行政書士の過去問
令和4年度
法令等 問7
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問題
行政書士試験 令和4年度 法令等 問7 (訂正依頼・報告はこちら)
裁判の公開に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 裁判は、公開法廷における対審および判決によらなければならないので、カメラ取材を裁判所の許可の下に置き、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない。
- 裁判所が過料を科する場合は、それが純然たる訴訟事件である刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない。
- 証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、裁判の公開に関する憲法の規定には違反しない。
- 傍聴人は法廷で裁判を見聞できるので、傍聴人が法廷でメモを取る行為は、権利として保障されている。
- 裁判官の懲戒の裁判は行政処分の性質を有するが、裁判官の身分に関わる手続であるから、裁判の公開の原則が適用され、審問は公開されなければならない。
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この過去問の解説 (3件)
01
憲法82条 対審及び判決の公開より、裁判は公開で行い、誰でも傍聴することができることとしています。「公開」「傍聴」についての判例問題です。
北海タイムス事件(最大判昭和33年2月17日)
取材の為、カメラマンが公判開始前の写真撮影許可を告知されていたが、公判開始後に記者席を離れ裁判長の制止を無視して被告人の写真撮影をし、過料を言い渡されました。憲法21条表現の自由に基づき、取材活動の自由は認められるが、無制限ではなく秩序を乱し、被告人等の正当な利益を害することは許されないとしました。
そして、公判廷での写真撮影が裁判所の裁量に委ねることは憲法に違反しないとしています。
よって、文中の「原則として許されない」とまではなっていない為、妥当ではありません。
過料(秩序罰)の裁判を非公開・非対審で行う事の合憲性のついて、
判例は、一種の行政処分の性質を有し、もともと純然たる訴訟事件としての性質の認められる刑事制裁を科する作用とは異なるものであり、必ずしも裁判所がこれを科することを憲法82条、32条の定めるところによる要件によって行わなければならないものではない、としています。
よって、文中の「刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない」としている点で、妥当ではありません。
憲法37条1項では、被告人は公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を保障しています。
証人尋問の際の遮へい措置が公開の原則に違反するかについての判例です。
衝立など相手が見えないようにする措置あるいはビデオリンク方式によって遮へい措置が採られても、審理が公開されていることには変わりないから、憲法に違反しないとしています。
よって、この選択肢が妥当です。
レペタ事件(最大判平成元年3月8日)
公判の際、傍聴人が法廷でメモを取る行為を裁判長に許可されなかった措置が、憲法82条、21条に違反するとして国に損害賠償を請求した判例です。
結果として、傍聴人のメモ行為は認めるが、憲法を根拠にその権利を認めたものではなく、筆記行為の自由も直接保障されるものではないとしています。
場合によっては、法廷警察権の裁量によって制限・禁止できる状況をおいているわけです。
よって、文中の「権利として保障されている」となっているので妥当ではありません。
寺西判事補事件(最大判平成10年12月1日)
裁判官の懲戒である分限事件は、裁判形式で懲戒を行いますが、司法権の作用には当たらない為、憲法82条1項は適用されないとしています。
よって、文中は「審問は公開されなければならない」となっている為、妥当ではありません。
司法については、憲法76条~82条辺りが重要条文になるかと思います。
司法権の範囲や司法権の限界等、基礎的な知識を理解し、発展問題として過去判例を元に細かい解釈を習得していきましょう。
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02
本問は裁判の公開に関する問題です。
裁判の公開は、一般市民に裁判を公開することにより、公正な裁判を担保するものであります。
判例(北海タイムズ事件、最判昭和33年2月17日、刑集第12巻2号253頁)は、「公判廷における写真の撮影等は、その行われる時、場所等のいかんによっては、前記のような好ましくない結果を生ずる恐れがあるもので、刑事訴訟規則215条は写真撮影の許可等を裁判所の裁量に委ね、その許可に従わないかぎりこれらの行為をすることができないことを明らかにしたのであって、右規則は憲法に違反するものではない」としています。
よって、本記述は誤っています。
判例(最判昭和41年12月27日民集第20巻10号2279頁)は、「過料を科す作用は、もともと純然たる訴訟事件としての性質としての性質の認められる刑事制裁を科す作用とは異なるのであるから、憲法82条、32条の定めるところにより、公開の法廷における対審及び判決によって行われなければならないものではない」としています。
よって、本記述は誤っています。
判例(最判平成17年4月14日刑集第59巻3号259頁)は、「証人尋問が公開の法廷で行われる場合、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られ、あるいわビデオリンク方式によることとされ、さらには、ビデオリンク方式によった上で傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりないから、これらの規定は、憲法82条1項、37条1項に違反するものではない」としています。
よって、本記述は正しいです。
判例(レペタ訴訟、最判平成元年3月8日民集第43巻2号89頁)は、「法廷で傍聴人がメモを取ることは、その見聞する裁判を認識記憶するためにされるものである限り、憲法21条1項の精神に照らし、尊重に値し、故なく妨げられてはならない」としています。
よって、本記述は誤っています。
判例(最判平成10年12月1日民集第52巻9号1761頁)は、「裁判官に対する懲戒は、裁判所が裁判という形式をもってすることとされるが、一般の公務員に対する懲戒と同様、その実質においては裁判官に対する行政処分の性質を有するものである」としており、「懲戒の裁判は純然たる訴訟事件についての裁判には当たらないことが明らかである。(一部中略)分限事件は、訴訟とは全く構造を異にするというほかならない。したがって、分限事件については憲法82条1項の適用はないものというべきである」としています。
よって、本記述は誤っています。
公法系の問題は判例が重要です。
判例の復習をしっかりしましょう。
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03
裁判の公開に関する出題です。
