精神保健福祉士の過去問
第17回(平成26年度)
精神保健福祉の理論と相談援助の展開 問57

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問題

第17回(平成26年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉の理論と相談援助の展開 問57 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。

〔事 例〕
Mさん(73歳、女性)のことでA民生委員が、保健所に勤務しているB精神保健福祉相談員のもとに相談に訪れた。Mさんは夫と共に商店街の一角で米屋を営んでいたが、2年前に夫を亡くし、米屋を廃業した。その後、一人暮らしをしていたが、約半年前から、物忘れがみられ始めた。連絡を受けた長女が同行し専門医を受診したところ、軽度のアルツハイマー型認知症と診断された。長女は義父の介護があり同居できないため、Mさんは単身生活を続けていたが、一週間前、外出したまま家に帰れなくなり警察に保護された。長年、Mさん夫婦と一緒に商店街活動をしてきた住民たちは、とても心配しているとのことであった。さっそくB精神保健福祉相談員は自宅を訪問した。Mさんは、「生活の中で困っていることは特にないし、まだ誰かの世話にならなくても大丈夫です」と話した。また、「時々、泥棒に入られて物が盗られるんです。
でも、いつもAさんに一緒に探してもらうと見つかりますよ」とも言う。その話を聞いたB精神保健福祉相談員は、定期的に訪問をすることとした。

訪問終了後、A民生委員や、同じ商店街に住むMさんを心配する住民のところへ立ち寄り、話を聞いた。

その後Mさんは、再度、外出したまま行方不明になった。再び警察に保護されたこともあって、Mさんは長女に伴われて保健所を訪れた。そこで、B精神保健福祉相談員は、Mさん、長女、A民生委員、心配している住民たちと話合いの場をもった。長女は施設入所を希望したが、Mさんは自宅での生活を続けたいと強く希望した。住民らは、火の不始末による火災が心配だと言った。B精神保健福祉相談員はMさんへの個別的な支援を展開することと併せて、A民生委員をはじめとする住民たちによる支えや、不足している地域資源を新たに創り出すなど、Mさんを支える生活環境の整備も展開することを提案した。


次のうち、B精神保健福祉相談員が提案した支援の方法として、正しいものを1つ選びなさい。
  • コミュニティソーシャルワーク
  • コミュニティディべロップメント
  • コミュニティビジネス
  • コミュニティオーガニゼーション
  • コミュニティベースドリハビリテーション

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は1です。

1.コミュニティソーシャルワークとは、地域において問題を抱える人の個別支援と、生活環境の整備や地域資源の開発といった地域支援を、統合的に行うことをいいます。事例では、Mさんへの個別的な支援を展開しつつ、生活環境の整備も展開することを提案しているため、正答といえます。

2.コミュニティディベロップメントとは、地域の住民が地域の問題を自ら解決できるように、地域住民の参加を重視して地域社会を開発することをいいます。一般的にコミュニティディベロップメントには個別支援の概念は含まれていないため、正答とはいえません。

3.コミュニティビジネスとは、ビジネス手法を用いて地域の課題解決や地域貢献、地域活性化を行おうとする事業を指します。この事例ではビジネス手法を用いた取り組みは見られないため正答とはいえません。

4.コミュニティオーガニゼーションとは、地域における住民参加の組織化活動をいい、日本では社会福祉協議会が代表的な例といえます。この事例では住民による組織化活動は見受けられないため正答とはいえません。

5.WHO、ユネスコ、ILOの定義によれば、コミュニティベースドリハビリテーションとは「障害者自身、家族と地域社会、そして適切な保険、教育、職業及び社会サービスの連携協力を通して遂行される」リハビリテーションといえます。この事例はリハビリテーションに関するものではないため正答とはいえません。

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02

◯1 . コミュニティソーシャルワーク:地域での生活の継続を希望するMさんを中心に、地域住民ができること、さらに必要な地域資源を作りだすことなど、いい感じでソーシャルワークの実践をしています。
✕2 . コミュニティディべロップメント:地域共同社会開発と訳されます。 今回は、地域の組織的な開発ではなく、個人の支援の話なので、別物です。
✕3 . コミュニティビジネス :地域の人材やノウハウ、施設、資金の活用により、新たな創業や雇用、生きがいなどを生み出し、地域コミュニティーの活性化を目指すものです。現在のケースは、ビジネスの話はしていないので違います。
✕4 . コミュニティオーガニゼーション:地域組織化と訳されます。住民が協働する地域社会づくりですが、今回のケースは個人支援が中心なので、別物です。
✕5 . コミュニティベースドリハビリテーション:1981年WHOの定義では、「障碍者自身、その家族、地域の人々の力を結集し、適切な保険、医療、教育、職業、社会サービスが提供されることによって実施されるもの」とされています。障碍者がサービスの受け手だけではなく、サービスを創り出し、変革していくことに意義があるというので、今回はそこまでの大きなことではないです。

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03

 B精神保健福祉士はMさんへの個別的な支援を展開することと併せて、A民生委員や住民たちによる支えや、不足している地域資源を新たに創り出すなど、Mさんを支える生活環境の整備も展開することを提案したとあります。これは、コミュニティソーシャルワークの支援方法です。

1. ○
 コミュニティソーシャルワークとは、個別支援(クライエントとその家族)と地域支援の両方を視野に入れ、総合的な支援を行うことをいいます。個別支援とは、地域で生活上の課題を抱える個人や家族に対する支援のことです。また地域支援とは、それらの人々が暮らす生活圏環境整備や住人のネットワーク化を図ることです。

2.×
 コミュニティディベロップメントとは、地域社会開発のことです。国連の定義では、国民生活の中に統合して十分に国家の発展に貢献するよう、地域社会住民の努力と政府の努力を統合しようとする過程であるとしています。

3.×
 コミュニティビジネスとは、住民が主体となって、地域の生活課題を解決するために地域の資源を活用し、ビジネスの手法を用いて、公の場や地域経済の活性化を図ることをいいます。ここでは、ビジネスの手法を用いていません。

4.×
 コミュニティオーガニゼーションとは、間接援助技術の一つで、地域援助技術とも呼ばれます。地域共通の問題として地域住民自身が地域ぐるみでその問題を解決することができるように援助する方法のことです。地域で問題に直面している人がいて、その問題が個人にとどまらず地域全体の問題と考えられる場合に行われます。

5.×
 コミュニティベースドリハビリテーションとは、地域社会開発における、全障害者のリハビリテーション、機会の均等化、社会統合のための戦略の一つです。しかし、Kさんは現段階でリハビリが必要であるとは見受けられません。

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