行政書士 過去問
令和6年度
問20 (法令等 問20)

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問題

行政書士試験 令和6年度 問20(法令等 問20) (訂正依頼・報告はこちら)

国家賠償に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、その正誤を正しく示す組合せはどれか。

ア  教科用図書の検定にあたり文部大臣(当時)が指摘する検定意見は、すべて、検定の合否に直接の影響を及ぼすものではなく、文部大臣の助言、指導の性質を有するものにすぎないから、これを付することは、教科書の執筆者または出版社がその意に反してこれに服さざるを得なくなるなどの特段の事情のない限り、原則として、国家賠償法上違法とならない。
イ  政府が物価の安定等の政策目標を実現するためにとるべき具体的な措置についての判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため当該政策目標を達成できなかった場合、法律上の義務違反ないし違法行為として、国家賠償法上の損害賠償責任の問題が生ずる。
ウ  町立中学校の生徒が、放課後に課外のクラブ活動中の運動部員から顔面を殴打されたことにより失明した場合において、当該事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のない限り、顧問の教諭が当該クラブ活動に立ち会っていなかったとしても、当該事故の発生につき当該教諭に過失があるとはいえない。
エ  市内の河川について市が法律上の管理権をもたない場合でも、当該市が地域住民の要望にこたえて都市排水路の機能の維持及び都市水害の防止など地方公共の目的を達成するために河川の改修工事をして、これを事実上管理することになったときは、当該市は、当該河川の管理につき、国家賠償法2条1項の責任を負う公共団体に当たる。
  • ア:誤  イ:誤  ウ:正  エ:正
  • ア:誤  イ:誤  ウ:正  エ:誤
  • ア:誤  イ:正  ウ:誤  エ:誤
  • ア:正  イ:正  ウ:誤  エ:誤
  • ア:正  イ:正  ウ:正  エ:誤

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この過去問の解説 (2件)

01

国家賠償法の要件に関する問題です。

1条の場合(公務員の不法行為)と2条の場合(公の営造物の瑕疵による場合)でそれぞれ要件を整理しておく必要があります。

選択肢1. ア:誤  イ:誤  ウ:正  エ:正

ア  (正答×)正解

かつて文部大臣の検定意見は2種類ありました。

修正意見:従うかどうかにより検定の合否に直接の影響を及ぼすもの。

改善意見:あくまで文部大臣の助言、指導の性質を有するものに過ぎず、検定の結果に直接の影響はないもの。

これらのうち修正意見であれば合否の結果に直接影響するので、執筆者または出版社の意に反して事実上強制するのであれば違法の評価を受ける可能性があります。

これに対して、改善意見に留まるのであればその当不当に関わらず「公権力の行使」には当たらないとされました。(最判平5・3・16)

本肢では「検定意見は、すべて」としている部分が誤りとなります。

イ  (正答×)正解

国家賠償法1条1項の「損害を加えた」とは公務員の不法行為により特定の国民に損害が与えられた場合を指します。

政府の政策によりすべての国民が不利益を被っても政府の政治的責任の問題であり、国家賠償法1条1項の補償対象ではありません。

ウ  (正答〇)正解

国家賠償法1条1項の「過失」とは損害を与える事を予見しかつその発生防止の注意義務を負っているにも関わらず、その注意を怠ったことをいいます。

本肢では損害発生の具体的な予見可能性がない以上、教諭に過失は認められません。

エ  (正答〇)正解

営造物について法令上の管理権限を有しない場合であっても事実上営造物の設置・管理を行っているのであれば、国家賠償法2条1項の適用を受けます。(最判昭59・11・29)

選択肢2. ア:誤  イ:誤  ウ:正  エ:誤

ア  (正答×)正解

かつて文部大臣の検定意見は2種類ありました。

修正意見:従うかどうかにより検定の合否に直接の影響を及ぼすもの。

改善意見:あくまで文部大臣の助言、指導の性質を有するものに過ぎず、検定の結果に直接の影響はないもの。

これらのうち修正意見であれば合否の結果に直接影響するので、執筆者または出版社の意に反して事実上強制するのであれば違法の評価を受ける可能性があります。

これに対して、改善意見に留まるのであればその当不当に関わらず「公権力の行使」には当たらないとされました。(最判平5・3・16)

