精神保健福祉士の過去問
第18回(平成27年度)
精神保健福祉の理論と相談援助の展開 問49

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

第18回(平成27年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉の理論と相談援助の展開 問49 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。

〔事 例〕
Mさん(67歳、男性)は大学を卒業し会社員として勤めていたが、35歳で統合失調症を発症したため退職し、障害厚生年金を受給した。56歳からU精神科病院に6回目の入院をしていた。両親は既に他界しており、きょうだいがいないMさんには身寄りがない。Mさんは時に幻聴と被害妄想が再燃して頭を抱えて臥床することもあるが、同室の患者と談笑する一面もあった。長期間の入院で生活能力や身体的機能の低下がみられ、身の回りの整理や着替えなどに一部介助が必要な状態である。U精神科病院のA精神保健福祉士は、退院に消極的なMさんを何とか退院に導きたいと、2年前からMさんに外出グループのリーダーをお願いしていた。また、長期入院経験者を病院に招いて、退院後に利用できるサービスや、自分なりの生活が送れる楽しさを語ってもらうなど、退院後のイメージが持てるように、様々な働きかけを続けた。(※1)

その結果、少しずつMさんの気持ちが退院に向くようになってきた。A精神保健福祉士は院内のカンファレンスでMさんの変化を伝え、退院に向けたケア会議を開いた。会議にはMさんも含め、地域包括支援センターの社会福祉士と、指定一般相談支援事業所のB相談支援専門員に参加してもらった。会議の結果、Mさんの退院に向けて取り組むことを全員で共有した。社会福祉士からは、Mさんの退院後の支援については介護保険も利用できるため、要介護認定申請と介護保険サービスに関する説明があった。(※2)

B相談支援専門員がMさんに地域移行・地域定着支援に関して丁寧に説明したところ、Mさんは時々夜になると不安が大きくなることや、年をとってきたため家事や金銭管理に自信がないと語った。その後Mさんは要介護1の認定を受けるとともに、地域移行・地域定着支援を利用して退院した。(※3)

現在Mさんは、地域で展開している「ふれあい・いきいきサロン」に時々顔を出すなど、自分なりの生活を楽しんでいる。


(※1)次のうち、A精神保健福祉士が行ったアプローチとして、適切なものを1つ選びなさい。
  • ナラティブアプローチ
  • エンパワメントアプローチ
  • 心理社会的アプローチ
  • 問題解決アプローチ
  • 課題中心アプローチ

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

正解は2です。


1:ナラティブアプローチは、クライエントの語り(ナラティブ)を通して援助を行う方法です。支援者はクライエントと共にクライエントが自分について語るストーリーのネガティブな部分を解体し、理想的なストーリーへの転換を図ります。事例では、Mさんのナラティブへの働きかけはありませんので、誤りです。

2:エンパワメントアプローチは、クライエントが本来持っている能力が社会的な制約などにより発揮できていない状態にあると捉え、その能力を引き出そうとする支援方法です。
事例では、長期入院のために退院に消極的なMさんに外出グループのリーダーをお願いしたり、長期入院の経験者の退院後の生活を聞いてもらったりすることによって、Mさんの能力を引き出そうとしていますので、エンパワメントアプーチです。

3:心理社会的アプローチは、クライエントの心理的側面と社会的側面が相互に影響し合っていると考え、クライエントと環境の調整を行い、クライエントのパーソナリティ変容を図る支援方法です。事例では、Mさんのパーソナリティの変容を意図した働きかけはありませんので、誤りです。

4:問題解決アプローチは、クライエントが問題解決に取り組む時に、できるだけ効率よく主体的に対処できるように支援することを言います。事例において、Mさんはまだ退院に消極的で、問題解決の表明がされていませんので、誤りです。

5:課題中心アプローチは、クライエントが解決を望む問題を支援者とクライエントが協働し、具体的な課題を挙げて解決方法を探っていきます。事例ではMさんからの解決を望む問題はまだ表明されていませんので誤りです。

参考になった数31

02

正解は2です。

1.ナラティブアプローチは、クライエントの語る物語を通じて援助を行うことです。事例では、自分なりの生活が送れる楽しさを語ってもらっていますが、クライエントの物語を語っているとはいえないため、適切な回答ではありません。

2.エンパワメントアプローチは、クライエントの持っている力に着目して、その力を引き出して積極的に活用することです。事例では、外出グループのリーダーをお願いしたり、自分なりの生活が送れる楽しさを語ってもらったりすることが、エンパワメントアプローチにあたります。

3.心理社会的アプローチでは、クライエントに変化と成長を遂げる能力があることを自覚させていきます。事例では、そのような自覚を促すような働きかけは見られないため適切な回答とはいえません。

4.問題解決アプローチでは、自我心理学をもとに、動機づけ、能力、機会という枠組みを中心に構成し、クライエントと援助者の関係を通じて問題解決を行っていきます。事例では、動機づけをしたり、一緒に退院に向けて取り組んでいたりする様子は見られないため、適切な回答とはいえません。

5.課題中心アプローチでは、課題を設定し、短期的に問題解決を図っていくアプローチです。事例からMさんが退院に向けて課題解決に取り組むようすは見られないため、適切な回答とはいえません。

参考になった数10

03

 正解は2です。

1.ナラティブアプローチは、「語り」や「物語」と訳されます。クライエントが語るストーリーを、クライエントの語る物語として受け止めます。クライエントとの面接場面はありません。

2.エンパワメントアプローチは、クライエントの持っている力を引き出し、問題解決に必要なスキルを習得できるように支援することです。退院後のイメージが持てるように、様々な働きかけを続けて、Mさんに必要な知識やスキルの習得することを支援しました。

3.心理社会的アプローチは、診断主義ともよばれ、ホリスによって体系化されました。クライエントのおかれた環境や機能改善と共に、パーソナリティの変容にも焦点を当てます。事例では行われていません。

4.問題解決アプローチは、1950年にパールマンによって体系化されました。クライエントの自我機能を高め、動機づけや能力を助け、さまざまな機会を活用することで主体的に問題を解決できるように支援する方法です。クライエントのワーカビリティ(利用者がサービスを有効に活用する力)を高めることが大事です。事例では行われていません。

5.課題中心アプローチは、リードとエプスタインによって提唱されました。短期処遇が特徴で、クライエント共に課題を設定し、計画を立てていく方法です。事例では行われていません。

参考になった数9