マンション管理士の過去問
平成26年度(2014年)
問14

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問題

マンション管理士試験 平成26年度(2014年) 問14 (訂正依頼・報告はこちら)

甲マンションの附属施設である立体駐車場において、A運転の自動車が、Aの運転操作ミスによって駐車場設備を破損したため、甲マンションの管理者Bは駐車場設備の修理費につき損害賠償請求をしようとしている。この場合における次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
  • 事故時にAが18歳の高校生であり、友人の自動車で無免許運転をしていた場合、Bは、Aの両親であるC及びDに損害賠償請求をすることができるが、Aに損害賠償請求をすることはできない。
  • 事故時にAが勤務先であるE社所有の自動車を私用で運転していた場合、Bは、Aに損害賠償請求をすることができるが、E社に損害賠償請求をすることはできない。
  • BがAに対して損害賠償請求をするに当たり、訴訟の追行を弁護士に委任した場合には、相当な修理費に加え、相当な弁護士費用を併せて請求することができる。
  • BがAに対して相当な修理費について損害賠償請求をする場合、当該債務は損害賠償を請求した時から履行遅滞になり、これに対する損害賠償を請求した日の翌日から年5分の割合による遅延損害金を併せて請求することができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

正答は 3 です。

まず、不法行為の成立要件をおさらいします。
①責任能力のある者が、②故意または過失によって、③他人の権利や法律上保護される利益を侵害し、④その行為によって損害が発生したという、①~④の4つの要件を満たしたときに成立します。
この場合、加害者は不法行為責任を負わなければなりません。

1.18歳の高校生であるAに、不法行為の成立要件①の責任能力があるかですが、責任能力があるかどうかは、12歳程度の知能が備わっているかが目安となりますので、Aは責任能力があります。したがって、不法行為の成立要件を満たしています。

この場合、加害者Aは不法行為責任を負わなければならず、Aに対し損害賠償の請求ができます。
よって、この設問は誤りです。

2.E社の使用者責任が成立要件を満たしているかを確認します。
使用者責任の成立要件は、①使用関係があること、②被用者が事業の執行について第三者に損害を加えたこと、③被用者が不法行為の一般的な成立要件を満たすこと、の3つです。

会社所有の自動車を私用で運転していた場合であっても、客観的に観察したとき、職務行為の範囲内に属するものと認められる場合には、「事業の執行」に当たると解されています。したがって、使用者責任の成立要件を満たしています。

E社は使用者責任を負いますので、Bは、E社に対し、損害賠償を請求することができます。
よって、この設問は誤りです。

3.賠償されるべき損害は、通常生ずべき損害と考えられています。訴訟に係る弁護士費用は、通常生ずべき損害に該当します。したがって、弁護士費用も合わせて請求することができます。

4.不法行為に基づく損害賠償債務は、「不法行為のときから」履行遅滞となり、当然に遅延損害金(年5分の割合と定められていましたが、民法改正により2020年4月1日以降の交通事故については年3分の割合に引き下げられました)を生ずるものと考えられています。また、当該損害に対する遅延損害金も請求することができます。

損害賠償を請求したときから履行遅滞になるのではありません。
よって、この設問は誤りです。

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02

正解(正しいもの)は3です。

1 誤り。
民法第712条によれば、未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない、とされています。この責任能力は12歳程度とされているため、18歳のAに対しては損害賠償請求を行うことができます。

2 誤り
民法第715条によれば、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」とあります。今回、Aは私用で自動車を運転していたとありますが、事業がどうかについては、被用者の行為の外形を捉えて判断されます。(外形標準説)。また、ただし書き(相当の注意をしていた場合は使用者責任を問わない)については、この選択肢からは判断できず、E社に損害賠償請求できる可能性もあり、誤りとなります。

3 正しい。
最高裁昭和44年2月27日の判例に、「不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴を提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものにかぎり、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。」とありますので、民法第709条(不法行為による損害賠償)にしたがい、弁護士費用も請求できます。

