行政書士の過去問
令和5年度
法令等 問9

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問題

行政書士試験 令和5年度 法令等 問9 (訂正依頼・報告はこちら)

行政上の法律関係に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア  社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、公権力の行使が介在する余地はないから、処分によって規律されることはなく、もっぱら契約によるものとされている。
イ  未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定により規律されるものであるから、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して信義則上の安全配慮義務を負わない。
ウ  食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行った場合、食品衛生法は取締法規であるため、当該販売にかかる売買契約が当然に無効となるわけではない。
エ  法の一般原則である信義誠実の原則は、私人間における民事上の法律関係を規律する原理であるから、租税法律主義の原則が貫かれる租税法律関係には適用される余地はない。
  • ア・イ
  • ア・エ
  • イ・ウ
  • イ・エ
  • ウ・エ

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この過去問の解説 (3件)

01

この問題のポイントは最判平28.4.21、最判昭35.3.18、最判昭62.10.30の理解です。

以下にこれらのポイントをまとめます。

・最判平28.4.21

この判例の争点は、国が拘置所に入れられた被拘留者に対して、安全配慮義務を負うのかどうかです。

この判決で、国は拘置所に入れられた被拘留者に対し、不履行が損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の安全義務を負わないとされています。

理由は未決勾留 による拘禁関係は,勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され,法令等の規定に従って規律されるものである。そうすると,未決勾留による拘禁関係 は,当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上の安全配慮義務を負うべき特 別な社会的接触の関係とはいえないとされています。

・最判昭35.3.18

この判例の争点は、食品衛生法第21条に基づく食肉販売の営業許可を受けない業者とした食肉の売買契約は有効かどうかです。

結果は食品衛生法第21条に基づく食肉販売の営業許可を受けない業者とした食肉の売買契約は有効となりました。

理由は売買契約が食品衛生法による取締の対象に含まれるかどうかはともかくとし て同法は単なる取締法規にすぎないものと解するのが相当であるから、上告人が食 肉販売業の許可を受けていないとしても、右法律により本件取引の効力が否定される理由はないとなりました。

・最判昭62.10.30

この判例の争点は、課税処分に信義則が適用されるかどうかです。

結果としては、課税処分について信義則の法理の適用による違法を考え得るのは、納税者間の平等公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならず、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たつては、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示し、納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ右表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになつたものかどうか、納税者が税務官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責に帰すべき事由がないかどうか、という点の考慮が不可欠であるとされています。

 

以上の点をおさえて、解説を見ていきましょう。

選択肢1. ア・イ

社会保障給付の中で例えば年金の給付は処分に該当し、年金を請求した結果に納得いかない場合は審査請求や裁判をおこすことができます。

よって、アは社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、公権力の行使が介在する余地はあり、処分によって規律されることもあるとなります。

 

解説の冒頭より、未決勾留 による拘禁関係は,勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され,法令等の規定に従って規律されるので、は拘置所に入れられた被拘留者に対し、不履行が損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の安全義務を負わないとされています。

よって、イは未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定により規律されるものであるから、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して信義則上の安全配慮義務を負わないとなります。

選択肢2. ア・エ

解説の冒頭より、課税処分について信義則の法理の適用による違法を考え得るのは、納税者間の平等公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならないとされています。

よって、エは法の一般原則である信義誠実の原則は、私人間における民事上の法律関係を規律する原理であるが、租税法律主義の原則が貫かれる租税法律関係でも納税者間の平等公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合は適用される余地はあるとなります。

選択肢3. イ・ウ

解説の冒頭より、売買契約が食品衛生法による取締の対象に含まれるかどうかはともかくとし て同法は単なる取締法規にすぎないものと解するのが相当であるから、上告人が食 肉販売業の許可を受けていないとしても、右法律により本件取引の効力が否定される理由はないので、食品衛生法第21条に基づく食肉販売の営業許可を受けない業者とした食肉の売買契約は有効とされています。

よって、ウは食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行った場合、食品衛生法は取締法規であるため、当該販売にかかる売買契約が当然に無効となるわけではないとなります。

まとめ

この問題で出てきた判例は行政書士試験によく出てくるので、復習しておくと良いでしょう。

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02

行政上の法律関係に関する問題です。

それぞれ判例をもとに解説していきます。

選択肢1. ア・イ

ア:妥当ではありません。

判例(最判平15.9.4)では、「労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、

法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、

被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、

抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である」と判示しています。

以上から、本肢の「社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、もっぱら契約によるものとされている」という記述は妥当ではありません。

 

イ:妥当です。

判例(最判平28.4.21)では、「国は、拘置所に収容された被勾留者に対して、

信義則上の安全配慮義務を負わないというべきである」と判示しています。よって、妥当です。

未決勾留とは、まだ裁判が終了していない被告人や容疑者が、裁判の進行中に拘束されている状態を指します。

つまり、まだ裁判が行われていない段階で、裁判所や警察などの権限を持つ機関によって拘束することを言います。

そして、被勾留者とは、未決勾留より拘束された者(拘置所に収容された者)を意味します。

選択肢2. ア・エ

ア:妥当ではありません。

判例(最判平15.9.4)では、「労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、

法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、

被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、

抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である」と判示しています。

以上から、本肢の「社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、もっぱら契約によるものとされている」という記述は妥当ではありません。

 

エ:妥当ではありません。

判例(最判昭62.10.30)では、「租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、

右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、

法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、

右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、

公平という要請を犠牲にしてもなお当該課稅処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである」と判示しています。

よって、本肢の場合、信義誠実の原則は、租税法律関係に適用される余地があるので妥当ではありません。

 

