行政書士 過去問
令和6年度
問31 (法令等 問31)

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問題

行政書士試験 令和6年度 問31(法令等 問31) (訂正依頼・報告はこちら)

Aは、Bから金銭を借り受け、Cが、Aの同貸金債務を保証した。次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
  • AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名したときは、Cが弁済をする資力を有しなくなったときでも、Bは、Aに対し、Cに代えて資力を有する保証人を立てることを請求することはできない。
  • AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名するときは、Cは、行為能力者でなければならない。
  • BのAに対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、Cに対しても、その効力を生ずる。
  • Cの保証債務は、Aの債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
  • Cは、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。

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この過去問の解説 (2件)

01

保証債務

債権総論における保証は連帯債務と並んで重要です。

本問の選択肢はやや細かいところがありますが、民法の条文をしっかりと読んでおきましょう。

選択肢1. AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名したときは、Cが弁済をする資力を有しなくなったときでも、Bは、Aに対し、Cに代えて資力を有する保証人を立てることを請求することはできない。

「債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一 行為能力者であること。

二 弁済をする資力を有すること。」(民法450条1項)

「保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。」(同2項)

「前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない」(同3項)

本肢では債権者であるBが保証人としてCを指名しているため、保証人を立てる事を請求することはできません。

選択肢2. AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名するときは、Cは、行為能力者でなければならない。

×

「債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一 行為能力者であること。

二 弁済をする資力を有すること。」(民法450条1項)

前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない」(同3項)

本肢では債権者であるBが保証人としてCを指名しているため、Cは行為能力者であることは不要です。

選択肢3. BのAに対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、Cに対しても、その効力を生ずる。

「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。」(民法457条1項)

なお、主たる債務者に生じた事由は、時効の利益の放棄や保証債務の信義則に反する加重変更などを除いて保証人にも効果が及びます。

選択肢4. Cの保証債務は、Aの債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。

「保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。」(民法447条1項)

選択肢5. Cは、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。

保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。」(民法447条2項)

まとめ

主たる債務者に生じた事由は原則として保証人にも及びますが、保証人に生じた事由は弁済・代物弁済・供託(債務消滅行為)を除き主たる債務者に影響を及ぼしません。

※連帯保証人に生じた事由は連帯債務と同様に債務消滅行為のほか相殺・更改・混同が絶対効となります。

 

 

 

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02

保証契約に関する基礎知識を問う問題です。「民法の規定に照らし」とあるので条文知識だけでも解けます。

 

保証債務は保証人と主債務の債権者との間の保証契約により生じる債務で、保証契約は主債務の発生原因である主債務契約とは「別個独立の契約」です。
例えば保証人が主債務者から委託を受けて保証人になった場合、主債務者と保証人の間には保証委託契約があります。この保証委託契約が、詐欺、錯誤により取り消されたとしても、保証人と債権者との間の保証契約の効力には直接影響しません(第三者の詐欺の問題になることはあり得ます)。これが「別個独立の契約」の意味です。

 

保証債務の性質は、民法の必修知識です。
保証債務には次の3つの性質があります。

付従性
保証債務はあくまでも主たる債務を担保する目的のものです。
したがって、
(1)主債務が成立しなければ保証債務も成立しません(成立における付従性)。
(2)保証債務の内容は主債務よりも重くはなりません(内容における付従性)。
(3)主債務が消滅すると保証債務も消滅します(存続における付従性)。
保証債務の存否及び内容は主債務の存否及び内容に従うということです。

 

(1)について、主債務が将来発生する債務であり、保証契約時点でまだ発生していなかったとしても、保証契約を有効に締結することができます。


(2)について、


民法第448条第1項「保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。」
同条第2項「主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。」
 

という明文の規定があります。
 

(3)について、主債務が他の債権に転じた、例えば、主債務が解除その他により損害賠償債務が発生したり不当利得返還請求権が発生したりした場合に、その主債務が転じた債権を担保するためになお、保証契約が存続することはあります。

この点、行為能力の制限を理由とする取消しの場合には、明文の規定があります。


民法第449条「行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。」

 

それ以外でも、例えば債務不履行を理由とする解除による原状回復義務(その法的性質は不当利得返還請求です)及び損害賠償請求について、保証契約により担保されることを示した最大判昭和40年6月30日(裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan)などがあります。

 

②随伴性
主債務が移転すると保証債務も移転します。
すなわち、主債務が移転して債"権"者が交代すると、特段の手続がなくても保証債務も新債"権"者に移転して保証債務の債権者も新債"権"者に交代します。
つまり、主債務の債権譲渡を受けた新債権者は、当然に保証債務の履行を請求することができます。

