精神保健福祉士の過去問
第23回(令和2年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問115

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問題

第23回(令和2年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問115 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
D精神保健福祉士は、処方薬への依存のためにU精神科病院の薬物依存症外来に通うEさん( 26歳、女性)が減薬を目的に入院したことを契機に担当となった。主治医から話を聞いたり電子カルテの情報を確認したりしたD精神保健福祉士は、Eさんが、幼少期の実母による過酷な虐待や、思春期における性的被害の経験を有していることを把握した。そこで、薬物問題に加え、過去の逆境体験に対する理解や、その体験が現在に及ぼす影響をも視野に入れた支援が必要であると考えた。

入院時のEさんは挑発的態度を繰り返しており、病棟スタッフとの信頼関係を築けずにいた。D精神保健福祉士は、過去の体験に基づく強い人間不信や自己否定感が根底にあることを読み取り、温かく落ち着いた関わりを続けた。その結果、Eさんは、主治医とD精神保健福祉士には心を許すようになり、「死にたい」と苦しい胸の内を打ち明けるようにもなった。

Eさんは、病棟内のプログラム参加には消極的で、ルール違反ばかり繰り返していた。スタッフに注意されると、暴言を吐いたり自殺をほのめかしたりするので、スタッフの間にはEさんに対するネガティブな感情や不全感が蓄積され、いつしか病棟チーム全体が機能不全に陥りつつあった。そこで、D精神保健福祉士はケアカンファレンスでEさんを取り上げることを提案した。その中で病状や治療方針を共有したり、スタッフがEさんとの関わりの中で受けた傷つきや恐れの気持ちを表出できるよう働きかけたりした。また、相互の役割を確認し、日々の苦労をスタッフ間でねぎらい合えるようにした。その結果、病棟チームにあった刺々しい雰囲気が薄れ、Eさんの言動も徐々に落ち着きをみせるようになった。(※ 3 )

D精神保健福祉士は、Eさんの退院後の安全な生活を重視するとともに、過去に植え付けられた無力感や自己否定感から解放されることを目標とした。そして、もう一度自分の人生に対するコントロール感を取り戻すために、ストレングスに着目した支援を大切にしたいと考えていた。


次のうち、D精神保健福祉士がケアカンファレンスを通して病棟チームに果たした機能として、正しいものを1つ選びなさい。
  • 管理的機能
  • メンテナンス機能
  • 教育的機能
  • タスク機能
  • 支持的機能

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は、 2 です。

 事例の状況では、支援を行うなかで病棟チームの立て直しが必要になります。そのため選択肢のなかでは、チームに関する機能として、選択肢 2.「メンテナンス機能」と、4.「タスク機能」が挙げられます。

・「メンテナンス機能」とは、目標達成するために効果的な活動を維持するための機能のことです。チームワークの対処能力の強化、メンバーの関係性の補修が求められます。

・「タスク機能」とは、チームの目標達成やそのための課題を遂行していく機能のことです。チーム内では、課題の明確化、仮設の設定、課題の分析、計画の策定、仮説の検証の過程をたどります。

 以上から、病棟チームは、選択肢 2.「メンテナンス機能」を果たしたとみることができます。

 その他の選択肢 1.管理的機能、3.教育的機能、5.支持的機能は、スーパービジョンの機能です。この事例の状況をみると、スーパービジョンの機能は関係ありません。

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02

1、✕ 管理的機能とは、スーパービジョンにおける機能の一つであり、スーパーバイザーがスーパーバイジーの業務量調整などを行う事で、スーパーバイジーの力が十分発揮できるよう支援する事を言います。本事例においてスーパービジョンに関する記述はなく、内容も適当とは言えません。

2、〇 メンテナンス機能とはチームケアを実施するにあたり、チームが何らかの理由で機能不全に陥った際にチームの力を維持、強化をするよう働きかけ、その機能を修復する事を言います。本事例においては、Eさんの支援を行うチームがEさんの言動等によって機能不全に陥っており、それに対してD精神保健福祉士がケアカンファレンスを通してその機能の回復を図っている事が書かれているため、適切な内容であると言えます。

3、✕ 教育的機能とは、スーパービジョンにおける機能の一つであり、スーパーバイザーが自分の持つ知識や技術をスーパーバイジーに提供し、教育する事でスーパーバイジーの力を引き出す事を指します。本事例においてはスーパービジョンを実施しておらず、内容も適当とは言えません。

4、✕ タスク機能とは、チームによる支援を実施する際に目標を達成するための課題を立案し、それを遂行する事を言います。具体的にはクライエントが持つ課題を明確にしたり、それを達成するための実行計画を立案するなどの行動がそれにあたります。本事例においてそのような記述は見られないため、適切とは言えません。

5、✕ 支持的機能とは、スーパービジョンにおける機能の一つであり、スーパーバイザーがパワーレスに陥っているスーパーバイジーに対して自己覚知を促すなど支持的な態度で関わる事により、バーンアウトを防止する事を目的とし実施されます。本事例においてはスーパービジョンは実施されていません。

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03

正解は、 です。

1 「管理的機能」は、スーパービジョンの一つです。ここでD精神保健福祉士は病棟チームに対しスーパービジョンを行なっているわけではありませんので、不適切です。

2 適切です。ここでD精神保健福祉士は、機能不全に陥りつつある病棟チームを強化・補修する役割を果たしました。したがって、「メンテナンス機能」が適切です。

3 「教育的機能」は、スーパービジョンの一つです。ここでD精神保健福祉士は病棟チームに対しスーパービジョンを行なっているわけではありませんので、不適切です。

4 「タスク機能」とは、チーム内で目標や課題達成を遂行する機能です。ここでは目標について話し合っているわけではないので不適切です。

5 「支持的機能」は、スーパービジョンの一つです。ここでD精神保健福祉士は病棟チームに対しスーパービジョンを行なっているわけではありませんので、不適切です。

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