本肢では「検定意見は、すべて」としている部分が誤りとなります。

イ  (正答×)正解

国家賠償法1条1項の「損害を加えた」とは公務員の不法行為により特定の国民に損害が与えられた場合を指します。

政府の政策によりすべての国民が不利益を被っても政府の政治的責任の問題であり、国家賠償法1条1項の補償対象ではありません。

ウ  (正答〇)正解

国家賠償法1条1項の「過失」とは損害を与える事を予見しかつその発生防止の注意義務を負っているにも関わらず、その注意を怠ったことをいいます。

本肢では損害発生の具体的な予見可能性がない以上、教諭に過失は認められません。

エ  (正答〇)不正解

営造物について法令上の管理権限を有しない場合であっても事実上営造物の設置・管理を行っているのであれば、国家賠償法2条1項の適用を受けます。(最判昭59・11・29)

選択肢3. ア:誤  イ:正  ウ:誤  エ:誤

ア  (正答×)正解

かつて文部大臣の検定意見は2種類ありました。

修正意見:従うかどうかにより検定の合否に直接の影響を及ぼすもの。

改善意見:あくまで文部大臣の助言、指導の性質を有するものに過ぎず、検定の結果に直接の影響はないもの。

これらのうち修正意見であれば合否の結果に直接影響するので、執筆者または出版社の意に反して事実上強制するのであれば違法の評価を受ける可能性があります。

これに対して、改善意見に留まるのであればその当不当に関わらず「公権力の行使」には当たらないとされました。(最判平5・3・16)

本肢では「検定意見は、すべて」としている部分が誤りとなります。

イ  (正答×)不正解

国家賠償法1条1項の「損害を加えた」とは公務員の不法行為により特定の国民に損害が与えられた場合を指します。

政府の政策によりすべての国民が不利益を被っても政府の政治的責任の問題であり、国家賠償法1条1項の補償対象ではありません。

ウ  (正答〇)不正解

国家賠償法1条1項の「過失」とは損害を与える事を予見しかつその発生防止の注意義務を負っているにも関わらず、その注意を怠ったことをいいます。

本肢では損害発生の具体的な予見可能性がない以上、教諭に過失は認められません。

エ  (正答〇)不正解

営造物について法令上の管理権限を有しない場合であっても事実上営造物の設置・管理を行っているのであれば、国家賠償法2条1項の適用を受けます。(最判昭59・11・29)

選択肢4. ア:正  イ:正  ウ:誤  エ:誤

ア  (正答×)不正解

かつて文部大臣の検定意見は2種類ありました。

修正意見:従うかどうかにより検定の合否に直接の影響を及ぼすもの。

改善意見:あくまで文部大臣の助言、指導の性質を有するものに過ぎず、検定の結果に直接の影響はないもの。

これらのうち修正意見であれば合否の結果に直接影響するので、執筆者または出版社の意に反して事実上強制するのであれば違法の評価を受ける可能性があります。

これに対して、改善意見に留まるのであればその当不当に関わらず「公権力の行使」には当たらないとされました。(最判平5・3・16)

本肢では「検定意見は、すべて」としている部分が誤りとなります。

イ  (正答×)不正解

国家賠償法1条1項の「損害を加えた」とは公務員の不法行為により特定の国民に損害が与えられた場合を指します。

政府の政策によりすべての国民が不利益を被っても政府の政治的責任の問題であり、国家賠償法1条1項の補償対象ではありません。

ウ  (正答〇)不正解

国家賠償法1条1項の「過失」とは損害を与える事を予見しかつその発生防止の注意義務を負っているにも関わらず、その注意を怠ったことをいいます。

本肢では損害発生の具体的な予見可能性がない以上、教諭に過失は認められません。

エ  (正答〇)不正解

営造物について法令上の管理権限を有しない場合であっても事実上営造物の設置・管理を行っているのであれば、国家賠償法2条1項の適用を受けます。(最判昭59・11・29)