日本国憲法12条により、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」とされ、日本国憲法21条1項により、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」とされ、日本国憲法21条2項により、「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」とされ、日本国憲法82条1項により、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」とされ、最高裁判所大法廷決定昭和33年2月17日の北海タイムス事件で、判事事項により、「①報道のための取材活動と憲法21条、➁刑訴規則215条は憲法21条に違反するか。」とされ、裁判要旨により、「①新聞が真実を報道することは、憲法21条の認める表現の自由に属し、またそのための取材活動も認められなければならないことはいうまでもないが、その自由も無制限であるということはできず、たとい公判廷の情況を一般に報道するための取材活動であつても、その活動が公判廷における審判の秩序を乱し、被告人その他訴訟関係人の正当な利益を不当に害するが如きものはもとより許されないところである、➁刑訴規則215条は憲法21条に違反しない。」とされます。
つまり、「開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない」という部分が、妥当ではありません。
日本国憲法31条により、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」とされ、日本国憲法32条により、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」とされ、日本国憲法82条1項により、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」とされ、日本国憲法82条2項により、「裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。」とされ、最高裁判所大法廷決定昭和41年12月27日で、判事事項により、「①非訟事件手続法による過料の裁判の合憲性、➁前項の裁判に対する不服申立についての裁判の合憲性。」とされ、裁判要旨により、「①非訟事件手続法による過料の裁判は、憲法31条、32条、82条に違反しない、➁[①非訟事件手続法による過料]の裁判に対する不服申立についての裁判は、公開・対審の手続によらなくても、憲法32条、82条に違反しない。」とされます。
つまり、「それが純然たる訴訟事件である刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない」という部分が、妥当ではありません。
日本国憲法37条1項により、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」とされ、日本国憲法37条2項により、「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。」とされ、日本国憲法82条1項により、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」とされ、最高裁判所判決平成17年4月14日で、「証人尋問が公判期日において行われる場合、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られ、あるいはビデオリンク方式によることとされ、さらには、ビデオリンク方式によった上で傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、これらの規定は、憲法82条1項,37条1項に違反するものではない。」とされるので、妥当です。
日本国憲法14条1項により、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とされ、日本国憲法21条1項により、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」とされ、日本国憲法82条1項により、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」とされ、最高裁判所大法廷判決平成元年3月8日のレペタ事件で、判事事項により、「①法定で傍聴人がメモを取ることと憲法82条1項、➁法廷で傍聴人がメモを取ることと憲法21条1項、③法廷警察権行使についての裁量の範囲、④法廷でメモを取ることを報道機関の記者に対してのみ許可することと憲法14条1項、⑤法廷警察権の行使と国家賠償法一条一項の違法性。」とされ、裁判要旨により、「 ①憲法82条1項は、法廷で傍聴人がメモを取ることを権利として保障しているものではない、➁法廷で傍聴人がメモを取ることは、その見聞する裁判を認識記憶するためにされるものである限り、憲法21条1項の精神に照らし尊重に値し、故なく妨げられてはならない、③法廷警察権の行使は、裁判長の広範な裁量に委ねられ、その行使の要否、執るべき措置についての裁判長の判断は、最大限に尊重されなければならない、④法廷でメモを取ることを司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してのみ許可し、一般傍聴人に対して禁止する裁判長の措置は、憲法14条1項に違反しない、⑤法廷警察権の行使は、法廷警察権の目的、範囲を著しく逸脱し、又はその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情のない限り、国家賠償法1条1項にいう違法な公権力の行使ということはできない。」とされます。
つまり、「権利として保障されている」という部分が、妥当ではありません。
日本国憲法12条により、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」とされ、日本国憲法21条1項により、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」とされ、日本国憲法82条1項により、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」とされ、最高裁判所大法廷決定平成10年12月1日の寺西判事補事件で、事案により、「裁判官Xは、ある法案に反対する政治集会に出席し、身分を明かして発言したところ、Y高等裁判所は、Xの発言が裁判所法52条1号の禁止する[積極的に政治運動をすること]にあたることを理由として、Xを懲戒処分にしたため、これを争った。」とされ、決旨として、「三権分立主義のもとでは、司法権を担う裁判官には、中立性、公平性が要請される。また、積極的な政治運動の禁止をその行動のもたらす弊害の防止をねらいとして禁止するときは、同時にそれにより意見表明の自由が制約されることとなるが、それは行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎず、かつ、積極的に政治活動すること以外の行為により意見表明の自由までをも制約するものではない。したがって、裁判官について積極的な政治活動を禁止しても、憲法21条に違反しない。」とされます。
つまり、「裁判官の懲戒の裁判は行政処分の性質を有するが、裁判官の身分に関わる手続であるから、裁判の公開の原則が適用され、審問は公開されなければならない。」ということは、妥当ではありません。
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