行政書士 過去問
令和6年度
問39 (法令等 問39)
問題文
株式交換に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。
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問題
行政書士試験 令和6年度 問39(法令等 問39) (訂正依頼・報告はこちら)
株式交換に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 株式交換完全親会社は、株式会社でなければならない。
- 株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の発行済株式の一部のみを取得することとなる株式交換を行うことができる。
- 株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の株主に対し、当該株式交換完全親会社の株式に代わる金銭等を交付することができる。
- 株式交換完全親会社の反対株主は、当該株式交換完全親会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することはできない。
- 株式交換契約新株予約権が付された、株式交換完全子会社の新株予約権付社債の社債権者は、当該株式交換完全子会社に対し、株式交換について異議を述べることはできない。
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この過去問の解説 (2件)
01
株式交換
株式交換とは既存の会社同士を完全親子会社の関係にする組織再編制度になります。
完全親会社が完全子会社の株主に金銭等の財産を給付し、完全子会社の株式を取得する制度になります。
×
株式交換完全親会社には株式会社または合同会社がなることができます。(会社法768条~771条)
※株式移転完全親会社は株式会社しかなることができない点に注意してください。
×
株式交換は既存の会社同士を完全親子会社の関係にする組織再編形態なので、完全子会社の株式の一部しか取得しないことは原則できません。
「株式交換 株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう。以下同じ。)の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。」 (会社法2条31号)
〇
株式交換完全子会社の株主に金銭を交付することも可能です。この場合その旨を株式交換契約に定めます。(会社法768条2項 770条3項)
×
完全親会社の反対株主も株式買取請求をすることができます。(会社法797条1項)
(※簡易株式交換・略式株式交換の場合を除く)
×
完全子会社の株式交換契約新株予約権が付された新株予約権付社債の社債権者は異議を述べることができます。(会社法789条1項3号)
会社法上の組織再編は手続きが細かく中々に煩雑な面がありますが、個別に整理して学習していきましょう。
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02
本問は、株式交換について条文知識を問う問題です。株式交換は内容自体はそれほど難しくはありません。しかし、組織再編全体の中に埋もれてあまり勉強しないところかもしれません。
株式交換という名前は、完全親会社となる会社が、完全子会社とする会社の株主の保有する株式を取得するにあたって、株式を買い取るのではなく、自社の株式と「交換」することによります。完全子会社にするために、市場で株式を買収するのは金銭的な負担が大きいですし、値が吊り上がってしまうと買収に失敗することすらあり得ます。そこで、自社株を新規に発行して交換することで取得コストを抑えるというものです。
株式交換という呼び名は旧商法時代の名残りで、会社法においては、完全子会社となる会社の株式と交換する対価は、完全親会社となる会社の株式以外でも構いません(条文上は「金銭等」と言います)。株式以外に、金銭、社債、新株予約権、新株予約権付社債、その他の財産とほぼ何でもありです。
ところで本問は、正解肢を含めた記述に問題があり、控えめに言っても悪問だと思います。正解なしではないかと言われても文句言えないと思います。
誤りです。
株式交換により完全親会社となる会社は、株式会社だけでなく合同会社でも構いません(余談ですが、Amazonの日本法人は合同会社ですね)。
株式交換の定義規定にそう書いてあります。
会社法第2条第31号「株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう。以下同じ。)の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。」
また、以下の規定もあります。
同法第767条「株式会社は、株式交換をすることができる。この場合においては、当該株式会社の発行済株式の全部を取得する会社(株式会社又は合同会社に限る。以下この編において「株式交換完全親会社」という。)との間で、株式交換契約を締結しなければならない。」
