精神保健福祉士の過去問
第25回(令和4年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問14

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問題

第25回(令和4年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問14 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
Jさん(55歳、男性)は、高校生の時に統合失調症を発症したが、今は病状も落ち着き、通院しながらアパートで一人暮らしをしている。Jさんは、3年ほど前から、K精神保健福祉士が勤めている地域活動支援センターで週に1~2日過ごしているほか、昨年からは月に1度保健所で開かれている「精神保健福祉を考える集い」(以下「集い」という。)に参加している。「集い」では精神障害当事者のほか、病院や地域の精神保健福祉士や地域住民など20名ほどが集まり、その月の出来事などを語り合っている。「集い」の代表は統合失調症を経験したLさんであり、「集い」の運営や事務を行っている。人との交流の少ないJさんにとってはいろいろな人と出会う大切な機会となっている。ある日、K精神保健福祉士は暗い表情をしたJさんから、「Lさんが県外に転居することになった。Lさんがいなくなったら『集い』はどうなってしまうのだろう」と消え入るような声で相談を受けた。(※1)
Lさんの転居後約1年の間に、様々な広報活動の効果もあり、「集い」は精神障害当事者の参加が増え、病気を抱えながら生活する日々の出来事が前向きに捉え直されたり、元気づけられたり、また地域住民との間で共有される場面が多くなった。やがて「集い」には精神科病院から、「ここで話されているようなことを入院中の方とも話してほしい」という依頼が来るようになった。Jさんも数回精神科病院で入院中の方と話をした。ある日JさんはK精神保健福祉士に、「入院中の方に退院後の生活や自分の体験を話すことで自分が人の力になれるように感じた。精神科病院を訪問した仲間たちの間で、『このような活動を続けるために精神障害当事者の会を立ち上げたい』と話しているので相談に乗ってほしい」と伝えた。(※2)
K精神保健福祉士は、地域活動支援センターで一人静かに時を過ごし、「集い」に参加し始めた頃のJさんを思い出し、「Jさんは変わられましたね」と声をかけた。(※3)

(※2)において、Jさんたちが始めようとしている会の活動として、適切なものを1つ選びなさい。
  • コンサルテーション
  • スーパービジョン
  • ソーシャルアクション
  • ピアサポート
  • アファーマティブアクション

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この過去問の解説 (3件)

01

当事者であるJさんが立ち上げたいと言っていることがポイントです。専門職が行う活動と当事者が行う活動の用語について覚えておきましょう。

選択肢1. コンサルテーション

コンサルテーションとは、専門性の異なる人間が課題について検討し、支援内容を話し合うことです。Jさんは専門職ではなく、当事者であることからも不適切です。

選択肢2. スーパービジョン

スーパービジョンとは、K精神保健福祉士のような専門職が事業所の指導者などから教育を受けることです。

選択肢3. ソーシャルアクション

ソーシャルアクションとは、まだ存在しない社会資源を作るために、行政などへ働きかけを行うことです。

選択肢4. ピアサポート

ピアサポートとは、同じ悩みや障がいを抱える当事者同士が支え合う活動のことです。Jさんは「精神障害当事者の会を立ち上げたい」と話していますので、適切です。

選択肢5. アファーマティブアクション

アファーマティブアクションとは、社会的な差別を取り除いていくことです。事例にそのような記述は見られません。

参考になった数10

02

精神科病院への訪問活動を行った仲間たちの間で、その活動の存続のため「精神障害当事者の会を立ち上げたい」と話しているのがポイントです。「入院中の方に退院後の生活や自分の体験を話すことで自分が人の力になれるように感じること」でお互いを支える関係になっています。

選択肢1. コンサルテーション

適切ではありません。コンサルテーションとは、専門職視点からとらえた情報等を領域の異なる専門職、非専門家、地域の社会資源などに提供することを指します。Jさんたちが始めようとしている会の活動が専門職としての観点から行われるわけではありません。

選択肢2. スーパービジョン

適切ではありません。スーパービジョンとは、具体的支援を展開しているスーパーバイジーの困難や不具合について、経験豊かなスーパーバイザーとともに、客観的視点をもって行う支援等の方向付けのことを指します。

選択肢3. ソーシャルアクション

適切ではありません。ソーシャルアクションとは、既存の制度の改善・拡充・創設などを目的に、クライエント・地域住民ニーズに応えて地域の組織をはかり、世論を喚起しながら、行政機関等に働きかける組織的な活動を指します。

選択肢4. ピアサポート

適切です。ピアサポートとは一般に、同じような体験をした人・同じような立場の人が、対等な関係で仲間を支えることを指します。Jさんたちの活動は、精神障害の当事者という対等な立場で仲間を支援する点でピアサポートに当たります。

選択肢5. アファーマティブアクション

適切ではありません。アファーマティブアクションとは一般に、マイノリティーの不利な現状・差別に対して、歴史的な経緯や社会環境にかんがみた上で行わる積極的差別解消措置を指します。

まとめ

事例の題意を考察するとともに選択肢一つ一つの意味も理解するとよいでしょう。

参考になった数7

03

本設問を解くためには、各選択肢に挙げられている語句の意味を正確に理解しておく必要がありいます。

選択肢1. コンサルテーション

✕ コンサルテーションとは、同じ対象者を支援する、分野が異なる専門職同士が話し合い、より良い援助方法を検討する事を言います。Jさんや会の参加者の方は専門職ではないため、コンサルテーションではありません。

選択肢2. スーパービジョン

✕ スーパービジョンとは、経験が少ない援助者が、経験の多い指導者から自分の支援方法について意見・助言を受けて成長する事を目的とした教育方法の一つです。Jさんと会の参加者の方は指導者と援助者の関係であるという記載はなく、スーパービジョンではありません。

選択肢3. ソーシャルアクション

✕ ソーシャルアクションとは社会全体に働きかけ、既存の制度の拡充や不足している制度・社会資源の創出などを目指す事を言います。Jさんが立ち上げようとしている会は社会全体に働きかけているわけではなく、病院の仲間達と一緒に行う活動を目指していますので、ソーシャルアクションではありません。

選択肢4. ピアサポート

〇 ピアサポートとは、同じ立場にある人同士がお互いを支え合い、支援し合う活動の事を言います。Jさんは精神障害を持つ人が、自分の体験を話す事で同じ立場にある人を支えようと考えており、ピアサポートの内容に合致する活動と言えます。

選択肢5. アファーマティブアクション

✕ アファーマティブアクションとは、性別や人種などが原因で、差別や不利益を受けている人達に対して、その格差をなくすことが出来るような機会を提供する事を言います。Jさん達が行おうとしている活動は、当事者同士で支え合う事を目指しており、格差をなくすことを目的としたものではありません。

参考になった数3