行政書士の過去問
令和4年度
法令等 問10
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問題
行政書士試験 令和4年度 法令等 問10 (訂正依頼・報告はこちら)
行政調査に関する次の記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 警察官職務執行法には、警察官は、職務質問に付随して所持品検査を行うことができると規定されており、この場合には、挙動が異常であることに加えて、所持品を確認する緊急の必要性を要するとされている。
- 交通の取締を目的として、警察官が自動車の検問を行う場合には、任意の手段により、走行の外観上不審な車両に限ってこれを停止させることができる。
- 行政手続法においては、行政調査を行う場合、調査の適正な遂行に支障を及ぼすと認められない限り、調査の日時、場所、目的等の項目を事前に通知しなければならないとされている。
- 国税通則法には、同法による質問検査権が犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと定められていることから、当該調査において取得した資料をその後に犯則事件の証拠として利用することは認められない。
- 行政調査の実効性を確保するため、調査に応じなかった者に刑罰を科す場合、調査自体の根拠規定とは別に、刑罰を科すことにつき法律に明文の根拠規定を要する。
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この過去問の解説 (3件)
01
行政調査は、行政機関が行政目的で行う調査活動をいいます。
妥当ではありません。
警察官の職務質問において、所持品検査を行うことができるという規定はありません。
所持人の承諾が原則ですが、緊急性・必要性など相当と認められる限度において許容されるとしています。
妥当ではありません。
外観上不審な車両に限っているわけではなく、任意の協力のもと行うことができます。
妥当ではありません。
行政調査は、行政手続法に関しての規定はありません。
妥当ではありません。
問題文前半は合っていますが、
後半は、後に事件の証拠となったとしても、その捜査の為の手段として行使されたものではないので間違いです。
妥当です。
行政調査に応じない者へ刑罰を科す場合、調査の拒否による罰則があると法律に明文の根拠規定があるものでないといけません。
行政調査は、強制調査(法的根拠)・間接強制調査(罰則)・任意調査(法律根拠不要)があります。
税法の質問検査、警察官の職務質問などの判例は押さえておきましょう。
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02
本問は行政調査に関する問題でありますが、回答に刑事訴訟法の知識が必要となる問題もあり、少し難しいかと思います。
所持品検査の要件に挙動が異常である事や所持品を確認する緊急の必要性などは求められていません。
職務質問の適法性については、強制処分法定主義(刑事訴訟法197条第1項)に違反するか否かを検討した上で、これに違反すれば違法となりますが、違反しなくても捜査比例の原則に違反する場合、職務質問が違法となります。
捜査比例の原則とは、捜査が適法とされるには①捜査目的を達成する為に必要であり②社会通念上妥当な手段である事を要するというものです。
よって、本記述は誤っています。
交通の取り締まりを目的として警察官が自動車の検問を行う場合、①強制処分法定主義や、②捜査比例の原則に違反しない場合、外観上不審か否かに関わらず行うことができます。
よって、本記述は誤っています。
行政手続法は処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続きに関し定めている法律であり、行政調査についての規定はありません。
よって、本記述は誤っています。
判例(最判平成16年1月20日刑集第58巻1号26頁)は、「取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定されたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならないというべきである」としています。
よって、本記述は誤っています。
妥当です。
罪刑法定主義(憲法31条)から、予測可能性を担保する為に、調査に応じなかった場合にどのような刑罰を科すかを法律に明確に規定しなければなりません。
よって、本記述は正しいです。
本問は回答するのに刑事訴訟法の知識が必要となりますが、刑事訴訟法を学習するのはコスパが悪すぎます。
しかし、罪刑法定主義というワードさえ知っていれば、どの問題をマークすべきかすぐに判断ができるかと思います。
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03
行政調査に関する出題です。
日本国憲法31条により、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」とされ、日本国憲法33条により、「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」とされ、日本国憲法35条により、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」とされ、刑事訴訟法1条により、「この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」とされ、同法218条1項により、「察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。」とされ、警察官職務執行法2条1項により、「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。」とされ、最高裁判所判決昭和53年9月7日で、判事事項により、「①職務質問に附随して行う所持品検査の許容限度、➁職務質問に附随して行う所持品検査において許容される限度を超えた行為と認められた事例、③押収等の手続に違法のある証拠物とその証拠能力、④押収手続に違法のある証拠物について証拠能力が認められた事例。」とされ、裁判要旨により、「①職務質問に附随して行う所持品検査は所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される場合がある、➁警察官が、覚せい剤の使用ないし所持の容疑がかなり濃厚に認められる者に対して職務質問中、その者の承諾がないのに、その上衣左側内ポケツトに手を差し入れて所持品を取り出したうえ検査した行為は、職務質問に附随する所持品検査において許容される限度を超えた行為である、③証拠物の押収等の手続に憲法35条及びこれを受けた刑訴法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるべきである、④職務質問の要件が存在し、かつ、所持品検査の必要性と緊急性が認められる状況のもとで、必ずしも諾否の態度が明白ではなかつた者に対し、令状主義に関する諸規定を潜脱する意図なく、また、他に強制等を加えることなく行われた本件所持品検査において、警察官が所持品検査として許容される限度をわずかに超え、その者の承諾なくその上衣左側内ポケツトに手を差し入れて取り出し押収した点に違法があるに過ぎない本件証拠物の証拠能力は、これを肯定すべきである。」とされます。
つまり、「警察官は、職務質問に付随して所持品検査を行うことができると規定されており、この場合には、挙動が異常であることに加えて、所持品を確認する緊急の必要性を要するとされている」という部分が、妥当ではありません。
警察法2条1項により、「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。」とされ、同条2項により、「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」とされ、警察官職務執行法1条1項により、「この法律は、警察官が警察法に規定する個人の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。」とされ、同条2項により、「この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。」とされ、最高裁判所決定昭和55年9月22日で、判事事項により、「①交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動と警察法二条及び警察官職務執行法一条との関係、➁警察官による交通違反の予防、検挙を目的とする自動車の一せい検問の適法性。」とされ、裁判要旨により、「①警察法2条1項が交通の取締を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといつて無制限に許されるべきものでないことも同条二項及び警察官職務執行法1条などの趣旨にかんがみ明らかである、➁警察官が、交通取締の一環として、交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のため、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法である。」とされます。
つまり、「走行の外観上不審な車両に限ってこれを停止させることができる」という部分が、妥当ではありません。
行税手続法1条1項により、「この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。」とされ、同条2項により、「処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。」とされます。
つまり、「行政調査を行う場合、調査の適正な遂行に支障を及ぼすと認められない限り、調査の日時、場所、目的等の項目を事前に通知しなければならないとされている」という部分が、妥当ではありません。
国税通則法74条の8により、「当該職員の質問検査権等又は特定事業者等への報告の求めの規定による当該職員又は国税局長の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」とされ、最高裁判所決定平成16年1月20日で、判事事項により、「法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)一定に規定する質問又は検査の権限の行使により取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できる場合と同法一定の条文。」とされ、裁判要旨により、「法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)一定に規定する質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が同法一定の条文に反して犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない。」とされます。
つまり、「当該調査において取得した資料をその後に犯則事件の証拠として利用することは認められない」という部分が、妥当ではありません。
「行政調査の実効性を確保するため、調査に応じなかった者に刑罰を科す場合、調査自体の根拠規定とは別に、刑罰を科すことにつき法律に明文の根拠規定を要する。」ということは、妥当です。
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