行政書士 過去問
令和6年度
問36 (法令等 問36)
問題文
匿名組合における匿名組合員に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
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問題
行政書士試験 令和6年度 問36(法令等 問36) (訂正依頼・報告はこちら)
匿名組合における匿名組合員に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。
- 匿名組合員は、匿名組合契約に基づき営業者が負った債務について、当該匿名組合員が匿名組合の当事者であることをその債務に係る債権者が知っていたときには、当該営業者と連帯して弁済する責任を負う。
- 出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない。
- 匿名組合員は、営業年度の終了時において、営業者の営業時間内に、営業者の業務及び財産の状況を検査することができる。
- 匿名組合員が破産手続開始の決定を受けた場合、匿名組合契約は終了する。
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この過去問の解説 (2件)
01
本問は、匿名組合について条文知識を問う問題です。
商行為法は、条文数もたかが知れていますが、行政書士試験では対策に時間をかけるところではありません。
試験対策という観点から言えば、捨て問扱いでも構わないという気はします。
匿名組合とは、極簡単に言えば、「1人の営業者と1人の出資者(匿名組合員)がいて、出資者は金だけ(顔を出さないので「匿名」)出し、営業者は営業して金儲けをする。そこで出た利益は2人で分配する」というものです。
2人でなければならず、3人以上でやることはできません。
たとえ1人の営業者に対して2人以上の出資者がいたとしても、それぞれが営業者と個別に匿名組合契約を締結するだけ(つまり、出資者の数だけ匿名組合契約が成立する)で、出資者相互には何の関係もありません。
なお、匿名組合は一般には馴染みが薄いと思いますが、結構、歴史のある制度です。不良債権処理、M&Aなどで利用されることがあります。
正しいです。
商法第536条第1項「匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。」
匿名組合において、出資財産は営業者のものであり、匿名組合員のとの間に共有関係は生じません。
匿名組合では、営業者と匿名組合員の役割ははっきり分かれていて、営業を行うのは営業者のみ、匿名組合員は出資のみです。
そして、営業の執行はすべて営業者のみが行うので、営業のための財産は営業者の単独所有となっています。
誤りです。よってこの肢が正解です。
商法第536条第4項「匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しない。」
営業者が何をしようが、匿名組合員は第三者に対して「権利義務を負わない」と書いてあります。
ただし例外があります。
商法第537条「匿名組合員は、自己の氏若しくは氏名を営業者の商号中に用いること又は自己の商号を営業者の商号として使用することを許諾したときは、その使用以後に生じた債務については、営業者と連帯してこれを弁済する責任を負う。」
これは民事、商事法の基本原則の信義則の一つである禁反言に基づく規定で、取引の安全の見地から、営業者のような外観を作出したならばやはり責任なしというわけにはいかないということです。名板貸し責任などと同趣旨です。
正しいです。
商法第538条「出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない。」
本条は、利益の配当を受けられるのだから損失も負担させるべきであるという趣旨です。
匿名組合では営業年度ごとに財産を計算して、期首財産に対して期末財産が増えていれば利益、減っていれば損失ということになります。
気を付けて欲しいのは、「実際に生じた損失を補填する義務はない」ことです。つまり、事業年度末に計算したところ、財産が減っていた、つまり、損失が出ていたとしても、匿名組合員がその額をてん補して財産を当初の額に戻す義務があるわけではないということです。
あくまでも出資額が目減りしていた場合、「その会計上の数字としての目減り分(=損失)は匿名組合員の負担となる」という話です。
538条の意味は、例えば出資財産が1000万円に対して期末財産が900万円となって100万円の損失が生じたとして、翌営業年度に期末財産が1100万円となれば期首財産900万円に対して「200万円の利益が出た」ことになりますが、前期の100万円分の「損失をてん補した残りの100万円分のみ」について利益配当を請求することができるということです。
正しいです。
商法第539条「匿名組合員は、営業年度の終了時において、営業者の営業時間内に、次に掲げる請求をし、又は営業者の業務及び財産の状況を検査することができる。」
匿名組合員は自ら事業を執行することはできませんが、出資者として、営業の経過、結果には重大な利害関係があります。
そこで、営業監視権が認められています。
正しいです。
商法第541条「前条(一定の場合の解除の規定。筆者註)の場合のほか、匿名組合契約は、次に掲げる事由によって終了する。
一 匿名組合の目的である事業の成功又はその成功の不能
二 営業者の死亡又は営業者が後見開始の審判を受けたこと。
三 営業者又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたこと。
」
2号3号は、営業者が財産管理能力を喪失しているので、もはや任せておけないというのは理解できるでしょう。
これは、当事者の意思と無関係な終了原因です。
その他に、当事者間の約定による終了原因があり、民法の一般原則通りに、存続期間を定めた場合の存続期間の満了でも終了します。また、商法540条に契約解除の規定があります。
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02
匿名組合員
商法上の匿名組合員の規定に関する問題です。
ややマイナーですが条文を学習しておけば問題なく解ける問題です。
〇
「匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。」(商法536条)
×
「匿名組合員は、自己の氏若しくは氏名を営業者の商号中に用いること又は自己の商号を営業者の商号として使用することを許諾したときは、その使用以後に生じた債務については、営業者と連帯してこれを弁済する責任を負う。」(商法537条)
本肢では匿名組合員は氏や商号の使用を許諾しておらず、単に債権者が匿名組合員が匿名組合契約の当事者であることを知っていただけなので、連帯債務者としての責任を負いません。
〇
「出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない。」(商法538条)
〇
「匿名組合員は、営業年度の終了時において、営業者の営業時間内に、・・・営業者の業務及び財産の状況を検査することができる。」(商法539条1項)
〇
「営業者又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたこと。」(商法541条3号)により匿名組合契約は終了します。
マイナーなところではあるのであまり踏み込んだ問題は出題されませんが、条文(商法535条~542条)を一読しておけば学習としては十分かと思います。
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