行政書士 過去問
令和6年度
問40 (法令等 問40)
問題文
会社訴訟に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款に別段の定めがないものとする。
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問題
行政書士試験 令和6年度 問40(法令等 問40) (訂正依頼・報告はこちら)
会社訴訟に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款に別段の定めがないものとする。
- 株主総会の決議の内容が法令に違反するときは、当該株主総会決議の日から3か月以内に、訴えをもってのみ当該決議の取消しを請求することができる。
- 会社の設立無効は、会社の成立の日から2年以内に、訴えをもってのみ主張できる。
- 新株発行無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされた行為は、将来に向かってその効力を失う。
- 6か月前から引き続き株式を有する株主は、公開会社に対し、役員等の責任を追及する訴えの提起を請求することができる。
- 株式会社の役員の解任の訴えは、当該株式会社及び当該解任を請求された役員を被告とする。
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この過去問の解説 (2件)
01
本問は、会社法上の訴えについて、横断的に条文の知識を問う問題です。
会社法上の訴えは様々なものがありますが、最低限、
・会社の組織に関する行為の無効の訴え各種
・株主総会等の決議の不存在又は無効確認の訴え
・株主総会等の決議取消しの訴え
・株式会社における責任追及の訴え
・株式会社の役員の解任の訴え
の内容、提訴権者、提訴期間、被告、その他提訴の要件、判決の効力の特則は押さえておきましょう。もちろん、これだけでいいというわけではありません。
誤りです。よってこの肢が正解です。
株主総会決議の内容が「法令に違反する」場合、「当然に無効」であり、取消しの余地はありません。
よってこの場合、「株主総会決議の無効の確認の訴え」を提起します。
会社法第830条第2項「株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。」
そもそも法令に違反するような内容の決議に法的効力を認めることは法の自己否定になりますから認められません。ですから、有効になる余地など少しもありません。つまり、当然に無効です。
その上で、その当然に無効を法的に公証するために「無効確認の訴え」が認められています。
無効なので出訴期間の制限はありません。
これがもし仮に決議の内容が定款に違反するだけであれば、定款は自治規範であり、変更も可能なのですから、当然に無効とまでは言えません。
そこで「株主総会決議取消しの訴え」をもって訴えを取り消す必要があります。
この株主総会決議取消しの訴えは会社法第831条に規定があります。
会社法第831条第1項
「次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。……
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
」
正しいです。
会社の設立無効の訴えは、会社成立の日(=設立登記の日)から2年以内に起こす必要があります。
会社法第828条「次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
一 会社の設立 会社の成立の日から2年以内
……」
設立手続に瑕疵があれば設立は無効となります。
しかし、現に存在している会社を法的には存在しなかったことにするとなると、設立が有効であるという前提の元に既に形成された多くの法律関係に影響を及ぼし、取引の安全を害します。
そこで会社法では、無効である設立について、提訴権者、提訴期間、方法を制限して、会社成立の日から2年以内に株主等が会社を被告として設立無効の訴えを起こすことでのみ主張できると限定(会社法第828条、第834条)し、設立無効の判決の効力も将来効のみ(同法839条)としています。
また、判決の効力は、民事訴訟の原則である訴訟当事者のみに及ぶのではなく、第三者に対しても及ぶことになります(同法838条。対世効)。
正しいです。
会社法上の組織に関する行為の無効の訴えの判決の効力は、民事訴訟の判決の効力が訴訟当事者のみに及ぶという一般原則と異なり、対世効(対第三者効)があります(会社法第838条)。そこで取消し又は無効の効力を原則通りに貫徹すると既に形成された法律関係がちゃぶ台返しになり権利関係が複雑化し、取引きの安全も害するなど不都合が生じます。
そこで、取消しの遡及効及び無効の本来的効力を制限しています。
会社法第839条「会社の組織に関する訴え(第834条第1号から第12号の2まで、第18号及び第19号に掲げる訴えに限る。)に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ、又は取り消された行為(……)は、将来に向かってその効力を失う。」
同法第834条第2号「株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え(第八百四十条第一項において「新株発行の無効の訴え」という。)」
新株発行無効の訴えの法的性質は、「形成訴訟」(*)であり、実際には、無効というよりも取消訴訟です。
新株発行が無効となると社会的な影響が大きいので、提訴権者、提訴期間、方法が制限されており、新株発行の効力が生じた日から6か月(公開会社以外の会社は1年)以内に、株主等が株式発行した会社を被告として新株発行無効の訴えによってのみ主張することができ(会社法第828条第1項第2号、同条第2項第2号、同法第834条第2号)、その判決の効力も将来効のみです(同法839条)。
