行政書士の過去問 令和4年度 法令等 問5
この過去問の解説 (2件)
適正手続の保障についての出題です。
各選択肢の手続きや適用される刑罰の実態が、法律根拠のもと行われているかを考えます。
適正手続とは、法律に則った手続きでなければ刑罰を科せられないということです。
第三者所有物没収事件(最大判昭和37年11月28日)で、第三者の所有物を没収する際に、その所有者に、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく所有物を没収することは許されない、そして救済を求めることができるとし、違憲であるとしました。
よって、文中の「手続の違憲性を主張することはできない。」という点で、妥当ではありません。
接見交通とは、刑事事件で身柄を拘束されている者(被疑者)が、弁護士等に面会する権利をいいます。
憲法34条には、何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない・・・とあります。
これは、理由もなく捕まることや弁護士に依頼する権利を与えられない状態で捕まることはないという、警察や検察から被疑者の権利を守る条文です。
よって、文中の「憲法は接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。」という点で、妥当ではありません。
高田事件(最大判昭和47年12月20日)で、裁判の途中で審理が事実上15年以上にわたり中断され、憲法37条1項の公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利が侵害されたという判例があります。そして、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなくても、この権利を根拠に審理を打ち切る非常救済手続きも認めるとしています。
よって、文中の「法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。」としているのは、妥当ではありません。
川崎民商事件(最大判昭和47年11月22日)で、税務署がXの確定申告について調査をしようとしたところ、Xは事前通知がないので調査を拒否し、検査拒否罪として起訴された。
これに対し、Xは憲法35条(住居の不可侵)および憲法38条(黙秘権)に違反するとして訴えました。結果としては、どちらも違反しない。
収税官史の質問・検査規定そのものが自己に不利益な供述を強制するものとすることはできないとしています。
憲法38条は、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障しており、
判例では、純然たる刑事手続においてばかりだけでなく、それ以外にも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続きには、等しく及ぶ。としています。
拷問などの直接的な強要はもちろんですが、供述しないと不利益を与えるといった間接的強要もされないことが保障されるということです。
よって、本選択肢が妥当です。
二重処罰とは、憲法39条にある「・・同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任は問われない」という条文のもと禁止されています。
本選択肢の犯罪刑罰と追徴税の併科がこれに違反するかの問題です。
追徴税は、納税申告義務違反という行政上の措置であり、
逋脱犯刑罰は、脱税者の不正行為の反社会性ないし反道理性に対する制裁です。
内容の性質を異とする為、二重処罰の禁止する趣旨を含むものでないと解しています。
よって、文中の「実質的な二重処罰にあたり許されない。」という点で、妥当ではありません。
憲法は条文が抽象的なため、過去の判例においての条文解釈を基礎としています。
適正手続については、応用として行政手続や私人間効力にも適用されるかを判例を読み区別してみてください。
本問は適正手続きに関する問題であります。
本記述は第三者物所有物没収事件(最判昭和37年11月28日刑集第16巻11号1593頁)であります。
これについて判例は「憲法29条1項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また同31条は、何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他刑罰を科せられないと規定し(一部中略)所有物を没収させられる第三者についても、告知、弁解、防御の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な手続きによらないで、財産権を侵害する制裁を科すに外ならないからである」としています。
よって、本記述は誤っています。
接見交通権は、憲法34条の「直ちに弁護人に依頼する権利」という条文から認められています。
よって、本記述は誤っています。
ちなみに、刑事訴訟法39条第1項には接見交通権について規定しており、同条第3項には接見指定(接見の日時、場所及び時間を指定するもの)について規定されているが、「その指定は被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない」としています。
よって、本記述は誤っています。
高田事件(最判昭和47年12月20日刑集第26巻10号631頁)は、「憲法37条1項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の補償に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められるような異常な事態が生じた場合には、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことを認めている趣旨の規定である」としています。
よって、本記述は誤っています。
判例(川崎民商事件、最判昭和47年11月22日、刑集第26巻9号554頁)は、「憲法38条1項による保障は、純然たる刑事手続き以外においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続きには等しく及びものである」としています。
よって、本記述は正しいです
行政処分と刑事罰は別の手続きであり、これら二つを科したとしても、二重処罰にはあたりません。
よって、本記述は誤っています。
本問は適正手続きに関する問題であります。
適正手続きは、一見憲法31条だけの問題かのように思えますが、行政手続法や刑事訴訟法など他の法律ともつながってくる問題になります。
しかし、行政手続法はともかく出題されない刑事訴訟法や国税通則法などについては、特に学習する必要はないかと思います。
それよりも、憲法判例で適正手続きに関するところをしっかり復習するようにしてください。
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