管理栄養士の過去問
第38回
午後の部 問88

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

第38回 管理栄養士国家試験 午後の部 問88 (訂正依頼・報告はこちら)

K病院に勤務する管理栄養士である。患者は、72歳、男性。独居。
1か月前から労作時の呼吸苦が出現した。1週間前から呼吸苦の増強とともに、食欲不振、下痢、下肢の浮腫が加わり、弁膜症による慢性心不全の急性増悪と診断され緊急入院となった。
身長160cm、体重50kg、BMI 19.5kg/m2。発熱なし。
空腹時の血液検査値は、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)840pg/mL(基準値18.4pg/mL未満)、LDLコレステロール98mg/dL、アルブミン2.8g/dL。eGFR68mL/分/1.73m2、酸素飽和度93%。

この患者の消化器症状(下痢)の原因として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
  • 感染性腸炎
  • たんぱく漏出性胃腸症
  • バクテリアルトランスロケーション
  • 過敏性腸症候群

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (2件)

01

心不全とは、心臓の機能障害により血液循環が生体の要求に十分に応えられず、種々の循環症状を呈する状態です。

また本問の患者は下肢浮腫が認められることから右心不全の兆候があると言えます。

心不全にではどのような病態になるのか確認しながら消化器症状の原因と併せて考えてみましょう。

選択肢1. 感染性腸炎

不適です。

感染性腸炎とはウイルスや細菌、寄生虫などが原因で引き起こされます。

本問では病原体感染がうかがえるものは無く、また心不全から病原体の感染は考えにくいため不適といえます。

選択肢2. たんぱく漏出性胃腸症

正しいです。

たんぱく質漏出性胃腸症とは、血清たんぱく質が胃腸管腔内に漏出し、低タンパク質血症を主徴とする症候群です。

右心不全では全身を流れる血液が正常に心臓に運ばれなくなり、全身にたまった状態(静脈圧亢進)になります。このようになると静脈側への体液の流出量が減少し、血漿タンパク質などの血漿成分が血管外へ(胃腸管腔内など)漏出するため組織間液が増加して浮腫が発生、胃腸症などを引き起こします。

選択肢3. バクテリアルトランスロケーション

不適です。

バクテリアルトランスロケーションとは、腸管を使用しない状態が続くと腸管のバリア機能が低下し、腸管内の細菌や毒素が血中に侵入することで、多臓器不全などを引き起こします。

本患者は長期的に腸管を使用していないわけではないため、考えにくいです。

選択肢4. 過敏性腸症候群

不適です。

過敏性腸症候群とは、器質的疾患が認められていないにもかかわらず腸管機能の異常により、便通異常や腹部膨満感などの症状を呈する症候群です。

ストレスが原因になることが多く、本問の患者では考えにくいです。

参考になった数2

02

下痢の原因として、暴飲暴食、ストレス、細菌やウイルス、腸の水分吸収能の低下、消化器の疾患等があります。

選択肢1. 感染性腸炎

適していません。

 

感染性腸炎は、ウイルスや細菌に感染したことが原因で消化器症状を突然起こす疾患です。

 

選択肢2. たんぱく漏出性胃腸症

適切です。

 

たんぱく質漏出性胃腸炎は血漿たんぱくが胃腸管壁を通過して管腔内に漏出することによって低たんぱく血症を起こす疾患です。

食欲不振、下肢の浮腫があり、アルブミンが2.8g/dlと低値であることから下痢の原因と思われます。

選択肢3. バクテリアルトランスロケーション

適切ではありません。

 

バクテリアルトランスロケーションとは、全身性の末梢疾患や長期の絶食によって腸管を使用しなかった場合に、腸内細菌やその毒素が腸管上皮を通過して血中やリンパ組織に移行することで起こります。

選択肢4. 過敏性腸症候群

適切ではありません。

 

過敏性腸症候群は、消化器に特に異常がないにも関わらず腹痛や腹部膨満感わ伴う便通異常を起こす疾患です。

ストレスが主な原因で便秘や下痢を繰り返す慢性疾患です。

まとめ

アルブミン値が低下すると、腸管内の血液の浸透圧が低下し血管内と血管外の浸透圧バランスを取ろうとして、血液中の水が血管外へ移動するため血管外の組織に水が溜まり浮腫が起こります。

参考になった数1