貸金業務取扱主任者の過去問
令和3年度(2021年)
貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること 問32

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問題

貸金業務取扱主任者資格試験 令和3年度(2021年) 貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること 問32 (訂正依頼・報告はこちら)

AのBに対する金銭債権を「甲債権」とし、BのAに対する金銭債権を「乙債権」とする。この場合に関する次の記述のうち、民法上、その内容が適切なものを1つだけ選びなさい。
  • 甲債権の弁済期が11月1日であり、乙債権の弁済期が同年10月15日である場合、Aは、同年10月15日の時点で、甲債権と乙債権とを相殺することができる。
  • Aは、甲債権と乙債権とを相殺するにあたり、相殺の意思表示に条件又は期限を付することができる。
  • 甲債権と乙債権とが相殺に適するようになった後に、甲債権が時効によって消滅した場合であっても、Aは、甲債権と乙債権とを相殺することができる。
  • 甲債権が他人から譲り受けた債権である場合において、その譲受けの時期が、乙債権に係る債権差押命令がAに送達された後であっても、甲債権が当該差押え前の原因に基づき発生したものであるときは、Aは、甲債権と乙債権との相殺をもって乙債権の差押債権者に対抗することができる。

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この過去問の解説 (1件)

01

相殺とは、簡単にいうと「差し引きをして帳消しにする」ことです。

また、期限の利益(返済期日が到来するまでは返済しなくても良い)があるため、双方の債務が弁済期にあるときでないと相殺は許されません(民法505条1項)。

つまり、どちらか一方の債権(例:借入金)の返済期日が到来していない状態では、相殺はできないと考えましょう。

これらの基本知識を踏まえ、それぞれの選択肢について検討します。

選択肢1. 甲債権の弁済期が11月1日であり、乙債権の弁済期が同年10月15日である場合、Aは、同年10月15日の時点で、甲債権と乙債権とを相殺することができる。

(×)

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない(民法505条1項)。甲債権の期日が未到来の状況で乙債権(Aから見たら債務)と相殺はできない。

→本問の場合、双方の債権の弁済期が異なるため、遅い方の弁済期が到来しないと相殺はできない(つまり、11月1日にならないと相殺の話すらできない)。

選択肢と矛盾するため、誤り。

選択肢2. Aは、甲債権と乙債権とを相殺するにあたり、相殺の意思表示に条件又は期限を付することができる。

(×)

相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない(民法506条1項)。

→条件を付することは相手方の地位を不安定にし、期限を付することは相殺の遡及効により無意味となるため無意味である。

選択肢と矛盾するため、誤り。

選択肢3. 甲債権と乙債権とが相殺に適するようになった後に、甲債権が時効によって消滅した場合であっても、Aは、甲債権と乙債権とを相殺することができる。

(〇)

時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる(民法508条)。

→選択肢と矛盾する点はないため、正しい。

選択肢4. 甲債権が他人から譲り受けた債権である場合において、その譲受けの時期が、乙債権に係る債権差押命令がAに送達された後であっても、甲債権が当該差押え前の原因に基づき発生したものであるときは、Aは、甲債権と乙債権との相殺をもって乙債権の差押債権者に対抗することができる。

(×)

差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない(民法511条2項)。

→選択肢と矛盾するため、誤り。

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