 

③補充性
保証債務は、主債務に従たる債務であり、


民法第446条第1項「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。」
 

の通り、あくまでも補充的な責任です。
このため、保証人には催告の抗弁検索の抗弁があります。
すなわち、保証債務の履行の請求に対しては、まず主債務者に請求しろと言うことができます(催告の抗弁)し、又、主債務者に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明すれば、債権者は保証人よりも先に主債務者に執行を行わなければなりません(検索の抗弁)。

 

(催告の抗弁)
第452条「債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。」
(検索の抗弁)
第453条「債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。」

 

もっとも、保証契約はほとんどの場合、実際にはこの検索の抗弁を特約で排除しています。それが「連帯保証」です。「連帯保証」の場合には、③補充性、つまり、催告の抗弁と検索の抗弁はありません。
ですから、実際にはほとんどの場合、債権者は、主債務者を飛ばしていきなり保証人に対して履行を請求し、かつ、保証人の財産に対して最初から執行を行うことができます。

 

(連帯保証の場合の特則)
第454条「保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。」

 

なお、連帯保証の場合、さらに分別の利益がありません
分別の利益とは、保証人が複数いる(共同保証と言います)場合に、各保証人は負担割合に応じた分だけの責任を負うというものです。

 

民法第456条「数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。」
民法第427条「数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。」


これを排除して、各保証人が全部の責任を負う特約を付けた場合を「保証連帯」(連帯保証と間違えないように注意してください)と呼びますが、連帯保証も同様に分別の利益がない(言い換えれば連帯保証は同時に保証連帯である)とするのが判例・通説です。
よって、連帯保証であれば、各保証人は、全部の責任を負うことになります。

選択肢1. AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名したときは、Cが弁済をする資力を有しなくなったときでも、Bは、Aに対し、Cに代えて資力を有する保証人を立てることを請求することはできない。

正しいです。

 

ひっかけを狙った問題だと思います。
ABCが何者かを正しく把握しないと、勘違いする可能性があります。解答政策として、問題文に権、ム、保などと書き込んで間違えないようにしておくとよいと思います。
普通の感覚で読み飛ばすと間違えます。一字一句注意して読む必要があります。
 

民法第450条第2項「保証人が前項第二号に掲げる要件(行為能力者であり、かつ、弁済する視力を有すること。筆者註)を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。」

同条第3項「前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。」

 

問題文にわざわざ(主債務の債"権"者、兼、保証債務の債権者)Bが(保証人)Cを指名すると書いてあるのがミソです。
だいたい一般的に保証契約では、主債務者Aが保証人を探してくることが多いので、それが原則なのですが、例外的に、債権者が保証人を指名する場合には、同条第3項により同条第2項は適用されません(保証会社などを使う場合ですね)。
よって、保証人Cが弁済する資力を欠いたとしても、債権者Bは代わりの保証人を立てることを主債務者Aに対して請求することはできません。

選択肢2. AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名するときは、Cは、行為能力者でなければならない。

誤りです。よってこの肢が正解です。

 

債権者Bが保証人Cを指名するとわざわざ書いてあります。

 

民法第450条第3項「前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。」

 

ので、

 

民法第450条第1項「債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一 行為能力者であること。
二 弁済をする資力を有すること。

 

は適用されません。
よって、保証人Cは行為能力者である必要はありません。

選択肢3. BのAに対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、Cに対しても、その効力を生ずる。

正しいです。

 

条文の文言そのままです。

 

民法第457条第1項「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。」

 

主債務者に対する請求による時効の完成猶予等の効力は、保証人にも効力が及ぶというものです。保証契約の存続における付従性を示す条文です。


逆に保証人に対する請求は主債務者には及びません。

選択肢4. Cの保証債務は、Aの債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。

正しいです。

 

条文の文言そのままです。

 

民法第447条第1項「保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。」

 

保証契約の内容における付従性を表す条文です。

 

なお、同条第2項「保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。」は、保証債務の履行の確保のために「保証債務の不履行について」違約金等を定める場合の規定であり、保証債務を主債務よりも加重するものではありません。

選択肢5. Cは、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。

正しいです。

 

条文の文言そのままです。

 

民法第447条第2項「保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。」

 

同項は保証債務の履行の確保のために「保証債務の不履行について」違約金等を定める場合の規定であり、保証債務を主債務よりも加重するものではありません。

まとめ

保証は基礎知識なので、きちんと憶えておきましょう。


なお、保証契約は要式契約、つまり、書面(又は電磁的記録)でしなければ効力を生じません。

 

民法第446条第2項「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」

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