行政書士 過去問
令和6年度
問37 (法令等 問37)

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問題

行政書士試験 令和6年度 問37(法令等 問37) (訂正依頼・報告はこちら)

株主の議決権に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア  株主総会における議決権の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を生じない。
イ  株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。
ウ  取締役候補者である株主は、自らの取締役選任決議について特別の利害関係を有する者として議決に加わることができない。
エ  監査役を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
オ  役員等がその任務を怠ったために株式会社に生じた損害を賠償する責任を負うこととなった場合に、当該責任を免除するには、議決権のない株主を含めた総株主の同意がなければならない
  • ア・ウ
  • ア・エ
  • イ・エ
  • イ・オ
  • ウ・オ

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この過去問の解説 (2件)

01

株主の議決権

会社法上の株主の議決権や株主総会に関する問題です。

選択肢1. ア・ウ

ア ×

株式会社は株主総会での議決権の全部または一部を制限する株式(議決権制限株式)を発行できます。(会社法105条3号)

 

ウ ×

取締役候補である株主も自己の取締役選任の株主総会において議決権を行使できます。

 

選択肢2. ア・エ

ア ×

株式会社は株主総会での議決権の全部または一部を制限する株式(議決権制限株式)を発行できます。(会社法105条3号)

 

エ ×

監査役の解任決議は株主総会の特別決議によります。(会社法309条2項7号)

つまり原則は議決権の過半数を有する株主が出席し、当該議決権の3分の2以上をもって可決しなければなりません。

選択肢3. イ・エ

イ 〇

「株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。」(会社法308条2項)

 

エ ×

監査役の解任決議は株主総会の特別決議によります。(会社法309条2項7号)

つまり原則は議決権の過半数を有する株主が出席し、当該議決権の3分の2以上をもって可決しなければなりません。

選択肢4. イ・オ

イ 〇

「株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。」(会社法308条2項)

 

オ 〇

「前条第一項の責任(役員の任務を怠ったことによる損害賠償責任)は、総株主の同意がなければ、免除することができない。」(会社法424条)

選択肢5. ウ・オ

ウ ×

取締役候補である株主も自己の取締役選任の株主総会において議決権を行使できます。

 

オ 〇

「前条第一項の責任(役員の任務を怠ったことによる損害賠償責任)は、総株主の同意がなければ、免除することができない。」(会社法424条)

まとめ

株主総会の議決事項

役員の選任・・・普通決議

役員の解任・・・原則は普通決議(監査役・監査等委員である取締役・累積投票で選任された取締役は特別決議)

定款変更・・・特別決議

(株式の譲渡制限規定の設定は特殊決議、取得条項の設定は特殊決議)

役員の任務懈怠による損害賠償責任の免除・・・総株主の同意

株式の譲渡制限規定の設定・・・単一株式発行会社であれば株主総会特殊決議

              種類株式発行会社であれば株主総会特別決議

              +種類株主総会の特殊決議

 

が必要になります。

 

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02

本問は、株主の議決権と株主の意思決定の要件を問う問題です。
株主の意思決定の要件は、株主総会における①普通決議②特別決議③特殊決議(2種類)が基本ですが、それ以外にも、役員の選解任、責任の免除など特定の事項について個別の定めがあります。
面倒ではありますが、重要なのできちんと理解しておきましょう。

 

 

アは誤りです。


株式会社は、議決権の全部を与えない株式を発行することができます

株式会社は、内容の異なる2種類以上の株式を発行することができます(この異なる種類の株式を「種類株式」と呼びます。)

 

会社法第108条第1項本文「株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。……
……
三 株主総会において議決権を行使することができる事項
……」

 

株式の種類ごとに「株主総会において議決権を行使することができる事項」を変えることができるわけですが、この「事項」を「なし」とすれば、すべての事項について議決権が行使できない、つまり、「議決権の全部を与えない株式」となります。

 

 

イは正しいです。


株式会社は自己株式について議決権がありません
自己株式に議決権を認めると、その議決権を会社が行使することになりますが、それは実質において取締役会が行使できるのと同義になります。そうすると、取締役会に都合がよい議決ができることになりかねません。

 

会社法第308条第2項「前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。」

 

 

ウは誤りです。


会社法には、取締役選任決議について株主の資格を制限する規定はありません取締役候補者である株主であっても、株主である以上、会社の意思決定に参加する資格があるのであり、その資格に基づいて自らを取締役に選任する株主総会決議において議決権を行使できます。

そもそも株主は会社の利益のために議決権を行使するのではなく、自らの利益のために行使して構わないので、取締役選任決議について会社との間に特別の利害関係があるとは言えません(なお、仮に特別の利害関係があったとしても、その結果として決議が著しく不当となったのでない限り、決議の取消しの訴えは棄却されます)。

 


なお参考ですが、取締役会において代表取締役を解職する場合は、注意が必要です。取締役は、会社との関係は委任(会社法第330条「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。」)であり、忠実義務(会社法第355条「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」)を負っています
代表取締役の解職の場合、代表取締役と他の取締役との間に対立が存在するのが通常で、そこで代表取締役が私心を捨てて会社にとって何が利益かを忠実に判断できるかどうかは疑いがあります。そこで、この場合には、当該代表取締役は、会社法第369条第2項の「特別の利害関係を有する取締役」に該当するものとして、議決に加わることができません(最判昭和44年3月28日裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan)
一方で、選定の場合においては、取締役間の対立があるわけではなく、そもそも選定はすべての取締役に共通の利害であるので、極論を言えば、全員が決議に参加できなくなってしまいかねませんから、「特別の利害関係を有する取締役」には該当しないとされています。

 


エは誤りです。


監査役の選任は、役員の選解任決議の一般的決議要件である会社法第341条によりますが、解任については、同法第343条第4項において第341条は「適用しない」となっており、同法第309条第2項第7号により、特別決議によることとされています。

 

会社法第341条「第309条第1項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。」


同法第343条第4項「第341条の規定は、監査役の解任の決議については、適用しない。」
 

同法第309条第2項「……次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
……
七 第339条第1項の株主総会(……監査役を解任する場合に限る。)


なお、役員選解任の決議要件は基本的には普通決議と同様ですが、普通決議の定足数が定款で自由に定められる(会社法第309条第1項前段)のに対して役員選解任の定足数は議決権を行使することができる株主の議決権の少なくとも1/3以上であることが必要であり、又、議決数も普通決議が単に出席株主の過半数としているのに対して、定款で加重することができる点が異なります。

 


オは正しいです。


役員等は、任務を怠ったことで株式会社に生じた損害を賠償する責任を負います。
この役員等の任務懈怠責任を免除するには、議決権のない株主も含めた総株主の同意が必要です。

 

会社法第423条第1項「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
 

同法424条「前条第一項の責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。」

 

 

以上により、イとオが正しいことになります。

選択肢1. ア・ウ

ア、ウともに誤りです。

よってこの肢は誤りです。

選択肢2. ア・エ

ア、エともに誤りです。

よってこの肢は誤りです。

選択肢3. イ・エ

イは正しいです。

エは誤りです。

よってこの肢は誤りです。

選択肢4. イ・オ

イ、オともに正しいです。

よってこの肢が正解です。

選択肢5. ウ・オ

ウは誤りです。

オは正しいです。

よってこの肢は誤りです。

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