選択肢5. ア:正  イ:正  ウ:正  エ:誤

ア  (正答×)不正解

かつて文部大臣の検定意見は2種類ありました。

修正意見:従うかどうかにより検定の合否に直接の影響を及ぼすもの。

改善意見:あくまで文部大臣の助言、指導の性質を有するものに過ぎず、検定の結果に直接の影響はないもの。

これらのうち修正意見であれば合否の結果に直接影響するので、執筆者または出版社の意に反して事実上強制するのであれば違法の評価を受ける可能性があります。

これに対して、改善意見に留まるのであればその当不当に関わらず「公権力の行使」には当たらないとされました。(最判平5・3・16)

本肢では「検定意見は、すべて」としている部分が誤りとなります。

イ  (正答×)不正解

国家賠償法1条1項の「損害を加えた」とは公務員の不法行為により特定の国民に損害が与えられた場合を指します。

政府の政策によりすべての国民が不利益を被っても政府の政治的責任の問題であり、国家賠償法1条1項の補償対象ではありません。

ウ  (正答〇)正解

国家賠償法1条1項の「過失」とは損害を与える事を予見しかつその発生防止の注意義務を負っているにも関わらず、その注意を怠ったことをいいます。

本肢では損害発生の具体的な予見可能性がない以上、教諭に過失は認められません。

エ  (正答〇)不正解

営造物について法令上の管理権限を有しない場合であっても事実上営造物の設置・管理を行っているのであれば、国家賠償法2条1項の適用を受けます。(最判昭59・11・29)

まとめ

国家賠償法の要件に関する問題です。

1条の要件

1.公務員の職務を行うについて

2.公権力の行使によること

3.公権力の行使に当たる職務行為が違法

4.加害者である公務員に故意または過失がある

5.公務員の職務行為により損害が発生すること

 

2条の要件

1.公の営造物の設置・または管理に瑕疵があること

2.瑕疵と損害との因果関係

 

どの要件について問われているのかよく問題文を確認する必要があります。

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02

本問は、国家賠償に関する判例知識を問う問題です。
実のところ知らなくてもほぼ常識的判断だけで正解できる問題です。

 

この手の形式の問題に対しては、まず、選択肢の中で一つしかないものを見つけてその正誤を判断するという解法があります

見ると、1の選択肢だけエが「正」となっていて他はすべて「誤」になっていますから、まず、エの選択肢の正誤を検討するわけです。

この問題が出来が良くないのは、その一つだけ異なる選択肢の正誤を判断するだけで答えが出てしまうことです。

 

 

アは誤りです。

 

問題文には「文部大臣(当時)」とあるので、「昔の制度に基づく昔の判例に照らして正誤を考えるならば」という注釈付きで解説すると、昔の検定意見は「修正意見」と「改善意見」があり、修正意見は合否に影響するので「すべて」「合否に影響を及ぼすものではなく」というのは誤りという解説になります。

 

最判平成9年8月29裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
「修正意見を付することは、申請者がこれに応じて訂正、削除又は追加などの措置をしなければ教科書として不合格となるというものである」

 

と書いてある通り、「修正意見」は検定の合否に直接の影響があります。
したがって、「すべて」「ない」というのは誤りです。

 

なお、本問の記述は、同判例の

「改善意見は、検定の合否に直接の影響を及ぼすものではなく、文部大臣の助言、指導の性質を有するものと考えられるから、教科書の執筆者又は出版社がその意に反してこれに服さざるを得なくなるなどの特段の事情がない限り、その意見の当不当にかかわらず、原則として、違法の問題が生ずることはないというべきである。」

という記述の「改善意見」を「検定意見」に換えて、「すべて」を付け足したものです。


 

しかし、正直に言うと出題意図のわからない肢ではあります。
と言うのは、現在では「修正意見」、「改善意見」という区別がなく「検定意見」に一本化されています。ですから現在においては、「修正意見」「改善意見」という分類に基づく話は歴史的な意味しかありません。

ちなみに、現行規程に照らすとどうなるかと言えば、検定意見の数を問題にする形式的な基準と、教育の目的に照らして判断する実質的な基準の二本立てになっており、大雑把に、検定意見が一定数を上回るか又は実質基準に抵触すると不合格になります。
ということは、検定意見が「すべて、検定の合否に直接の影響を及ぼすものではなく」というのは、現行規程上も誤りなのは確かです。
つまり、結論的にはどう考えても「誤り」ということに落ち着きます。