選択肢3. イ・ウ

イ:妥当です。

判例(最判平28.4.21)では、「国は、拘置所に収容された被勾留者に対して、

信義則上の安全配慮義務を負わないというべきである」と判示しています。よって、妥当です。

未決勾留とは、まだ裁判が終了していない被告人や容疑者が、裁判の進行中に拘束されている状態を指します。

つまり、まだ裁判が行われていない段階で、裁判所や警察などの権限を持つ機関によって拘束することを言います。

そして、被勾留者とは、未決勾留より拘束された者(拘置所に収容された者)を意味します。

 

ウ:妥当です。

判例(最判昭35.3.18)では、「本件売買契約が食品衛生法による取締の対象に含まれるかどうかはともかくとして、

食品衛生法は単なる取締法規にすぎないものと解するのが相当であるから、上告人が食肉販売業の許可を受けていないとしても、

食品衛生法により本件取引の効力が否定される理由はない」としています。

よって、本肢の場合、食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行ったときであっても、

当該販売にかかる売買契約が当然に無効とはなりません。

売買契約は、有効です。よって。本肢は妥当です。

選択肢4. イ・エ

イ:妥当です。

判例(最判平28.4.21)では、「国は、拘置所に収容された被勾留者に対して、

信義則上の安全配慮義務を負わないというべきである」と判示しています。よって、妥当です。

未決勾留とは、まだ裁判が終了していない被告人や容疑者が、裁判の進行中に拘束されている状態を指します。

つまり、まだ裁判が行われていない段階で、裁判所や警察などの権限を持つ機関によって拘束することを言います。

そして、被勾留者とは、未決勾留より拘束された者(拘置所に収容された者)を意味します。

 

エ:妥当ではありません。

判例(最判昭62.10.30)では、「租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、

右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、

法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、

右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、

公平という要請を犠牲にしてもなお当該課稅処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである」と判示しています。

よって、本肢の場合、信義誠実の原則は、租税法律関係に適用される余地があるので妥当ではありません。

 

選択肢5. ウ・エ

ウ:妥当です。

判例(最判昭35.3.18)では、「本件売買契約が食品衛生法による取締の対象に含まれるかどうかはともかくとして、

食品衛生法は単なる取締法規にすぎないものと解するのが相当であるから、上告人が食肉販売業の許可を受けていないとしても、

食品衛生法により本件取引の効力が否定される理由はない」としています。

よって、本肢の場合、食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行ったときであっても、

当該販売にかかる売買契約が当然に無効とはなりません。

売買契約は、有効です。よって。本肢は妥当です。

 

エ:妥当ではありません。

判例(最判昭62.10.30)では、「租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、

右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、

法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、

右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、

公平という要請を犠牲にしてもなお当該課稅処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである」と判示しています。

よって、本肢の場合、信義誠実の原則は、租税法律関係に適用される余地があるので妥当ではありません。

まとめ

参考元になっている判例は、違った形式で出題されることもありますので、しっかり押さえておきましょう。

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03

 行政上の法律関係に関する出題です。

 

 

 

選択肢3. イ・ウ

 社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、公権力の行使が介在する余地はないから、処分によって規律されることはなく、もっぱら契約によるものとされている。

 

 行政事件訴訟法3条1項により、「この法律において抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」とされ、最高裁判所判決平成15年9月4日で、判事事項により、「労働基準監督署長が労働者災害補償保険法(平成11年法律第160号による改正前のもの)23条に基づいて行う労災就学援護費の支給に関する決定と抗告訴訟の対象。」とされ、裁判要旨により、「労働基準監督署長が労働者災害補償保険法(平成11年法律第160号による改正前のもの)23条に基づいて行う労災就学援護費の支給に関する決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。」とされます。

 つまり、「社会保障給付における行政主体と私人との間の関係は、対等なものであり、公権力の行使が介在する余地はないから、処分によって規律されることはなく、もっぱら契約によるものとされている。」ということは、妥当ではありません。

 

 

 未決勾留による拘禁関係は、勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され、法令等の規定により規律されるものであるから、国は、拘置所に収容された被勾留者に対して信義則上の安全配慮義務を負わない。

 

 民法1条2項により、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」とされ、同法415条1項により、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」とされ、同条2項により、「前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、①債務の履行が不能であるとき、➁債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき、③債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。」とされ、最高裁判所判決平成28年4月21日で、判事事項により、「拘置所に収容された被勾留者に対する国の安全配慮義務の有無。」とされ、裁判要旨により、「 国は、拘置所に収容された被勾留者に対して、その不履行が損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の安全配慮義務を負わない。」とされるので、妥当です。

 

 

 食品衛生法の規定により必要とされる営業の許可を得ることなく食品の販売を行った場合、食品衛生法は取締法規であるため、当該販売にかかる売買契約が当然に無効となるわけではない。

 

 民法90条により、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」とされ、最高裁判所判決昭和35年3月18日で、判事事項により、「食品衛生法21条による食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉買入契約の効力。」とされ、裁判要旨により、「食品衛生法21条による食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉の買入契約は無効ではない。」とされるので、妥当です。

 

 

 法の一般原則である信義誠実の原則は、私人間における民事上の法律関係を規律する原理であるから、租税法律主義の原則が貫かれる租税法律関係には適用される余地はない。

 

 民法1条2項により、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」とされ、最高裁判所判決昭和62年10月30日で、判事事項により、「課税処分と信義則の適用。」とされ、裁判要旨により、「 租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用による違法を考え得るのは、納税者間の平等公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならず、当該特別の事情が存するかどうかの判断に当たつては、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示し、納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ当該表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになつたものかどうか、納税者が税務官庁の当該表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責に帰すべき事由がないかどうか、という点の考慮が不可欠である。」とされます。

 つまり、「私人間における民事上の法律関係を規律する原理であるから、租税法律主義の原則が貫かれる租税法律関係には適用される余地はない」という部分が、妥当ではありません。

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