行政書士の過去問
令和5年度
法令等 問39

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問題

行政書士試験 令和5年度 法令等 問39 (訂正依頼・報告はこちら)

役員等の責任に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
  • 利益相反取引によって株式会社に損害が生じた場合には、株主総会または取締役会の承認の有無にかかわらず、株式会社と利益が相反する取引をした取締役または執行役は任務を怠ったものと推定する。
  • 取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役または第三者が得た利益の額は、賠償責任を負う損害の額と推定する。
  • 監査等委員会設置会社の取締役の利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合において、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役が監査等委員であるかどうかにかかわらず、当該取締役が任務を怠ったものと推定されることはない。
  • 非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができる。
  • 自己のために株式会社と取引をした取締役または執行役は、任務を怠ったことが当該取締役または執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって損害賠償責任を免れることはできない。

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題のポイントは、会社法423条、427条1項、428条1項の理解です。

まず会社法423条は取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。

 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。

 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役

 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役

 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)

 前項の規定は、第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において、同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、適用しない。

とされています。

会社法427条1項は株式会社は、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人(以下この条及び第九百十一条第三項第二十五号において「非業務執行取締役等」という。)の第四百二十三条第一項の責任について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができるとされています。

最後に会社法428条1項は第三百五十六条第一項第二号(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引(自己のためにした取引に限る。)をした取締役又は執行役の第四百二十三条第一項の責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができないとされています。

 

以上の点をおさえて、解説をみていきましょう。

選択肢1. 利益相反取引によって株式会社に損害が生じた場合には、株主総会または取締役会の承認の有無にかかわらず、株式会社と利益が相反する取引をした取締役または執行役は任務を怠ったものと推定する。

解説の冒頭より、利益相反取引によって株式会社に損害が生じたときは取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定するとされています。

よって、利益相反取引によって株式会社に損害が生じた場合には、株主総会または取締役会の承認の有無にかかわらず、株式会社と利益が相反する取引をした取締役または執行役は任務を怠ったものと推定するとなります。

選択肢2. 取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役または第三者が得た利益の額は、賠償責任を負う損害の額と推定する。

解説の冒頭より、取締役又は執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は賠償責任を負う損害の額と推定するとされています。

よって、取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役または第三者が得た利益の額は、賠償責任を負う損害の額と推定するとなります。

選択肢3. 監査等委員会設置会社の取締役の利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合において、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役が監査等委員であるかどうかにかかわらず、当該取締役が任務を怠ったものと推定されることはない。

解説の冒頭より、監査等委員会設置会社の取締役の利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合で、取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、該取締役が任務を怠ったものと推定されることはないとされています。

よって、監査等委員会設置会社の取締役の利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合において、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役が監査等委員でなければ、当該取締役が任務を怠ったものと推定されることはないとなります。

選択肢4. 非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができる。

解説の冒頭より、非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができるとされています。

よって、非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができるとなります。

選択肢5. 自己のために株式会社と取引をした取締役または執行役は、任務を怠ったことが当該取締役または執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって損害賠償責任を免れることはできない。

解説の冒頭より、自己のために株式会社と取引をした取締役または執行役は、任務を怠ったことが当該取締役または執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって損害賠償責任を免れることはできないとされています。

よって、自己のために株式会社と取引をした取締役または執行役は、任務を怠ったことが当該取締役または執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって損害賠償責任を免れることはできないとされています。

まとめ

この問題のように条文知識を問う問題は必ず出るので、条文素読もやった方が良いでしょう。

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02

役員等の責任に関する問題です。

選択肢1. 利益相反取引によって株式会社に損害が生じた場合には、株主総会または取締役会の承認の有無にかかわらず、株式会社と利益が相反する取引をした取締役または執行役は任務を怠ったものと推定する。

1・・・妥当

取締役又は執行役が行った利益相反取引により会社に損害が発生した場合、当該利益相反取引を行った取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定されます(会社法423条3項1号)。よって、妥当です。
 

選択肢2. 取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役または第三者が得た利益の額は、賠償責任を負う損害の額と推定する。

2・・・妥当

取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役または第三者が得た利益の額は、賠償責任を負う損害の額と推定されます(会社法423条2項)。よって、正しいです。

選択肢3. 監査等委員会設置会社の取締役の利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合において、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役が監査等委員であるかどうかにかかわらず、当該取締役が任務を怠ったものと推定されることはない。

3・・・誤り

株式会社には、取締役が監査等委員会からの承認を受けて行った取引がある場合、その取締役が任務を怠ったとみなされない特別なルールがあります。監査等委員会設置会社の取締役の利益相反により株式会社に損害が生じた場合において、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役が監査等委員である場合を除き、当該取締役が任務を怠ったものと推定されません(任務懈怠責任を負わない)(会社法423条4項)。

選択肢4. 非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができる。

4・・・正しい

非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができます(会社法427条)。この契約を責任限定契約といいます。

選択肢5. 自己のために株式会社と取引をした取締役または執行役は、任務を怠ったことが当該取締役または執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって損害賠償責任を免れることはできない。

5・・・正しい

株式会社と直接自己のために取引をした取締役等は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができません(会社法428条1項)。つまり、取締役などの役員が自分の利益のために会社との取引を行い、その取引によって会社に損害が発生した場合、役員が「任務を怠っていないこと」を証明しても、その責任を免れることはできません。役員が自分の利益のために会社との取引を行うことは、法律違反であり、損害賠償責任を負うことになります。

まとめ

出題率の高い分野ですのでしっかり押さえておきましょう。

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