行政書士の過去問
令和5年度
法令等 問17
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問題
行政書士試験 令和5年度 法令等 問17 (訂正依頼・報告はこちら)
以下の事案に関する次のア~エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。
Xは、A川の河川敷の自己の所有地に小屋(以下「本件小屋」という。)を建設して所有している。A川の河川管理者であるB県知事は、河川管理上の支障があるとして、河川法に基づきXに対して本件小屋の除却を命ずる処分(以下「本件処分」という。)をした。しかし、Xは撤去の必要はないとして本件処分を無視していたところ、Xが本件処分の通知書を受け取ってから約 8 か月が経過した時点で、同知事は、本件小屋の除却のための代執行を行うため、Xに対し、行政代執行法に基づく戒告および通知(以下「本件戒告等」という。)を行った。そこでXは、代執行を阻止するために抗告訴訟を提起することを考えている。
ア 本件戒告等には処分性が認められることから、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起できる。
イ 本件戒告等の取消訴訟において、Xは、本件戒告等の違法性だけでなく、本件処分の違法性も主張できる。
ウ Xが本件処分の通知書を受け取ってから1年が経過していないことから、Xが本件処分の取消訴訟を提起しても、出訴期間の徒過を理由として却下されることはない。
エ Xが本件戒告等の取消訴訟を提起したとしても、代執行手続が完了した後には、本件戒告等の効果が消滅したことから、当該訴訟は訴えの利益の欠如を理由に不適法として却下される。
Xは、A川の河川敷の自己の所有地に小屋(以下「本件小屋」という。)を建設して所有している。A川の河川管理者であるB県知事は、河川管理上の支障があるとして、河川法に基づきXに対して本件小屋の除却を命ずる処分(以下「本件処分」という。)をした。しかし、Xは撤去の必要はないとして本件処分を無視していたところ、Xが本件処分の通知書を受け取ってから約 8 か月が経過した時点で、同知事は、本件小屋の除却のための代執行を行うため、Xに対し、行政代執行法に基づく戒告および通知(以下「本件戒告等」という。)を行った。そこでXは、代執行を阻止するために抗告訴訟を提起することを考えている。
ア 本件戒告等には処分性が認められることから、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起できる。
イ 本件戒告等の取消訴訟において、Xは、本件戒告等の違法性だけでなく、本件処分の違法性も主張できる。
ウ Xが本件処分の通知書を受け取ってから1年が経過していないことから、Xが本件処分の取消訴訟を提起しても、出訴期間の徒過を理由として却下されることはない。
エ Xが本件戒告等の取消訴訟を提起したとしても、代執行手続が完了した後には、本件戒告等の効果が消滅したことから、当該訴訟は訴えの利益の欠如を理由に不適法として却下される。
- ア・イ
- ア・エ
- イ・ウ
- イ・エ
- ウ・エ
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この過去問の解説 (3件)
01
この問題のポイントは取消訴訟の訴訟要件と無効確認訴訟と取消訴訟の違い、違法性の承継についての理解です。
取消訴訟の訴訟要件は①処分性②原告適格③狭義の訴えの利益④被告適格⑤出訴期間⑥管轄で、
この4つの要件の一つでも満たさないと却下となります。
①処分性
取消訴訟の対象は行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に限られます。
②原告適格
これは取消を求めるにつき法律上の利益を有する者とされ、これは処分等を受けることにより自己の権利もしくは法律上の利益を侵害され、または必然的に侵害される者をいいます。
③狭義の訴えの利益
取消判決で、侵害されていた権利や地位が回復できない場合は訴えの利益がないと判断され、訴訟は却下となります。
④被告適格
被告適格については法定されているため、かかる者を被告にする必要があります。
⑤出訴期間
出訴期間も行政事件訴訟法により決まっており、処分を知った日から6ヶ月、処分の日から1年間でどちらかの期間を過ぎたら、却下されます。
⑥管轄
原則として、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所に提起する必要があります。
次に無効確認訴訟についてで、まず取消訴訟との違いは無効確認訴訟には出訴期間の定めがなく、取消訴訟の出訴期間が過ぎた場合でも無効確認訴訟で訴訟として提起できる可能性があります。
ただ、出訴期間の定めがない分、取消訴訟よりハードルが高く、処分が重大かつ明白に違法であることが必要になります。
最後に違法性の承継についてです。
これは先行の処分に違法性があった場合に後行の処分に違法性が承継されることをいいます。
ただし、本来行政行為は独立したものであり、原則として、違法性の承継は認められません。
以上の点をおさえて、解説を見ていきましょう。
解説の冒頭より、本件戒告等に処分性が認められれば、取消訴訟でも無効確認訴訟でも提起できる可能性があります。
