行政書士 過去問
令和5年度
問4 (一般知識等 問50)

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問題

行政書士試験 令和5年度 問4(一般知識等 問50) (訂正依頼・報告はこちら)

日本の法人課税に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア  法人税は法人の所得に対して課税する所得課税であり、企業の所得水準に応じて税率が決まる累進税率が採用されている。
イ  子育てを社会全体で支える観点から、法人税の税率が引き上げられ、その財源を次世代育成支援に充当することとなった。
ウ  地方自治体が課税する法人事業税には、法人の所得や収入に応じる課税だけではなく、法人の資本や付加価値に応じて課税される外形標準課税も導入されている。
エ  OECD(経済協力開発機構)では、多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題(BEPS:税源浸食と利益移転)に対処するため、BEPSプロジェクトを立ち上げて、日本もこれに参加している。
オ  地方自治体による法人事業税や法人住民税は、地域間での偏在性が大きいが、その一部を国税化する改革が実施されたことはない。
  • ア・ウ
  • ア・オ
  • イ・エ
  • イ・オ
  • ウ・エ

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題のポイントは法人課税の知識です。

まず法人税は法人の所得に対して課税する所得課税であるが、累進税率ではなく一律の税率が適用されます。

また、法人税の税率は平成に入ってから引き下がっています。

 

次に地方自治体が課税する法人事業税には、法人の所得や収入に応じる課税だけではなく、法人の資本や付加価値に応じて課税される外形標準課税も導入されています。

また、地方自治体による法人事業税や法人住民税は、地域間での偏在性が大きく、それらの一部を国税化し、それを各都道府県に分け直すということが行われています。

 

最後にOECD(経済協力開発機構)では、多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題(BEPS:税源浸食と利益移転)に対処するため、BEPSプロジェクトを立ち上げて、日本もこれに参加しています。

 

以上の点をおさえて、解説を見ていきましょう。

 

選択肢1. ア・ウ

解説の冒頭より、法人税は法人の所得に対して課税する所得課税であるが、累進税率ではなく一律の税率が適用されます。

よって、アは法人税は法人の所得に対して課税する所得課税であり、累進税率ではなく一定の税率が採用されています。

また、解説の冒頭より、地方自治体が課税する法人事業税には、法人の所得や収入に応じる課税だけではなく、法人の資本や付加価値に応じて課税される外形標準課税も導入されています。

よって、ウは地方自治体が課税する法人事業税には、法人の所得や収入に応じる課税だけではなく、法人の資本や付加価値に応じて課税される外形標準課税も導入されているとなります。

選択肢2. ア・オ

解説の冒頭より、地方自治体による法人事業税や法人住民税は、地域間での偏在性が大きく、それらの一部を国税化し、それを各都道府県に分け直すということが行われています。

よって、オは地方自治体による法人事業税や法人住民税は、地域間での偏在性が大きく、その一部を国税化する改革が実施されたことはあるとなります。

選択肢3. イ・エ

解説の冒頭より、法人税の税率は平成に入ってから引き下がっています。

よって、イは平成に入ってから法人税の税率が引き下がっているとなります。

また、解説の冒頭より、OECD(経済協力開発機構)では、多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題(BEPS:税源浸食と利益移転)に対処するため、BEPSプロジェクトを立ち上げて、日本もこれに参加しています。

よって、エはOECD(経済協力開発機構)では、多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題(BEPS:税源浸食と利益移転)に対処するため、BEPSプロジェクトを立ち上げて、日本もこれに参加しているとなります。

 

まとめ

今回の法人課税に関する問題は初出題で今後出るかもしれないので、もう一度問題と解説を見直した方が良いでしょう。

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02

本問は、法人税について基本的な知識を問う問題です。
法人三税(肢ア解説参照)の課税主体(国税、地方税の別)及び課税物件(何に対して税金をかけるかという話です。課税客体とも言います)又は課税標準(課税物件を金額、数量など数字で表したものです。課税標準に税率をかけたものが税額になります)は最低限憶えておきましょう。

 

 

アは妥当でありません


法人税は法人の所得に対して課税される「国税」です。個人の所得税に相当しますが、個人所得税と異なり定率課税であり、税率は23.2%が基本になります。なお、事業規模の小さい中小企業では、負担軽減のために軽減税率が適用されます。

 

法人税以外に、法人住民税、法人事業税という「地方税」があり、法人税と合わせて法人三税と呼ばれます。
法人住民税は、個人の住民税に相当し、都道府県民税と市町村民税に分かれます
法人事業税は、法人の事業活動そのもの対して課税される都道府県民税です。課税標準は基本的には所得ですが、資本金1億円以上の企業には、それ以外にも外形標準課税が課されます。


なお、法人三税をはじめとする各種税負担の総額の所得に占める割合を実効税率と呼び、おおむね30%をやや下回る数字になっています。
 

 

イは妥当ではありません


子供・子育て支援金制度の財源は、法人税ではありません。将来的には医療保険に上乗せになりますが、当面は公債を原資とすることもできます。
また、法人税は、平成以降は右肩下がりで税率が下がっており、税率が上がったという事実もありません。

 

 

ウは妥当です。


アの解説でも述べている通り、法人事業税は、都道府県という自治体が課税する地方税であり、所得に対する課税だけではなく、法人の資本や付加価値に応じて外形標準課税も課されます。

 

 

エは妥当です。


問題文の通り、2012年6月、日本も加盟するOECDとG20が主導してBEPS対応策を検討するBEPSプロジェクトが発足しました。2015年に最終報告書が発表され、国際課税ルールの整備が進められています。


更に2019年からは、デジタル経済に対する国際課税秩序の構築を目指すBEPS2.0というプロジェクトが始まっています。

 

オは妥当ではありません


平成26年税制改正により地方法人税という「国税」が創設され、従来の法人住民税法人税割の一部を国税化する措置が執られました。この地方法人税は、地方税収の偏りを是正する目的で創設されたもので、全額が地方交付税の原資となります。

 

 

以上、妥当なものはウとエです。

選択肢1. ア・ウ

アは妥当ではありません。

よってこの肢は誤りです。

ウは妥当です。

選択肢2. ア・オ

ア、オはともに妥当ではありません。

よってこの肢は誤りです。

 

選択肢3. イ・エ

イは妥当ではありません。

よってこの肢は誤りです。

エは妥当です。

選択肢4. イ・オ

イ、オはともに妥当ではありません。

よってこの肢は誤りです。

選択肢5. ウ・エ

ウ、エともに妥当です。

よってこの肢が正解です。

まとめ

BEPSは知らなくてもしょうがないと思いますが、残りの肢が日本だけの話なので法人三税の知識から妥当でない肢を探して正解を導くことはできるでしょう。

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