誤りです。
株式交換完全親会社は、「完全」親会社というくらいですから、株式交換「完全」子会社の全部の株式を取得します。全部の株式を(間接的であっても)保有する会社を完全親会社と言うのです。
つまり、問題に答えが書いてあるというサービス肢です。
もっとも逆に、「株式交換完全親会社が既に保有している株式があればそれは取得の必要がないから、残りだけを取得するという意味で『一部』となることもあるかも知れない」と深読みをすると間違えるという嫌な肢とも言えます。素直に条文の文言通りに読むのが吉です。
そもそも株式交換の定義からして「株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう。以下同じ。)の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。」(会社法第2条第31号)ですから、「全部」を取得しなければ株式交換になりません。
また、同法第769条第1項にも、
「株式交換完全親株式会社は、効力発生日に、株式交換完全子会社の発行済株式(株式交換完全親株式会社の有する株式交換完全子会社の株式を除く。)の全部を取得する。」
と書いてあります。
括弧書きに「嫌な」ことが書いてありますね。定義規定には書いてないのになぜここにだけ書いてあるかと言えば、株式交換より前に既に保有していた株式であっても最終的に取得する「全部」の中に取り込まれるのでわざわざ分ける必要がないところ、株式交換により取得する分の「取得する日」の規定だけは、既に保有している分を含めるわけにはいかないからでしょう。
他が間違っているので一応正しいです。よってこの肢が正解です。
株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の株主に対して、金銭等を交付することができます。
会社法第768条第1項第2号に「株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代わる金銭等を交付するときは」
とあり、「金銭等を交付」とはっきり書いてあります。
ちなみに、金銭等を交付しない=対価なしということも制度上は可能です。
ただし、この肢は若干問題のある肢ではあります。
というのは、株式交換完全親会社が株式会社である場合(株式交換完全親「株式」会社)であれば、自社の株式を株式交換完全子会社の株主に交付することができますが、株式交換完全親会社が合同会社(株式交換完全親「合同」会社)の場合、そもそも自社の株式が存在しないので、交付する金銭等は「株式に代わる」ものとは言えないからです。
問題文に、「株式交換完全親『株式』会社は」と書くべきですね。
さて、ここから先は余談の私見ですが、この問題文の作成者は会社法第768条の条文を読み間違えているのではないかと思います。
上に引用した通り条文には「その株式に代わる金銭等を交付」と書いてあるわけですが、「その株式」とは「株式交換完全『子』会社の株式」です。株式交換完全「親」株式会社の株式ではありません。
なぜなら、続いて、第768条第1項第2号イに「当該金銭等が株式交換完全『親』株式会社の株式であるときは」と書いてあるので、株式交換完全「親」株式会社の株式は「金銭等」の一種であり、「その株式」であるはずがないからです。
ところがこの肢の記述は、「当該株式交換完全『親』会社の株式に代わる金銭等を交付」と書いてあります。条文と同じ表現であるにもかかわらず、条文とは異なり、「その株式=株式交換完全『子』会社の株式」ではなく、「当該株式交換完全『親』会社の株式」となっているのです。
確かに、この肢の記述は条文の表現とは無関係に、ただ「当該株式交換完全『親』(株式)会社の株式を『交付することに』代えて金銭等を交付」と書いただけなのかもしれません。それならそれだけの話です。
しかし、わざわざ条文の記述と全く同じ「株式に代わる金銭等を交付」という表現を使っておきながら条文の表現とは無関係とは考え難いです。
すると、条文の「その株式」を「株式交換完全『親』(株式)会社の株式」と読み間違えてこの肢を作ったのではないかとなるわけです。
そもそも条文の「金銭等」という文言には「株式交換完全親株式会社の株式」が含まれているので、株式交換完全親(株式)会社の株式に代えて(株式交換完全親株式会社の株式を含む)金銭等を交付できる」という記述は、条文の文言に照らすとおかしいのです。
そのようなおかしな記述になったのは、条文自体を読み間違えたせいではないかというわけです。
むろん、単に、条文と同じ表現でありながら違う意味にして紛らわしくしただけなのかも知れません。
しかし、法律学において条文と同じ用語を違う意味で使うのは、不適切以外の何ものでもありません。それがたとえ試験問題であったとしても。
誤りです。
原則として、株式交換完全親「株式」会社の反対株主は、株式交換完全親「株式」会社に対して、株式買取請求ができます。
