行政書士の過去問
令和4年度
法令等 問5
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問題
行政書士試験 令和4年度 法令等 問5 (訂正依頼・報告はこちら)
適正手続に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 告知、弁解、防御の機会を与えることなく所有物を没収することは許されないが、貨物の密輸出で有罪となった被告人が、そうした手続的保障がないままに第三者の所有物が没収されたことを理由に、手続の違憲性を主張することはできない。
- 憲法は被疑者に対して弁護人に依頼する権利を保障するが、被疑者が弁護人と接見する機会の保障は捜査権の行使との間で合理的な調整に服さざるを得ないので、憲法は接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。
- 審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であっても、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。
- 不利益供述の強要の禁止に関する憲法の保障は、純然たる刑事手続においてばかりだけでなく、それ以外にも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶ。
- 不正な方法で課税を免れた行為について、これを犯罪として刑罰を科すだけでなく、追徴税(加算税)を併科することは、刑罰と追徴税の目的の違いを考慮したとしても、実質的な二重処罰にあたり許されない。
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この過去問の解説 (3件)
01
適正手続の保障についての出題です。
各選択肢の手続きや適用される刑罰の実態が、法律根拠のもと行われているかを考えます。
適正手続とは、法律に則った手続きでなければ刑罰を科せられないということです。
第三者所有物没収事件(最大判昭和37年11月28日)で、第三者の所有物を没収する際に、その所有者に、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく所有物を没収することは許されない、そして救済を求めることができるとし、違憲であるとしました。
よって、文中の「手続の違憲性を主張することはできない。」という点で、妥当ではありません。
接見交通とは、刑事事件で身柄を拘束されている者(被疑者)が、弁護士等に面会する権利をいいます。
憲法34条には、何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない・・・とあります。
これは、理由もなく捕まることや弁護士に依頼する権利を与えられない状態で捕まることはないという、警察や検察から被疑者の権利を守る条文です。
よって、文中の「憲法は接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。」という点で、妥当ではありません。
高田事件(最大判昭和47年12月20日)で、裁判の途中で審理が事実上15年以上にわたり中断され、憲法37条1項の公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利が侵害されたという判例があります。そして、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなくても、この権利を根拠に審理を打ち切る非常救済手続きも認めるとしています。
よって、文中の「法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。」としているのは、妥当ではありません。
川崎民商事件(最大判昭和47年11月22日)で、税務署がXの確定申告について調査をしようとしたところ、Xは事前通知がないので調査を拒否し、検査拒否罪として起訴された。
これに対し、Xは憲法35条(住居の不可侵)および憲法38条(黙秘権)に違反するとして訴えました。結果としては、どちらも違反しない。
収税官史の質問・検査規定そのものが自己に不利益な供述を強制するものとすることはできないとしています。
憲法38条は、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障しており、
判例では、純然たる刑事手続においてばかりだけでなく、それ以外にも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続きには、等しく及ぶ。としています。
拷問などの直接的な強要はもちろんですが、供述しないと不利益を与えるといった間接的強要もされないことが保障されるということです。
よって、本選択肢が妥当です。
二重処罰とは、憲法39条にある「・・同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任は問われない」という条文のもと禁止されています。
本選択肢の犯罪刑罰と追徴税の併科がこれに違反するかの問題です。
追徴税は、納税申告義務違反という行政上の措置であり、
逋脱犯刑罰は、脱税者の不正行為の反社会性ないし反道理性に対する制裁です。
内容の性質を異とする為、二重処罰の禁止する趣旨を含むものでないと解しています。
よって、文中の「実質的な二重処罰にあたり許されない。」という点で、妥当ではありません。
憲法は条文が抽象的なため、過去の判例においての条文解釈を基礎としています。
適正手続については、応用として行政手続や私人間効力にも適用されるかを判例を読み区別してみてください。
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02
本問は適正手続きに関する問題であります。
本記述は第三者物所有物没収事件(最判昭和37年11月28日刑集第16巻11号1593頁)であります。
これについて判例は「憲法29条1項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また同31条は、何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他刑罰を科せられないと規定し(一部中略)所有物を没収させられる第三者についても、告知、弁解、防御の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な手続きによらないで、財産権を侵害する制裁を科すに外ならないからである」としています。
よって、本記述は誤っています。
接見交通権は、憲法34条の「直ちに弁護人に依頼する権利」という条文から認められています。
よって、本記述は誤っています。
ちなみに、刑事訴訟法39条第1項には接見交通権について規定しており、同条第3項には接見指定(接見の日時、場所及び時間を指定するもの)について規定されているが、「その指定は被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない」としています。
よって、本記述は誤っています。
高田事件(最判昭和47年12月20日刑集第26巻10号631頁)は、「憲法37条1項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の補償に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められるような異常な事態が生じた場合には、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことを認めている趣旨の規定である」としています。
