行政書士の過去問
令和2年度
法令等 問12
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問題
行政書士試験 令和2年度 法令等 問12 (訂正依頼・報告はこちら)
行政手続法の規定する聴聞と弁明の機会の付与に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 聴聞、弁明の機会の付与のいずれの場合についても、当事者は代理人を選任することができる。
- 聴聞は許認可等の取消しの場合に行われる手続であり、弁明の機会の付与は許認可等の拒否処分の場合に行われる手続である。
- 聴聞が口頭で行われるのに対し、弁明の機会の付与の手続は、書面で行われるのが原則であるが、当事者から求めがあったときは、口頭により弁明する機会を与えなければならない。
- 聴聞、弁明の機会の付与のいずれの場合についても、当該処分について利害関係を有する者がこれに参加することは、認められていない。
- 聴聞、弁明の機会の付与のいずれの場合についても、当事者は処分の原因に関するすべての文書を閲覧する権利を有する。
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この過去問の解説 (3件)
01
正解.1
本問は、聴聞及び弁明の機会の付与に関する規定からの出題ですが、本試験において、聴聞との比較問題は非常に多いので、聴聞と弁明の機会についてきちんと違いを頭に入れておきましょう。
1.妥当
聴聞の通知を受けた者は代理人を選任することができます。
また、聴聞に関する手続きは、弁明の機会の付与について準用しますから、当事者は弁明の機会の付与にも代理人を選任することができます。
♦ 行政手続法第16条1項 15条1項の通知(聴聞)を受けた者は代理人を選任することができる。
♦ 同法第31条 第15条3項(聴聞の通知の方式)及び16条(代理人)の規定は、弁明の機会の付与について準用する。
2.妥当でない
不利益処分をしようとする場合には、行政庁は聴聞か、弁明の機会の付与などの意見陳述のための手続きをとらなければなりません。
・聴聞は許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき(行政手続法第13条1項1号イ)。
・弁明の機会の付与は、聴聞をする不利益処分に該当しない場合(同法13条1項2号)。
したがって、弁明の機会の付与は、許認可等の拒否処分の場合ではありません。
3.妥当でない
聴聞は口頭審理(行政手続法第15条2項1号)ですので、前半部分は妥当です。
弁明の機会の付与は書面審理ではありますが、口頭で審理できるのは当事者からの求めがあったときではなく、行政庁が口頭ですることを認めたときです(行政手続法第29条1項)。
4.妥当でない
聴聞に関しては、聴聞の主宰者が必要があると認めたときは、当事者以外の利害関係を有する者は聴聞に参加することを求め、又は参加することができます。
(行政手続法第17条1項)
しかし、行政手続法第31条の聴聞手続の準用に、第17条の規定は準用されていないため、弁明の機会の付与の場合の利害関係を有する者の参加は認められていません。
したがって、聴聞、弁明の機会の付与いずれの場合にも、利害関係を有する者の参加が認められていないわけではありません。
5.妥当でない
当事者に文書閲覧権利があるのは、聴聞の通知があったときから聴聞終結時の間です(行政手続法第18条1項)。
しかし、第31条によれば、第18条1項の規定は弁明の機会の付与に準用していませんから、弁明の機会の付与の場合の当事者には文書閲覧の権利はありません。
したがって、いずれの場合にも当事者に文書の閲覧権利があるわけではなく、聴聞の場合のみということになります。
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02
行政手続法16条1項、31条により、正しいです。
2. 誤り
・聴聞…13条1項1号のイロハニに該当するときに行われます。
・弁明の機会の付与…13条1項1号のイロハニに該当しないときに行われます。
※なお、「申請により求められた許認可等を拒否する処分」は不利益処分に当たらないので、聴聞も弁明の機会の付与も行う義務はありません
(行政手続法2条4号ロ)。
【行政手続法第13条1項】
第十三条 行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
一 次のいずれかに該当するとき 聴聞
イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
ロ イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。
二 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与
3. 誤り
