管理栄養士の過去問
第38回
午後の部 問97

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問題

第38回 管理栄養士国家試験 午後の部 問97 (訂正依頼・報告はこちら)

K社健康保険組合の管理栄養士である。
K社では男性の高血圧症の者の割合が高い。その原因の一つに食塩の過剰摂取が考えられた。そこで、男性社員の食塩摂取量の減少を目的として、利用率の高い社員食堂において、減塩メニューの充実による食環境整備と減塩教育を行うことになった。7~10月の4か月間を実施期間とし、実施前後に食塩摂取量を把握して評価することとした。A事業所(男性200人)を介入群(食環境整備および減塩教育)、同じ地域で、年齢構成、就業状況および規模が近似したB事業所(男性180人)を比較群(減塩教育のみ)とした。

取組実施前後の食塩摂取量の変化量について、A事業所、B事業所とも正規分布であることを確認した上で、結果を示した(表)。統計学的な有意水準は両側5%とする。取組の効果の評価として、最も適当なのはどれか。1つ選べ。
問題文の画像
  • 両事業所とも、摂取量に有意な変化はみられなかった。
  • 両事業所とも、摂取量は有意に減少した。
  • A事業所は、摂取量が有意に減少した。
  • B事業所は、摂取量が有意に減少した。
  • 両事業所とも、変化を判断できなかった。

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この過去問の解説 (2件)

01

統計学的な問題です。

この統計ではそれぞれの事業所に対して取り組み実施前と後の食塩摂取量を比較し、それぞれの集団ごとの変化の傾向を検討しています。

 

初めに変化量の平均はどちらの集団も数値がマイナスであり、対象集団の食塩摂取量は平均的に見て減少傾向にあることが分かります。

しかし平均値というのは、大幅に減少した一人とあまり変化していない複数人でもマイナスの数値を示すことがあります。そこで、変化量平均値の95%信頼区間を検討します。

 

変化量のデータが正規分布(平均値周辺にデータが集積し、平均値を中心に左右対称)のとき95%の信頼区間というのは、その集団から任意の1データを選び出した時に95%の確率で当てはまる区間のことを指します。

つまり、A事業所のある一人の塩分摂取量変化量のデータを一つ選び出した時そのデータは95%の確率で、-0.98∼-0.10gの中に当てはまるということを指しています。

 

有意水準5%とは、データの95%信頼区間の外側5%(両端からそれぞれ2.5%ずつ)は、5%の確率でしか現れないデータ数値で、偶然起こったものではないと判断することです。この偶然ではない差つまり明らかな差があることを有意差あり、と表現します。

 

ここまで踏まえてこの統計を分析しましょう。

変化量を検討するとき、変化量0gというのが変化なしの状態です。

A事業所の95%信頼区間は-0.98~-0.10で、0gというのはこの信頼区間の外側であり、偶然ではなく明らかに差があるとみなすことができます。そのためA事業所では有意に変化した、と評価することができます。

B事業所の95%信頼区間は-0.91∼0.21で0gという値がこの範囲の中に存在します。そのため摂取量が変化しない人も95%の確率でB事業所のデータ分布に存在する、ということができます。そのため、B事業所では有意な減少はなかったとみなすことになります。

選択肢1. 両事業所とも、摂取量に有意な変化はみられなかった。

不適です。

冒頭の解説から、A事業所では有意な変化を認めることができました。

選択肢2. 両事業所とも、摂取量は有意に減少した。

不適です。

冒頭の解説から、B事業所では摂取量の変化に有意な差は認められませんでした。

選択肢3. A事業所は、摂取量が有意に減少した。

正しいです。

冒頭の解説から、A事業所では摂取量が有意に減少したことが読み取れます。

選択肢4. B事業所は、摂取量が有意に減少した。

不適です。

冒頭の解説から、B事業所では変化量に有意な差は認められませんでした。

選択肢5. 両事業所とも、変化を判断できなかった。

不適です。

両事業所とも95%信頼区間から変化を検討することができました。

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02

95%信頼区間は「95%の確率で真の結果を含むと考えられる範囲」を示します。

選択肢1. 両事業所とも、摂取量に有意な変化はみられなかった。

不適です。

 

A事業所は、95%信頼区間に変化量0が含まれないため、優位な変化があったと言えます。

選択肢2. 両事業所とも、摂取量は有意に減少した。

不適です。

 

B事業所は、95%信頼区間に変化量0が含まれるため優位な変化は見られなかったと言えます。

選択肢3. A事業所は、摂取量が有意に減少した。

適切です。

 

A事業所は、95%信頼区間に0が含まれず、マイナスを示しているため優位に減少したと言えます。

選択肢4. B事業所は、摂取量が有意に減少した。

不適です。

 

B事業所は、95%信頼区間に0が含まれるため優位な変化は見られなかったと言えます。

選択肢5. 両事業所とも、変化を判断できなかった。

不適です。

 

変化量の平均値の95%信頼区間が示されているため変化があるかないかの判断ができます。

まとめ

95%信頼区間に0を含むということは、変化量が0である可能性を否定できず、変化していない可能性があるということになります。

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