よって、アは本件戒告等には処分性が認められることから、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起できるとなります。
次に解説の冒頭より、原則として、違法性の承継は認められません。
また、問題文よりXが本件処分を無視して、本件処分の通知書を受け取ってから約 8 か月が経過したとあり、Xには処分の取消を訴える時間的な余裕があるので、違法性の承継が認められる例外にはあたりません。
よって、本件戒告等の取消訴訟において、Xは、本件戒告等の違法性とは別に、本件処分の違法性は主張できないとなります。
解説の冒頭より、訴えの利益がなくなると、取消訴訟は却下となります。
よって、エはXが本件戒告等の取消訴訟を提起したとしても、代執行手続が完了した後には、本件戒告等の効果が消滅したことから、当該訴訟は訴えの利益の欠如を理由に不適法として却下されるとなります。
問題文より、Xが本件処分を無視して、本件処分の通知書を受け取ってから約 8 か月が経過したとありとなっております。
これが解説の冒頭の出訴期間の知ったときから6ヶ月を過ぎてると判断され、却下となる可能性はあります。
よって、ウはXが本件処分の通知書を受け取ってから1年が経過していないことから、Xが本件処分の取消訴訟を提起しても、出訴期間の徒過を理由として却下されることはあるとなります。
この問題のように、取消訴訟などの抗告訴訟の訴訟要件は行政書士試験で出てくるので、取消訴訟は勿論、他の訴訟の要件もおさえていきましょう。
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02
本問にある事案に関する出題です。
ア 本件戒告等には処分性が認められることから、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起できる。
「本件戒告等には処分性が認められることから、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起できる。」ということは、妥当です。
イ 本件戒告等の取消訴訟において、Xは、本件戒告等の違法性だけでなく、本件処分の違法性も主張できる。
「本件戒告等の取消訴訟において、Xは、本件戒告等の違法性だけでなく、本件処分の違法性も主張できる。」ということは、妥当ではありません。
ウ Xが本件処分の通知書を受け取ってから1年が経過していないことから、Xが本件処分の取消訴訟を提起しても、出訴期間の徒過を理由として却下されることはない。
行政事件訴訟法14条1項により、「取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」とされ、同条2項により、「取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」とされ、最高裁判所判決平成14年10月24日で、判事事項により、「行政処分が通知ではなく告示をもって画一的に告知される場合における処分があったことを知った日の意義。」とされ、裁判要旨により、「行政処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に画一的に告知される場合には、処分があったことを知った日とは、告示があった日をいう。」とされます。
つまり、「Xが本件処分の通知書を受け取ってから1年が経過していないことから、Xが本件処分の取消訴訟を提起しても、出訴期間の徒過を理由として却下されることはない。」ということは、妥当ではありません。
エ Xが本件戒告等の取消訴訟を提起したとしても、代執行手続が完了した後には、本件戒告等の効果が消滅したことから、当該訴訟は訴えの利益の欠如を理由に不適法として却下される。
行政事件訴訟法9条1項により、「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(取消訴訟という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。」とされ、同条2項により、「裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。」とされ、最高裁判所判決昭和48年3月6日で、判事事項により、「 建築基準法9条1項に基づき除却命令を受けた建築物に対する代執行の完了と右除却命令および代執行令書発付処分の取消を求める訴の利益。」とされ、裁判要旨により、「建築基準法9条1項の規定により除却命令を受けた建築物について代執行による除却工事が完了したときは、当該除却命令および代執行令書発付処分の取消を求める訴の利益は失われる。」とされるので、妥当です。
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03
行政法に関する判例知識等の問題です。
選択肢別に解説していきます。
ア:妥当
行政代執行法による戒告および代執行令書による通知は、処分性が認められるため、
取消訴訟の対象となります(大阪高決昭40.10.5)。
そのため、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起することが可能です。
イ:妥当でない
戒告の取消訴訟においては、処分の違法性は主張できません。
