管理栄養士の過去問
第37回
午後の部 問82

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問題

第37回 管理栄養士国家試験 午後の部 問82 (訂正依頼・報告はこちら)

K病院に勤務する管理栄養士である。
患者は、58歳、男性。COPDで、3年前より吸入薬を使用していた。風邪がきっかけで呼吸困難となり救急搬送された。入院後、気管支拡張薬、ステロイド薬が投与され、酸素療法を行っている。
入院時、身長170cm、体重50kg、BMI 17.3kg/m2。血圧132/90mmHg、心拍数135回/分、血清アルブミン値3.8g/dL、安静時エネルギー消費量1,440kcal/日。

この設問は、<前問>の続きの設問となります。

入院7日目、呼吸状態の改善に従い、食欲の改善も見られ、常食(3回)と栄養補助食品(1回)で、エネルギー目標量の5割を摂取できるようになった。リハビリテーションを開始するため、栄養管理計画を見直した。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
  • 1回当たりの食事量を増やす。
  • 脂肪エネルギー比率を下げる。
  • 常食を嚥下調整食に変更する。
  • 1回当たりの食事提供量を減らして、食事の回数を増やす。

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この過去問の解説 (3件)

01

COPDの病態を理解することにより、答えを導きやすくなります。

呼吸運動によって消費エネルギー量が増えます。

その結果、エネルギーを使わない安静時にも健常人よりもエネルギーを多く使い、体重が減少します。

選択肢1. 1回当たりの食事量を増やす。

不適切です。

COPDでは食事摂取量が減少します。

食べ物を噛んだり、飲み込んだりする際に呼吸が乱れたり、食事により満腹になると呼吸が苦しくなります。

そのため、1回当たりの食事量を増やすことは望ましくありません。

選択肢2. 脂肪エネルギー比率を下げる。

不適切です。

エネルギー摂取量を増やしたいため、脂肪エネルギー比率を下げるのは適していません。

選択肢3. 常食を嚥下調整食に変更する。

不適切です。

食欲の改善がみられ、常食を食べることができているため、嚥下調整食にする必要はありません。

選択肢4. 1回当たりの食事提供量を減らして、食事の回数を増やす。

適切です。

一度に多く食べることで呼吸が苦しくなることがあるため、必要エネルギー量を摂取するためにも、食事の回数を増やすことが望ましいです。

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02

日本におけるCOPD患者では、体重減少が約40%見られます。

COPDにおいて体重減少は予後を悪化させる重要な因子となっており、きちんと評価して適切な食事療法を行うことが大切です。

選択肢1. 1回当たりの食事量を増やす。

不適です。

 

エネルギー摂取量は増やしたいのですが、COPDにおいては腹部膨満感も起こしやすく、できるだけ分食をすることが適しています。

選択肢2. 脂肪エネルギー比率を下げる。

不適です。

 

エネルギー摂取量を増やすために、脂質は重要なエネルギー源となります。

選択肢3. 常食を嚥下調整食に変更する。

不適です。

 

常食が摂れているので嚥下調整食に変更する必要はありません。

選択肢4. 1回当たりの食事提供量を減らして、食事の回数を増やす。

適切です。

 

食事はできるだけ分食し、ゆっくりと摂取することで空気嚥下を避けることが大切です。

まとめ

COPDにおいては腹部膨満感も起こしやすく、エネルギー摂取量を増やすためにできるだけ分食をすることが適しています。

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03

COPD患者の栄養管理では、消費エネルギー増大によるエネルギーの補充や、食欲不振による食事量のコントロールが課題となります。

選択肢1. 1回当たりの食事量を増やす。

不適です。

COPD患者は肺の膨張により、胃が圧迫されるため食欲不振に陥りやすいです。

反対に胃の内容物が多くなると肺が圧迫されるため呼吸がしにくくなります。

そのため食事量を増加させることは望ましくありません。

選択肢2. 脂肪エネルギー比率を下げる。

不適です。

COPD患者はエネルギー消費量が多いため、脂質は重要なエネルギー源となります。

また脂肪エネルギー比率を上げて、呼吸商を低下させる必要があるため、脂肪エネルギー比率は下げるべきではありません。

呼吸商とは、熱量素(糖質・脂質・たんぱく質)が燃焼したときに消費した酸素量に対する発生した二酸化炭素の割合のことです。

この値は糖質1.0、たんぱく質0.8、脂質0.7で消費した酸素量に対する二酸化炭素排出量が脂質で最も低くなっていることが分かります。

COPD患者は息が吐きにくい病態にあるため、呼吸商を低下させることが望ましいと考えられます。

選択肢3. 常食を嚥下調整食に変更する。

不適です。

設問の患者は食欲も改善しており常食も問題なく摂食できていることから、嚥下調整食に変更する必要はありません。

選択肢4. 1回当たりの食事提供量を減らして、食事の回数を増やす。

適切です。

COPD患者は肺の膨張による胃の圧迫で1回あたりの摂食量が少ないと考えられます。

また、この患者は、摂取エネルギー量も目標の半分にとどまっています。

少量ずつ頻繁に食事をすることで、胃の膨張による息苦しさを回避することが可能になります。

さらに摂食量・摂取エネルギー量を増加させることができるため、望ましいと考えられます。

まとめ

COPD患者は「食事量が少なく、消費エネルギーが多い」ことがポイントです。

その改善のために、体内での反応も考慮しながらどのような食事・栄養管理が必要かを検討する必要があります。

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