ:×
「明示的」に公用が廃止されたものとするのではなく、「黙示的」に公用が廃止されたものとなります。
判例(最判S51.12.24)は、「公共用財産としての形態、機能を全く喪失するなど、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立を妨げない」としています。
オ:×
「消滅時効」の対象となるのではなく、「取得時効」の対象となります(最判S51.12.24参照)。
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03
正しい記述です。
イ 〇
正しい記述です。
ウ 〇
正しい記述です。
エ ×
明示的→× 黙示的→〇
オ ×
消滅時効→× 取得時効→〇
よって正解は⑤です。
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