よって、妥当ではありません。そもそも、「戒告・通知」と「除去命令」は独立した別々の処分です。
そのため、違法性の承継は、原則として認められないので、Xは、本件戒告等の取消訴訟において、
本件処分の違法性を主張することはできません。
ア:妥当
行政代執行法による戒告および代執行令書による通知は、処分性が認められるため、
取消訴訟の対象となります(大阪高決昭40.10.5)。
そのため、Xは、本件処分の無効確認訴訟を提起するだけでなく、本件戒告等の取消訴訟をも提起することが可能です。
エ:妥当
「最判昭48.3.6」からの出題です。
土地収用に基づく明渡裁決があると、一定期間内に土地を明け渡す義務が発生します。
そして、いったん土地の明渡しが完了すれば、明渡裁決の効果として土地の占有者の義務はなくなります。
つまり、代執行の完了(明渡し完了)をした後に、上記明渡裁決を取り消しても意味がないので、
明渡裁決の取消しを求める訴えの利益は消滅します(最判昭48.3.6)。
本問の事案においても、代執行手続が完了した後は、本件戒告等の効果が消滅するので、
取消訴訟は訴えの利益は消滅し、不適法として却下されます。
よって、妥当です。
イ:妥当でない
戒告の取消訴訟においては、処分の違法性は主張できません。
よって、妥当ではありません。そもそも、「戒告・通知」と「除去命令」は独立した別々の処分です。
そのため、違法性の承継は、原則として認められないので、Xは、本件戒告等の取消訴訟において、
本件処分の違法性を主張することはできません。
ウ:妥当でない
取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から6か月を経過したときは、提起することができません(行政事件訴訟法14条1項本文)。
そして、「処分があったことを知った日」とは、抽象的なしり得べかりし日ではなく、
「当事者が書類の交付、口頭の告知、その他の方法により処分の存在を現実に知った日を指すもの」としています(最判平14.10.24)。
「処分があったことを知った日」とは、あいまいな日付ではなく、当事者が書類を受け取ったり、
口頭で告知を受けたり、他の方法で処分の存在を実際に知った日を指します。
本肢を見ると、通知書を受け取ってから約8か月が経過しているので、「処分(通知)を知ってから6か月」を経過しています。
したがって、出訴期間が過ぎているので、出訴期間の徒過(期限の経過)を理由として却下されることになります。
イ:妥当でない
戒告の取消訴訟においては、処分の違法性は主張できません。
よって、妥当ではありません。そもそも、「戒告・通知」と「除去命令」は独立した別々の処分です。
そのため、違法性の承継は、原則として認められないので、Xは、本件戒告等の取消訴訟において、
本件処分の違法性を主張することはできません。
エ:妥当
「最判昭48.3.6」からの出題です。
土地収用に基づく明渡裁決があると、一定期間内に土地を明け渡す義務が発生します。
そして、いったん土地の明渡しが完了すれば、明渡裁決の効果として土地の占有者の義務はなくなります。
つまり、代執行の完了(明渡し完了)をした後に、上記明渡裁決を取り消しても意味がないので、
明渡裁決の取消しを求める訴えの利益は消滅します(最判昭48.3.6)。
本問の事案においても、代執行手続が完了した後は、本件戒告等の効果が消滅するので、
取消訴訟は訴えの利益は消滅し、不適法として却下されます。
よって、妥当です。
ウ:妥当でない
取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から6か月を経過したときは、提起することができません(行政事件訴訟法14条1項本文)。
そして、「処分があったことを知った日」とは、抽象的なしり得べかりし日ではなく、
「当事者が書類の交付、口頭の告知、その他の方法により処分の存在を現実に知った日を指すもの」としています(最判平14.10.24)。
「処分があったことを知った日」とは、あいまいな日付ではなく、当事者が書類を受け取ったり、
口頭で告知を受けたり、他の方法で処分の存在を実際に知った日を指します。
本肢を見ると、通知書を受け取ってから約8か月が経過しているので、「処分(通知)を知ってから6か月」を経過しています。
したがって、出訴期間が過ぎているので、出訴期間の徒過(期限の経過)を理由として却下されることになります。
エ:妥当
「最判昭48.3.6」からの出題です。
土地収用に基づく明渡裁決があると、一定期間内に土地を明け渡す義務が発生します。
そして、いったん土地の明渡しが完了すれば、明渡裁決の効果として土地の占有者の義務はなくなります。
つまり、代執行の完了(明渡し完了)をした後に、上記明渡裁決を取り消しても意味がないので、
明渡裁決の取消しを求める訴えの利益は消滅します(最判昭48.3.6)。
本問の事案においても、代執行手続が完了した後は、本件戒告等の効果が消滅するので、
取消訴訟は訴えの利益は消滅し、不適法として却下されます。
よって、妥当です。
行政法に関する判例知識等の問題です。
本問での判例はどちらも重要なものですので、お手元の参考書なども併せてしっかり押さえておきましょう。
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