「当事者から求めがあったときは、口頭により弁明する機会を与えなければならない」が間違っています。
与えなければならない訳ではありません。義務ではありません。
(参照:行政手続法20条2項、29条1項)
4. 誤り
・聴聞→認められています(行政手続法17条1項)
・弁明の機会の付与→認められていません
(※行政手続法17条は準用されていません)
参照:行政手続法17条1項、(31条)
5. 誤り
・聴聞→当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができます
(行政手続法18条1項)。
・弁明の機会の付与→上記のような権利はありません
(※行政手続法18条は準用されていません)。
参照:行政手続法18条1項、(31条)
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03
本問は、不利益処分をする前の攻撃、防御についてです。
例えば、刑法犯の場合、刑事罰が科される前に刑事裁判をして、被告人の言い分を聞いたりして、本当にその刑罰を科すのが正しいのかを刑罰を科す前に審査しますよね。
これの行政版だと思ってもらえれば分かりやすいと思います。
ただ、行政手続法上の不利益処分は確かに名宛人の権利、利益が侵害されますが、刑事罰ほどではないですよね。
そこで、刑事事件のように事前に「裁判」をするのではなく、行政庁に呼び出して処分の当事者の言い分を聞く(聴聞)や、「何か言いたいことがあったら、書面を提出してね」という弁明という手続きが必要という事です。
聴聞、弁明は、不利益処分をする前に当事者の言い分を聞いて、本当にその処分をするのが正しいのか考えるための手続きです。
ただ、処分の当事者は、聴聞に呼ばれるのも初めての人も多いかと思いますし、弁明書を作成したこともない人がほとんどだと思います。
そこで、例えば弁護士などの専門家にお願いできると、処分の当事者も安心ですよね。
ということで、聴聞や弁明は当事者は代理人を選定することができます。
よって、本記述は正しいです。
根拠条文 行政手続法16条、31条
聴聞や弁明は不利益処分をする前に処分の当事者の言い分を聞くための手続きです。
許認可等の拒否処分は不利益処分ではなく、申請に対する処分ですので、弁明の機会の付与や聴聞をする必要はありません。
よって、本記述は誤っています。
聴聞は処分の当事者の言い分を聞く場面です。
一方、弁明は処分の当事者が言い分を書いた弁明書を行政庁に提出する手続きです。
よって、弁明の機会の付与においては、当事者から求めがあったときであっても、口頭により弁明をする機会を与える必要はありません。
ただし、行政庁が必要と認めた場合は、口頭で弁明する機会を与えることもできますが、必ず与えなければならない訳ではありません。
よって、本記述は誤っています。
聴聞の機会には利害関係を有する者は、行政庁の許可を得て参加することができます。(行政手続法17条第1項)
これは、聴聞が行われるのは、許認可等の取り消しのような重大な不利益処分であることが多く、その場合、当事者以外も不利益を被ることがあるからです。
一方、弁明については、利害関係人の参加について行政手続法は特に規定していません。
弁明書を提出することができるのは、処分の当事者であって、それ以外の者(代理人を除く)は利害関係人であっても、弁明書を作成し、行政庁に提出することはできません。
よって、本記述は誤っています。
不利益処分をされる当事者にとって、「なぜ自分がこのような処分を受けなければならないのか」という事は重要ですよね。
これによって、攻撃、防御の方法も変わってきますので、聴聞、弁明の機会の付与いずれにおいても処分の原因に関する文書の閲覧を求めることができるべきであると思います。
しかし、行政手続法上は聴聞に関しては文書等の閲覧ができる(行政手続法18条第1項)のですが、弁明に関してはこれができないのです。
おかしな制度だとはおもいますが、「弁明=文書閲覧不可」と覚えていただくといいと思います。
よって、本記述は誤っています。
どうしても分からない場合の裏技
本記述には「すべて」と含まれています。
「すべて」というワードが入っていた時に、「もしかしたら閲覧請求できない書面もあるかもしれない」と考えると、この記述、怪しく見えてくると思います。
もちろん、しっかりと考えて回答するに越したことはありませんが、どうしても分からないときは、「すべて」や「直ちに」、「例外なく」など、絶対こうなると言い切っている記述は誤っていると考えるといいと思います。
本問は不利益処分の事前の攻撃、防御に関しての問題です。
不利益処分、受けたことない人が多いと思いますので、「聴聞」「弁明」と言われてもわかりにくいと思います。
しかし、間違った不利益処分をしない為の重要な手続きなので、しっかりと学習しておいてください。
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