管理栄養士の過去問
第38回
午後の部 問99

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問題

第38回 管理栄養士国家試験 午後の部 問99 (訂正依頼・報告はこちら)

K大学に勤務する、管理栄養士の資格を持つ教員である。K大学では、不定愁訴を有する学生が多く、学生の朝食摂取状況を把握することになった。学生1,000人(家族と同居の学生500人と一人暮らしの学生500人)に対して自記式質問紙調査を実施した。調査の結果、1,000人中400人が朝食を欠食していることが明らかとなった。表は、居住形態別に、朝食欠食の理由をまとめたものである。

調査結果を踏まえて、より多くの学生が朝食を摂取するための方法を検討した。朝食摂取の自己効力感の向上を目的とした栄養教育の対象者と、その内容に関する記述である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
問題文の画像
  • 家族と同居の学生に対し、教員が朝食を欠食することによる健康への悪影響について話をする。
  • 家族と同居の学生に対し、朝食を食べてダイエットに成功した学生が、その体験談を紹介する。
  • 一人暮らしの学生に対し、かつて朝食を欠食していた学生が、朝食を毎日食べられるようになった工夫を話す。
  • 一人暮らしの学生に対し、朝食を毎日食べることで以前よりも健康的になった自分を想像してもらう。

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この過去問の解説 (2件)

01

自己効力感とは、「自分がやろうとしていることを、どの程度実行できるかという自信」のことを言います。

栄養教育を必要としている対象者を検討しながら、自己効力感の向上の2点に着目して選択肢を見ていきましょう。

選択肢1. 家族と同居の学生に対し、教員が朝食を欠食することによる健康への悪影響について話をする。

不適です。

同居学生で朝食摂取の必要性を感じていない学生は50人です。

これは介入して栄養指導をするには少なく、また、朝食欠食の悪影響を話すことは事故効力感の向上につながりません。

選択肢2. 家族と同居の学生に対し、朝食を食べてダイエットに成功した学生が、その体験談を紹介する。

不適です。

同居している学生でダイエットのために朝食を欠食しているのは68人で、介入栄養指導をするには人数が少ないため、最も適した介入指導ではありません。

しかしダイエットのために欠食している学生に対し、朝食を食べて成功した学生の体験談は、自己効力感の向上に適した栄養指導の方法です。

選択肢3. 一人暮らしの学生に対し、かつて朝食を欠食していた学生が、朝食を毎日食べられるようになった工夫を話す。

正しいです。

一人暮らしで準備が面倒で欠食している学生は231人と最も多いです。

さらに、欠食していた学生が毎日食べられるようになった工夫を話すことは自己効力感の向上につながります。

そのため、最も適した介入栄養指導の方法として適しています。

選択肢4. 一人暮らしの学生に対し、朝食を毎日食べることで以前よりも健康的になった自分を想像してもらう。

不適です。

一人暮らしで食べる必要性を感じていない学生は149人です。

以前よりも健康的になった自分を想像することは、自己効力感の向上にはつながっていません。

 

これは計画的行動理論における、行動に影響する要素としての「行動への態度」(行動に対するポジティブな信念と得られる結果に高い価値を置くこと)に繋がる介入といえます。

まとめ

今回の設問で出てきた各理論を整理しておきましょう。

 

社会的認知理論

:人の行動は個人態度や体験だけでなく、社会環境や周囲の人たちから影響を受けることによっても変容するという理論。

 個人的要因、環境要因、行動要因が相互に影響を与え合って行動を起こしていく(相互決定主義)

個人的要因自己効力感、結果期待

環境要因→自己を取り巻く環境や他人の存在

行動要因→行動に移す能力

 

計画的行動理論

:近い将来に行動を実行しようと考えると、人は実行しやすくなるという理論

 行動意図に影響を与える要素には行動への態度」「主観的規範」「行動のコントロール感」の3つがある。

 

参考になった数1

02

まず、「より多くの学生が朝食を摂取するための方法」なので、居住形態と朝食欠食理由の該当者の人数がポイントです。

それを踏まえた上で、自己効力感の向上を目的とした栄養教育であるかを判断しましょう。

選択肢1. 家族と同居の学生に対し、教員が朝食を欠食することによる健康への悪影響について話をする。

不適です。

 

該当する学生は、家族と同居で朝食を食べる必要性を感じていない50人と少なく、朝食を欠食することによる健康への悪影響を知ることは自己効力感の向上にはなりません。

選択肢2. 家族と同居の学生に対し、朝食を食べてダイエットに成功した学生が、その体験談を紹介する。

不適です。

 

該当する学生は、家族と同居でダイエットを目的としている68人と少ないです。

しかし、代理的経験は自己効力感の向上につながる方法です。

選択肢3. 一人暮らしの学生に対し、かつて朝食を欠食していた学生が、朝食を毎日食べられるようになった工夫を話す。

適切です。

 

該当する学生は、一人暮らしで準備するのが面倒な231人と多く、代理的経験は自己効力感の向上につながります。

 

選択肢4. 一人暮らしの学生に対し、朝食を毎日食べることで以前よりも健康的になった自分を想像してもらう。

不適です。

 

該当する学生は、一人暮らしで食欲がない162人と多いのですが、健康的になった自分を想像することは自己効力感を高める方法ではなく計画的行動理論における行動への態度を高める方法です。

まとめ

自己効力感(セルフエフィカシー)とは、「ある課題・行動を自分がどの程度達成・遂行できると思っているか」という自信のことで、社会的認知理論や行動変容段階モデル(トランスセオレティカルモデル)の構成要素にもなっています。

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