精神保健福祉士の過去問
第25回(令和4年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問10

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問題

第25回(令和4年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問10 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
Fさん(41歳、女性)は、会社員として働いていた25歳の時にW精神科病院を受診し、うつ病と診断された。その後、幾つか通院先を変え、1年前からV精神科クリニックに通っている。ある日、FさんはV精神科クリニックのG精神保健福祉士(以下「Gワーカー」という。)に障害年金の申請に関する相談をした。Fさんとの面接の中で、母親とH社会保険労務士(以下「H社労士」という。)が、申請の手続を進めようとしていることが分かったが、Fさんは、「申請が必要なのか悩んでいるんです」と語った。そこでGワーカーは、「Fさんとお母さんの考えを出し合ってよく話し合いましょう」と話しかけた。(※1)
その後、障害年金の申請について、主治医を交えて四者で面談するために、FさんとH社労士が来院した。面談の中でH社労士は、経済的な基盤ができることが最重要ではないかと発言し、主治医は、継続的な受診が必要で、年金を受給できる状態であると述べた。面談の間、Fさんは押し黙ったままであり、GワーカーはFさんの受給に対する意向や考えを明確にすることが大切だと考え、「Fさんはどう思いますか」と尋ねたところ、「ずっと、迷っています」とつぶやいた。そこでGワーカーは、「Fさんの障害年金に対する思いを皆で詳しく聞いてみませんか」と提案した。(※2)
四者での面談から2週間ほど経過した後、GワーカーはFさんに改めて意向を確認した。「母は今後の生活を考え申請を勧めてくるが、障害者として生きていくということですよね」と話し始め、病気にならなければ違った人生になったかもしれないという思いが語られた。そこでGワーカーは、Fさんに、同じ病気を経験した人と交流できる場を紹介した。交流の場に参加したFさんは、参加者が自分の人生を前向きに捉えており、その場での経験がFさんにとって、将来を考えるきっかけとなった。この体験を通しFさんは、障害年金の申請を自分の権利として積極的に捉えるようになった。この考え方の変化をGワーカーへ伝え、早速、H社労士にも連絡を取り、受診歴や初診時の年金加入条件等を調べてもらうことにした。(※3)

次のうち、(※1)の時点でFさんの揺らぎに焦点を当てたGワーカーの声かけの根拠となるソーシャルワークの価値として、最も適切なものを1つ選びなさい。
  • 自己覚知
  • 人間の社会性
  • 自己実現
  • 変化の可能性
  • パーソナリティの発達

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この過去問の解説 (3件)

01

障害年金の申請について悩んでいるFさんの揺らぎについて、どういう根拠をもって、G精神保健福祉士が声をかけたのかを問われています。各選択肢にあるような用語の内容について、あらためて確認しておきましょう。

選択肢1. 自己覚知

適切ではありません。自己覚知とは、援助者(この場合、G精神保健福祉士)が自らの感じ方・考え方の傾向、知識・技量について意識し、把握しておくことをいいます。「声かけの根拠」としてふさわしくありません。

選択肢2. 人間の社会性

適切ではありません。人間の社会性とは、ブトゥリムによって提唱されたソーシャルワークの究極的価値の一つです。「人間は、人間である以上、社会とのつながりのなかで生きるという社会的な存在であるということ」を指します。障害年金を申請すべきか否か悩むFさんの事例において、こうした概念に基づいて声かけしているようには感じられません。

選択肢3. 自己実現

適切ではありません。自己実現とは、ユングによって提唱された概念の一つです。「人間が自分自身の本質や可能性に気づき、成長し、より完全な自己へ近づくプロセス」を指します。ソーシャルワークの価値というよりは、内面的な成長を示す心理学上の用語と思われます。

選択肢4. 変化の可能性

適切です。変化の可能性とは、ブトゥリムによって提唱されたソーシャルワークの究極的価値の一つです。「人は絶えず変化、成長することによってのみ、自分の持っている潜在的可能性を達成することができる」との意味を持ちます。事例全体を通してして見ると、Fさんは、母親や社会保険労務士に気兼ねをし、自分の意思をなかなか表明できないような状況であると推察されます。「Fさんが自分の問題についてよく考え、意思を表明できるようになる」ことが「変化・成長」と捉えることもできます。

選択肢5. パーソナリティの発達

適切ではありません。G精神保健福祉士は、Fさんが「自分の問題(障害年金を受給すべきかどうか)についてよく考え、自身の意思を表明できるようになる」ことのために、声かけを行っていると考えられ、そのことはパーソナリティ(人格)の問題とは、別の内容と考えられます。

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02

相談援助に携わる際には、根拠を持った支援を行う事が必要となります。その根拠を持つために、ソーシャルワーカーは価値・知識・技術を持つ事が重要とされています。本設問においてはそのうちの一つである価値について問われる問題となっています。それぞれの用語について理解しておく必要があります。

選択肢1. 自己覚知

✕ 自己覚知とは、ソーシャルワーカーが自分自身を客観的に見つめ、自分自身の考え方の特徴などを把握する事を言います。それを事前に知っておく事で自分自身の感情だけに左右されず、根拠を持った支援を行う事に繋がります。

本事例でGワーカーが自分自身の感情や価値観を意識して発言している場面はないため、適切とは言えません。

選択肢2. 人間の社会性

✕ 人間の社会性とは、ブトゥリムが著した3つの価値の一つであり、人間はそれぞれ独自性を持った生きものであるが、それを貫くために他の人に依存する存在であると説きました。

本事例においては障害年金の受給について声掛けを行っていますが、人間の社会性に基づいた声掛けとは読み取れません。

選択肢3. 自己実現

✕ マズローの5段階欲求説によれば、自己実現とはありのままの自分で過ごし、それが社会貢献に繋がる状態の事を言います。

GワーカーはFさんとお母さんの考えを擦り合わせ、話し合う事を勧めています。現在の状態を維持しようという価値観に基づいての発言とは言えないため、適切ではないと考えられます。

選択肢4. 変化の可能性

〇 変化の可能性とはブトゥリムが提唱した「人は変化・成長・向上する可能性を持っている」という考え方です。

GワーカーはFさんが一人で考え込み、悩んでしまっている状況ですが、母親と話し合う事でFさんの現状に変化が訪れる可能性があると考え、母親との話し合いを勧める言葉を掛けているため、適切な内容であると考えます。

選択肢5. パーソナリティの発達

✕ パーソナリティは人格や性格などと訳されます。GワーカーはFさんが自分の意見をまとめ、表出できるように働きかけていますが、パーソナリティの発達を促すための言葉ではないと考えられ、適切な内容とは言えません。

参考になった数3

03

事例を読んだ上で、ソーシャルワークの価値について問われています。事例を読む能力とそれぞれの用語の意味を理解しておく必要があります。

選択肢1. 自己覚知

不適切です。GワーカーがFさんに声掛けを行っていることから、自己覚知と読み取れる記述はありません。

選択肢2. 人間の社会性

不適切です。障害年金に対するFさんとお母さんの考えを出し合うよう声かけをしていることから、人間の社会性を根拠としているとは言えません。

選択肢3. 自己実現

不適切です。Fさんも「悩んでいるんです」と話していることから、自己実現の場面ではないことがわかります。

選択肢4. 変化の可能性

適切です。関わりによって変化の可能性があると捉えることができます。

選択肢5. パーソナリティの発達

不適切です。ここでは障害年金のことについて話し合っており、パーソナリティの発達を根拠とはしていません。

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