よって、本記述は誤っています。
判例(川崎民商事件、最判昭和47年11月22日、刑集第26巻9号554頁)は、「憲法38条1項による保障は、純然たる刑事手続き以外においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続きには等しく及びものである」としています。
よって、本記述は正しいです
行政処分と刑事罰は別の手続きであり、これら二つを科したとしても、二重処罰にはあたりません。
よって、本記述は誤っています。
本問は適正手続きに関する問題であります。
適正手続きは、一見憲法31条だけの問題かのように思えますが、行政手続法や刑事訴訟法など他の法律ともつながってくる問題になります。
しかし、行政手続法はともかく出題されない刑事訴訟法や国税通則法などについては、特に学習する必要はないかと思います。
それよりも、憲法判例で適正手続きに関するところをしっかり復習するようにしてください。
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03
適正手続に関する出題です。
日本国憲法31条により、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」とされ、最高裁判所大法廷判決昭和37年11月28日の第三者所有物没収事件で、事件により、「貨物の密輸を企てた被告人が有罪判決を受け、犯罪にかかわる貨物等が没収された際に、第三者の所有物も混じって没収された。」とされ、争点により、「第三者に告知、聴聞の機会を与えないでした没収は、憲法29条及び31条に反しないか。」とされ、判旨により、「第三者所有物の没収に際して、所有者は告知、弁解、防御の機会を与えないのは、適正な法律手続きによらないで財産権を侵害する制裁を科するに外ならない。したがって、その機会を与えないでした没収は、憲法29条及び31条に反する。」とされます。
つまり、「手続の違憲性を主張することはできない」という部分が、妥当ではありません。
日本国憲法34条により、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」とされ、日本国憲法37条3項により、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」とされ、日本国憲法38条1項により、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」とされ、最高裁判所大法廷判決平成11年3月24日により、「憲法34条前段は、[何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。]と定める。この弁護人に依頼する権利は、身体の拘束を受けている被疑者が、拘束の原因となっている嫌疑を晴らしたり、人身の自由を回復するための手段を講じたりするなど自己の自由と権利を守るため弁護人から援助を受けられるようにすることを目的とするも のである。したがって、右規定は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障しているものと解すべきである。」とされます。
つまり、「接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない」という部分が、妥当ではありません。
日本国憲法37条1項により、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」とされ、最高裁判所大法廷判決昭和47年12月20日の高田事件で、事案により、「起訴後15年以上にわたって審理が中断されていた被告人について、憲法37条1項の迅速な裁判を受ける権利の侵害を理由に控訴棄却あるいは免訴の判決を下すことが可能であるかが問題となった。」とされ、判旨により、「審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する。」とされます。
つまり、「迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であっても、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。」という部分が、妥当ではありません。
日本国憲法33条により、「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」とされ、日本国憲法35条1項により、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」とされ、日本国憲法38条1項により、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」とされ、最高裁判所大法廷判決昭和47年11月22日の川崎民商事件で、事件により、「個人事業主に対して、令状のないままの税務署類の検査を行い、調査対象者は税務職員がする質問に誠実に答える義務を負わされ、反すると罰則ありという税務署の質問検査権に基づく調査によって、Xが脱税していることが発覚し、結果的に脱税容疑で告発されてしまった事案。」とされ、争点により、「税務署の質問検査権に基づく調査は、憲法35条の令状主義、憲法38条の不利益供述強要の禁止に反するのではないか。Xは、自己への行政手続きが憲法31条が保証する適正手続きに違反すると主張した。」とされ、判旨により、「憲法35条、38条は、行政手続きにも原則として及ぶとしながらも、以下のように述べた。質問検査権の強制の度合いはそれ程高くはないし、実効性のある検査制度たるには罰則をもって臨む必要もある。また、本件処分は確実公平な徴税のために申告漏れを発見するためのものであり、脱税を摘発し、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を有するものではないから、不利益供述の強要にあたるわけでもない。以上から、質問検査権の制度は合憲である。」とされるので、妥当です。
日本国憲法39条により、「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」とされ、最高裁判所大法廷判決昭和33年4月30日で、判事事項により、「①法人税法(昭和22年法律第28号。昭和25年法律第72号による改正前のもの)第43条の追徴税と罰金とを併科することは憲法第39条に違反するか、➁法人税法(昭和22年法律第28号。昭和25年法律第72号による改正前のもの)第48条第3項の法意。」とされ、裁判要旨により、「①法人税法43条の追徴税と罰金とを併科することは、憲法39条に違反しない、➁法人税法48条3項の法意は、同条1項の逋脱犯があつた場合において、その逋脱税額が未徴収であるときは、徴税庁は、同法29条以下の課税標準の更正または決定の手続により、直ちに、その課税標準を更正または決定してその税金を徴収すべき趣旨を定めたにとどまる。すなわち同項は、徴税庁が刑事裁判において確定された逋脱税額に拘束されてその額のみを徴収すべき趣旨を定めたものではなく、また逋脱税額のほかに同法43条の追徴税の徴収を許さない趣旨を定めたものではない。」とされます。
つまり、「実質的な二重処罰にあたり許されない」という部分が、妥当ではありません。
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