行政書士 過去問
令和6年度
問19 (法令等 問19)
問題文
行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)が定める民衆訴訟および機関訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
行政書士試験 令和6年度 問19(法令等 問19) (訂正依頼・報告はこちら)
行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)が定める民衆訴訟および機関訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 機関訴訟は、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟であり、そのような紛争の一方の当事者たる機関は、特に個別の法律の定めがなくとも、機関たる資格に基づいて訴えを提起することができる。
- 民衆訴訟とは、特に法律が定める場合に国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、自己の法律上の利益にかかわらない資格で何人も提起することができるものをいう。
- 機関訴訟で、処分の取消しを求めるものについては、行訴法所定の規定を除き、取消訴訟に関する規定が準用される。
- 公職選挙法が定める地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は、地方公共団体の機関たる議会の構成に関する訴訟であるから、機関訴訟の一例である。
- 行訴法においては、行政事件訴訟に関し、同法に定めがない事項については、「民事訴訟の例による」との規定がなされているが、当該規定には、民衆訴訟および機関訴訟を除くとする限定が付されている。
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (2件)
01
本問は、行政事件訴訟のうちのいわゆる客観訴訟である「民衆訴訟」と「機関訴訟」について条文知識を問う問題です。
まず基礎知識をざっとおさらいしておきます。
行政事件訴訟法には以下の4つの訴訟類型があります。
①抗告訴訟②当事者訴訟③民衆訴訟④機関訴訟
行政事件訴訟法第2条「この法律において「行政事件訴訟」とは、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟をいう。」
このうち、①抗告訴訟と②当事者訴訟は、自らの法律上の権利利益のためにする主観訴訟であり、一方、③民衆訴訟は自らの法律上の利益にかかわらないもの、④機関訴訟は行政機関相互の紛争についてのもので、個人の法律上の権利利益の救済を目的としない客観訴訟と言います。
客観訴訟は、いわば公益のための訴訟であり、本来、司法審査の対象となる「法律上の争訟」ではありません。よって、訴訟類型としては特殊な類型であり、法律で特に認められている場合のみ提起することができます。それ以外は「訴えの利益なし」で訴えが却下になります。
客観訴訟のうち③民衆訴訟とは、文字通り「民衆」つまり、国民や住民が自らの法律上の利益とは関係なく、行政機関の法規不適合性を是正するために提起する訴訟です。
行政事件訴訟法第5条「この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。」
客観訴訟のうち④機関訴訟とは、行政機関同士の紛争解決のための訴訟です。
行政事件訴訟法第6条「この法律において「機関訴訟」とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。」
誤りです。
前段は正しいです。
しかし後段は誤りです。
機関訴訟は、法律に定めがなければ提起できません。
行政事件訴訟法第42条「民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。」
そもそも紛争解決手段としては機関訴訟は特殊な例外です。
機関同士の権限の問題は、本来は、上級行政庁等が差配して解決すべきものであり、訴訟によることはできないのが原則です。法律上の争訟には当たらないので、当然には裁判所が関与する話ではないのです。
しかし、一定の場合には、第三者としての裁判所に解決をゆだねる方が適切であるので、法律により機関訴訟が定められています。
誤りです。
前段は正しいです。
しかし後段は誤りです。
民衆訴訟は、「法律に定める者に限り」提起できます。「何人も」ではありません。
行政事件訴訟法第42条「民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。」
正しいです。よってこの肢が正解です。
機関訴訟で、処分の取消しを求める場合、行政事件訴訟法第9条及び第10条第1項以外の取消訴訟の規程を準用します。
行政事件訴訟法第43条第1項「民衆訴訟又は機関訴訟で、処分又は裁決の取消しを求めるものについては、第九条及び第十条第一項の規定を除き、取消訴訟に関する規定を準用する。」
ちなみに、9条と10条1項を除外しているのは、それが、原告適格など原告の法律上の利益と関係していることが前提の規定だからです。
機関訴訟にそのようなものが存在しないのは当然なので、準用すると訴訟が成り立たなくなります。
誤りです。
地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は、民衆訴訟の一種です。
公職選挙法第203条第1項「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙において、前条第1項の異議の申出若しくは同条第2項の審査の申立てに対する都道府県の選挙管理委員会の決定又は裁決に不服がある者は、当該都道府県の選挙管理委員会を被告とし、その決定書若しくは裁決書の交付を受けた日又は第215条の規定による告示の日から三十日以内に、高等裁判所に訴訟を提起することができる。」
「不服がある者」が訴えを提起できると書いてあります。
「不服がある者」とは、公職選挙法第206条第1項又は第2項により異議申出、審査申立てを行った「選挙人又は公職の候補者」で、決定又は裁決に不服がある者のことであり、機関ではないので、機関訴訟ではありません。
そして、「不服がある者」自身の法律上の利益のための訴訟ではないのでこれは民衆訴訟になります。
機関訴訟か否かは、内容ではなく当事者で決まります。たとえ機関にかかわる内容であるとしても当事者が機関でなければ機関訴訟にはなりません。
誤りです。
そのような規定はありません。
行政事件訴訟法第7条「行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。」
そもそも客観訴訟を除外する理由が何もありません。
参考になった数1
この解説の修正を提案する
02
民衆訴訟および機関訴訟
民衆訴訟・機関訴訟の訴訟要件等について問う問題です。
×
「民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。」(行政事件訴訟法42条)
「特に個別の法律の定めがなくとも」としているので本肢は誤りとなります。
×
「民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。」(行政事件訴訟法42条)
「何人も」としているので本肢は誤りとなります。
〇
「民衆訴訟又は機関訴訟で、処分又は裁決の取消しを求めるものについては、第九条及び第十条第一項の規定を除き、取消訴訟に関する規定を準用する。」(行政事件訴訟法43条1項)
×
機関訴訟は「国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟」、つまり国や地方公共団体やその機関の互いの権限が重複し、行政機関同士の摩擦が生じた場合にその権限のありかを定めるものです。
ex)1.地方議会と長 2.国と地方公共団体 3.県と市町村 の間での紛争
地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は「国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの」にあたり民衆訴訟となります。(公職選挙法207条1項)
※住民監査請求後の住民訴訟も民衆訴訟にあたります。(地方自治法242条の2)
×
「行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。」(行政事件訴訟法7条)
本肢のような「民衆訴訟および機関訴訟を除くとする限定」はありません。
民衆訴訟
「国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。」(行政事件訴訟法5条)
機関訴訟
「国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。」(行政事件訴訟法6条)
どちらも提訴するには法律の根拠が必要であり、かつその法で列挙された者のみが提訴できます。
マイナー所ではありますが、判例も一読される事をお勧めします。
参考になった数0
この解説の修正を提案する
前の問題(問18)へ
令和6年度 問題一覧
次の問題(問20)へ