会社法第782条1項柱書には、「吸収合併、吸収分割又は株式交換(以下この節において「吸収合併等」という。)」とあり、
同法第797条第1項本文は、「吸収合併等をする場合には、反対株主は、存続株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。」
となっています。
なお、株式交換完全子会社の反対株主についても、
会社法第785条第1項に「吸収合併等をする場合(……)には、反対株主は、消滅株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。」
という規定があります。
一般論として、事業譲渡、合併等の組織再編は、会社の事業に多大な影響があることから、反対株主には原則として株式買取請求が認められます。これは、株主の投下資本の回収の途を残すためです。
誤りです。
株式交換完全子会社の新株予約権付社債に対して株式交換契約新株予約権が付された場合、当該新株予約権付社債の社債権者は、当該株式交換完全子会社に対し、株式交換について異議を述べることができます(会社法第789条第1項第3号、会社法第782条1項柱書。条文は下記)。
肢の記述とは多少言い回しを変えましたが、くどい言い方で解りにくいですね。
まず前提知識を整理しておきます。
株式交換において株式交換完全子会社となる会社(以下この肢の解説において、「完全子会社」と言います)から株式交換完全親会社となる会社(以下この肢の解説において、「完全親会社」と言います)が取得するのは、完全子会社の「発行済み株式」だけです。(いわば潜在的株式に過ぎない)新株予約権は対象になりません。
すると、完全子会社に新株予約権が存在する場合、原則としては、その新株予約権はそのままということになります。
しかし、完全子会社にするために株式交換をするのに、完全子会社に新株予約権を残しておくと、新株予約権の行使により完全子会社に新たな株主が誕生して完全子会社ではなくなってしまいます。
そこで、完全子会社の株式と同様に、完全子会社の新株予約権についても、完全親会社の新株予約権を対価として取得することができるようになっています(会社法第768条第1項第4号)。この場合、完全親会社の新株予約権以外を対価とすることはできません)。
そして、完全子会社の新株予約権を完全親会社の新株予約権と交換する場合、完全子会社の新株予約権の方を「株式交換契約新株予約権」と呼びます(会社法第768条第1項第4号イ)。
さて、肢の記述に戻ります。
「株式交換契約新株予約権が付された、株式交換完全子会社の新株予約権付社債の社債権者は、当該株式交換完全子会社に対し、株式交換について異議を述べることはできない。」
これは条文の表現に直すと、
「株式交換契約新株予約権が(株式交換完全子会社の)新株予約権付社債に付された新株予約権である場合、その社債権者は、完全子会社に対して株式交換について異議を述べることができない」
と言っているのです。条文の表現と語順を変えてわざと解り難くしているのです。
そして、会社法第789条第1項第3号に、
「次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、消滅株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる。
……
三 株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合 当該新株予約権付社債についての社債権者」
とあり、会社法第782条1項柱書に、
「吸収合併、吸収分割又は株式交換(以下この節において「吸収合併等」という。)」
とあるので、「吸収合併等」を単純に「株式交換」に置き換えればそのまま、「異議を述べることができる」ことになります。
ところで原則的な話をすると、株式交換は債権者保護手続きを要しません。
なぜなら、株式交換完全親会社となる会社については、単に新株を発行するだけであって財産関係に変動があるわけではなく、債権者には関係がありませんし、株式交換完全子会社となる会社については、単に株主が代わっただけでこちらも財産関係に変動があるわけではないので、これも債権者には関係がないからです。
しかし、新株予約権付社債については、完全親会社の新株予約権付社債と交換することができます。すると、社債権者にとっては、債務者が代わってしまうことになります。
そこで、その手当として異議権を認めたわけです。
同様に、完全親会社の新株予約権付社債を新たに交付するわけですから、完全親会社の債権者が増えることになります。すると、完全親会社の既存の債権者を害するおそれがあるので、完全親会社の債権者は異議を述べることができます(会社法第799条第1項第3号)。
さらに、株式交換の対価が完全親会社の株式「以外」である場合、完全親会社の財産関係に変動がありますから、完全親会社の債権者を害する恐れがあるのでこの場合も異議を述べることができます(同条同項同号)。
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