(*)形成訴訟とは。
これは民事訴訟の知識ですが、民事訴訟には、3つの類型があるとされています。
①給付訴訟=一定の給付を求める訴訟です。典型的な訴訟形態と言ってもいいです。給付の内容は、金銭の支払いかも知れませんし、一定の物の引き渡しかも知れません、何らかの行為を行うこと(作為請求)かも知れませんし、一定の行為を行わないこと(不作為請求)かも知れません。
②確認訴訟=一定の法律関係の存否を裁判所に公証してもらう訴訟です。確認しても判決に執行力がないのでそれだけでは何も起こりません。ですから、給付訴訟ができない時に確認訴訟を行うというのが通常です。典型的には、債務不存在確認訴訟があります。債務者側から起こす訴訟としては、給付を求めることはできませんから、確認訴訟によらざるを得ません。
③形成訴訟=判決が確定すると一定の法律効果が発生する訴訟です。例えば離婚訴訟などは、判決が確定すると離婚の効力が生じます。会社法上の組織に関する行為の無効の訴えも、その判決の確定により無効の効力が生じるので、形成訴訟ということになります。
正しいです。
公開会社の場合、株主による役員等に対する責任追及の訴えの請求は、請求時点から遡って6カ月以上の間、株式を保有していた者に限られます(会社法第847条第1項本文)。これは濫訴の防止のためです(それ以外にも、当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は訴えは認められません(同条同項ただし書き))。
公開会社でなければ保有期間の制限はありません(同条第2項)。
会社法第847条第1項本文「六箇月(……)前から引き続き株式を有する株主(……)は、株式会社に対し、……役員等……の責任を追及する訴え、……の提起を請求することができる。」
なお、
同条第3項「株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。」
同条第5項本文「第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。」
とありますが、この株主が「株式会社のために」起こす訴訟がいわゆる株主代表訴訟です。
形式論としては、株式会社が原告として役員等を訴えるのですが、実際には、訴訟追行をする権限のある役員が会社を「代表して」訴訟を行います。
しかし、役員同士のなれ合いなどで身内の役員を被告とする訴訟には消極的であることがよくあり、うやむやにすることもあり得ます。その場合、株主が訴訟追行権限のある役員に代わって、会社を「代表して」訴訟を起こすという意味で、株主代表訴訟と言います。あくまでも会社と役員が訴訟当事者であり、会社と役員の間に対立がなければこの訴訟は成り立ちません。
勘違いしている人を時々見かけますが、株主と役員の対立は株主代表訴訟にはならないのです。
正しいです。
公開会社の役員解任の訴えは、総株主(解任決議に議決権がない株主及び解任請求を受けた役員を除く)の議決権の3%以上の議決権又は発行済み株式(自己株式及び解任請求を受けた役員の保有する株式を除く)の3%以上の株式を、6カ月以上の期間有する株主が、株主総会の日から30日以内に、会社及び解任請求を受けた役員を共同被告として提起することができます。
会社法第855条「前条第1項の訴え(次条及び第937条第1項第1号ヌにおいて「株式会社の役員の解任の訴え」という。)については、当該株式会社及び前条第1項の役員を被告とする。」
会社法第854条第1項「役員(……)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第三百二十三条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。
(以下略)」
なお、公開会社でなければ6か月要件はありません。
同条第2項「公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。」
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02
会社訴訟
会社に関する訴えの各要件・効果についての問題です。
提訴要件や提訴期間について押さえておきましょう。
×
決議の内容が法令に違反する場合は「株主総会決議の無効確認の訴え」を提起します。(会社法830条2項)
そして無効確認の訴えに出訴期間の制限はありません。
※決議の内容が定款に違反する場合もしくは招集・決議の方法が法令に違反もしくは著しく不公平な場合、特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされた場合は「株主総会決議の取消しの訴え」を提起します。
こちらは決議の日から3か月の期間制限があります。(会社法831条1項)
〇
会社の設立無効の訴えは成立の日から2年間の出訴期間制限があります。(会社法828条1項1号)
〇
新株発行無効の認容判決がされた場合、その判決の効果は将来に向かってのみ生じます。(会社法839条)
〇
公開会社の場合、役員の責任追及の訴えの提起には6か月の株式保有期間の制限があります。(会社法847条1項)
〇
株式会社の役員の解任の訴えにおいては当該株式会社及び当該解任を請求された役員を被告とします。(会社法855条 固有必要的共同訴訟)
出訴期間や被告となるもの、原告について保有期間・保有割合が限定されている場合を整理して学習しましょう。
取消しの訴えでも持分会社の設立の取消しの訴えや無効の訴えには遡及効がなく将来効となります。その他の取消しの訴えには遡及効があります。
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