 

しかし、設問はあくまでも「判例に照らし」ということですから、今となっては意味のない昔の「形式的な基準」を元にした判例を知っているかどうかを問うているわけです。
もちろん、本件判例は、

「合否の判定、合格の判定に付する条件の有無及び内容等についての検定審議会の判断の過程に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、旧検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる」

と述べており、これは今でも十分意味があります。

しかし、「修正意見」と「改善意見」を分けて論じた部分は、その前提たる規程が既に改正されているので、昔はそうだった以上の意味はありません。
現在の試験において、既に廃止になって20年以上経つ昔の制度の形式的な区別を知っているかどうかを問う意味はまったくないと思います。

ということで、こんな知っていてもいなくてもどうでもいいような昔話を出題する意図がわかりません。

 


イは誤りです。

 

政府が政策目標を達成できなかったとしても、国家賠償法上の損害賠償責任は生じません。

 

最判昭和57年7月15日裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
「各目標を調和的に実現するために政府においてその時々における内外の情勢のもとで具体的にいかなる措置をとるべきかは、事の性質上専ら政府の裁量的な政策判断に委ねられている事柄」
「仮に政府においてその判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため右目標を達成することができず、又はこれに反する結果を招いたとしても、これについて政府の政治的責任が問われることがあるのは格別、法律上の義務違反ないし違法行為として国家賠償法上の損害賠償責任の問題を生ずるものとすることはできない。」

 

常識的に言って、確実に政策目標が達成できるのなら誰も苦労はしません。
それで政府、議員が政治的責任を問われることは別論、国が法的責任を問われるわけがないのは判るでしょう。
 

これだけでも正解が2つに絞れます。

 


ウは正しいです。

 

最判昭和58年2月18日裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
「課外のクラブ活動であつても、それが学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、顧問の教諭を始め学校側に、生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務のあることを否定することはできない。しかしながら、課外のクラブ活動が本来生徒の自主性を尊重すべきものであることに鑑みれば、何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合は格別、そうでない限り、顧問の教諭としては、個々の活動に常時立会い、監視指導すべき義務までを負うものではない」
「本件事故につき……顧問の教諭が代わりの監督者を配置せずに体育館を不在にしていたことが同数諭の過失であるとするためには、本件の……喧嘩が同教諭にとつて予見可能であつたことを必要とするものというべき」

 

要は、特段の事情がなければ課外活動まで四六時中監視しろとまで義務付けることはできないってことです。

割と常識的な話です。

 


エは正しいです。

 

最判昭和59年11月29日裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
「国家賠償法2条にいう公の営造物の管理者は、必ずしも当該営造物について法律上の管理権ないしは所有権、賃借権等の権原を有している者に限られるものではなく、事実上の管理をしているにすぎない国又は公共団体も同条にいう管理者に含まれるものと解するのを相当とする」
「地方公共の目的を達成するべく、本件改修工事を行い、それによつて本件溝渠について事実上の管理をすることになつたものというべきであつて、本件溝渠の管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国家賠償法二条に基づいてその損害を賠償する義務を負う」
「このことは、国又は京都府が本件溝渠について法律上の管理権をもつかどうかによつて左右されるものではない。」


常識で考えても、やりかけたことは最後まで責任を持てという世間一般でよく聞く話です。

民法の基本原理である禁反言類似あるいは事務管理類似とみてもよいかも知れません。
 

この肢だけで正解が出せます

 

 

以上、ア誤、イ誤、ウ正、エ正となります。

選択肢1. ア:誤  イ:誤  ウ:正  エ:正

この肢が正解です。

選択肢2. ア:誤  イ:誤  ウ:正  エ:誤

エは正しいです。

よってこの肢は誤りです。

選択肢3. ア:誤  イ:正  ウ:誤  エ:誤

イは誤、ウエは正です。

よってこの肢は誤りです。

選択肢4. ア:正  イ:正  ウ:誤  エ:誤

アイは誤、ウエは正です。

よってこの肢は誤りです。

選択肢5. ア:正  イ:正  ウ:正  エ:誤

アイは誤、エは正です。

よってこの肢は誤りです。

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