4 誤り。
不法行為による損害賠償請求権は、損害発生の時から直ちに履行遅滞となりますので、遅延損害金はそこから起算します。損害賠償の請求の日からではありません。

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03

正答【3】

1 X誤っている。
  未成年でも責任はある。また両親も責任を追及
 されることがある。 
  まず、民法第709条において、故意又は過失
 によって他人の権利又は法律上保護される利益を
 侵害した者は、これによって生じた損害を賠償す
 る責任を負います。 これが、基本です。
  では、未成年者が過失により侵した行為は、民
 法第712条により、自己の行為の責任を弁識す
 るに足りる知能を備えていなかったときは、その
 行為について賠償の責任を負いませんが、そこ
 で、18歳の高校生の立場です。
  自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備
 えていなかったときの判断は、各個人によって異
 なりますが、民法では、原則、未成年者であって
 も、12歳から13歳程度になれば責任能力があ
 ると判定されています。
  これにより、まず、運転をしていたAは未成年
 であっても損害賠償の責任を負います。
  では、次にAの両親であるC及びDの責任追及
 ですが、子供であるAが責任を負うなら、両親は
 免責されるかというと、事案によっては、親にも
 不法行為責任を認めた判例があり、これによれ
 ば、未成年者Aにも、損害賠償責任があり、両親
 にも事案によっては、損害賠償責任を請求できる
 場合がありますから、被害者である甲マンション
 は、共に請求できます。
  そして、次は、甲マンションの第三者である管
 理者Bが、損害賠償責任を請求できるかをきいて
 います。
  すると、これは、管理者の権限として区分所有
 法第26条第2項により、管理者は区分所有者を
 代理し、共用部分である立体駐車場に生じた損害
 賠償金の請求はできます。
  選択肢1は、全体として、誤りだと判断できま
 す。

2 X誤っている。
  私用での事故であっても、会社も損害賠償責任
 を負う。     
  社有車を私用で使用した時の事故です。
  実際の事故を起こしたAが損害賠償責任を負う
 のは、民法第709条に該当しますから、Aに
 は、損害賠償請求ができます。
  では、次に、勤務先のE社の責任ですが、これ
 は、民法第715条により、 会社所有の自動車
 で私用中に起こした事故の責任を会社にも追求で
 きますから、誤りと判断できます。
  なお、甲マンションの管理者Bが請求できるの
 は、選択肢1と同様です。

3 〇正しい。 
  相当と認められる額の範囲なら、弁護士費用も
 含めていい。  
  訴訟費用の請求は、民法第722条及び417
 条により、不法行為による損害賠償の額は、原
 則:金銭となります。
  そこで、この損害賠償の額に弁護士費用も含め
 ていいかどうかですが、判最高裁:昭和58年9
 月6日の判決、
 「不法行為の被害者が自己の権利擁護のため訴
 えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁
 護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事
 案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事
 情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のもの
 に限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害で
 あり、被害者が加害者に対しその賠償を求めるこ
 とができると解すべきことは、当裁判所の
 判例(最高裁昭和四一年(オ)第二八〇号同四四年二月
 二七日第一小法廷判決・民集二三巻二号四四一
 頁)とするところである。」 とあり、正しいと
 判断できます。

4 X誤っている。 
  不法行為による賠償債務は被害者の請求を待た
 ずに、不法行為が発生した時から履行遅滞とな
 り、遅延損害金が生じる。
  不法行為での賠償請求権については、損害の発
 生した時(不法行為の発生時)から、履行遅滞に
 なりますから、設問の損害賠償を請求した時から
 履行遅滞になるは、誤りです。 
  また、損害賠償請求は、事故が発生したときか
 ら、請求をしなくても、履行遅滞となり、遅延損
 害金も、 併せて請求できますから、誤りと判断で
 きます。

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