貸金業務取扱主任者の過去問
令和3年度(2021年)
貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること 問28

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

貸金業務取扱主任者資格試験 令和3年度(2021年) 貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること 問28 (訂正依頼・報告はこちら)

意思表示に関する次の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを1つだけ選びなさい。
  • Aは、実際には購入するつもりがないのに、Bとの間で、Bが所有する甲建物を購入する旨の売買契約を締結した。この場合において、Aには甲建物を購入する意思がないことをBが知っていたときは、Aは、Bに対し、当該売買契約が心裡留保により無効であることを主張することができない。
  • Aは、実際には甲建物をBに売却するつもりがないのに、Bと通謀して、Bに甲建物を売却する旨の虚偽の売買契約を締結し、AからBへの甲建物の所有権移転登記を経た。その後、Bがこの事情を知らない第三者Cに甲建物を売却した場合、Aは、Cに対し、AとBとの間の売買契約が虚偽表示により無効であることを対抗することができない。
  • Aは、Bが所有する甲建物の近隣にショッピングモールが新設される計画を知り、Bとの間で、甲建物を購入する旨の売買契約を締結した。しかし、当該ショッピングモール新設の計画は、当該売買契約の締結前に既に中止となっていたが、Aはそれを知らなかった。この場合、Aは、当該ショッピングモール新設が甲建物の売買契約締結の基礎とされていることをBに表示していたか否かにかかわらず、錯誤を理由として、当該売買契約を取り消すことができる。
  • Aは、Bの強迫により、Bとの間で、自己が所有する甲建物をBに売却する旨の売買契約を締結した後、Bは、強迫の事実を知らないCに甲建物を売却した。その後、Aが強迫による意思表示を理由としてAとBとの間の売買契約を取り消した場合、Aは、Cに対し、その取消しを対抗することができない。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (1件)

01

意思表示の問題は、頻繁に出題されます。

専門用語を正しく理解しているかも、重要なポイントになるため、理解できていなければ復習しましょう。

■心裡留保の効果

心裡留保とは、表意者が真意でないことを知りながらする意思表示を指します。

イメージとしては「この家タダであげる!」と冗談を言うことと考えてください。

心裡留保は、原則として有効ですが、相手方が悪意又は有過失であるときは無効とされます。

■虚偽表示の効果

虚偽表示とは、相手方と通じて虚偽の意思表示をすることです。

一方が「うちの土地がこのままだと競売されるかもしれないから、名義変更するのを手伝って」と頼み、もう一方が「了解!」と口裏を合わせるのをイメージしましょう。

そして、民法では「相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とする」と定められています。

また「虚偽表示による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」と定められているため、注意が必要です。

■錯誤の効果

錯誤とは、簡単にいうと「思い違い」のことです。

民法上では、さらに以下の2つに分けられます。

・表示の錯誤:意思を決定してから表示行為に至るまでの思い違い(例:1,000円を1,000万円と表示した)

・動機の錯誤:法律行為の基礎とした事情についての思い違い(例:近くに駅が新設されると聞いて家を買ったけどデマだった)

民法上は、これらの錯誤のいずれかに該当した際は、意思表示を取消できるとされています。

ただし、同期の錯誤については法律行為の基礎とした事情が表示されたときに限ります。

■強迫の効果

強迫とは、「さっさと金貸さないとぶっとばすぞ!」など他人に脅されることです。

民法では、意思表示をした者を保護するため、強迫による意思表示であれば取り消すことができるとしました。

なお、詐欺の場合と違い、相手方を保護する必要がないため、善意・無過失の第三者であっても対抗できます。

選択肢1. Aは、実際には購入するつもりがないのに、Bとの間で、Bが所有する甲建物を購入する旨の売買契約を締結した。この場合において、Aには甲建物を購入する意思がないことをBが知っていたときは、Aは、Bに対し、当該売買契約が心裡留保により無効であることを主張することができない。

(×)

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする(民法93条1項)。

→選択肢と矛盾するため誤り。

選択肢2. Aは、実際には甲建物をBに売却するつもりがないのに、Bと通謀して、Bに甲建物を売却する旨の虚偽の売買契約を締結し、AからBへの甲建物の所有権移転登記を経た。その後、Bがこの事情を知らない第三者Cに甲建物を売却した場合、Aは、Cに対し、AとBとの間の売買契約が虚偽表示により無効であることを対抗することができない。

(〇)

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする(民法94条1項)。この無効は、善意の第三者に対抗することができない(民法94条2項)。

→選択肢と矛盾する部分はない。

選択肢3. Aは、Bが所有する甲建物の近隣にショッピングモールが新設される計画を知り、Bとの間で、甲建物を購入する旨の売買契約を締結した。しかし、当該ショッピングモール新設の計画は、当該売買契約の締結前に既に中止となっていたが、Aはそれを知らなかった。この場合、Aは、当該ショッピングモール新設が甲建物の売買契約締結の基礎とされていることをBに表示していたか否かにかかわらず、錯誤を理由として、当該売買契約を取り消すことができる。

(×)

表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤を理由とした取消しは、 その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる(民法95条2項)。

→選択肢と矛盾するため誤り。

選択肢4. Aは、Bの強迫により、Bとの間で、自己が所有する甲建物をBに売却する旨の売買契約を締結した後、Bは、強迫の事実を知らないCに甲建物を売却した。その後、Aが強迫による意思表示を理由としてAとBとの間の売買契約を取り消した場合、Aは、Cに対し、その取消しを対抗することができない。

(×)

強迫による意思表示は、取り消すことができる(民法96条1項)。強迫は詐欺と異なり善意の第三者にも対抗できる。

→選択肢と矛盾するため誤り。

参考になった数21