精神保健福祉士の過去問
第25回(令和4年度)
精神保健福祉相談援助の基盤 問15
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問題
第25回(令和4年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉相談援助の基盤 問15 (訂正依頼・報告はこちら)
次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
Jさん(55歳、男性)は、高校生の時に統合失調症を発症したが、今は病状も落ち着き、通院しながらアパートで一人暮らしをしている。Jさんは、3年ほど前から、K精神保健福祉士が勤めている地域活動支援センターで週に1~2日過ごしているほか、昨年からは月に1度保健所で開かれている「精神保健福祉を考える集い」(以下「集い」という。)に参加している。「集い」では精神障害当事者のほか、病院や地域の精神保健福祉士や地域住民など20名ほどが集まり、その月の出来事などを語り合っている。「集い」の代表は統合失調症を経験したLさんであり、「集い」の運営や事務を行っている。人との交流の少ないJさんにとってはいろいろな人と出会う大切な機会となっている。ある日、K精神保健福祉士は暗い表情をしたJさんから、「Lさんが県外に転居することになった。Lさんがいなくなったら『集い』はどうなってしまうのだろう」と消え入るような声で相談を受けた。(※1)
Lさんの転居後約1年の間に、様々な広報活動の効果もあり、「集い」は精神障害当事者の参加が増え、病気を抱えながら生活する日々の出来事が前向きに捉え直されたり、元気づけられたり、また地域住民との間で共有される場面が多くなった。やがて「集い」には精神科病院から、「ここで話されているようなことを入院中の方とも話してほしい」という依頼が来るようになった。Jさんも数回精神科病院で入院中の方と話をした。ある日JさんはK精神保健福祉士に、「入院中の方に退院後の生活や自分の体験を話すことで自分が人の力になれるように感じた。精神科病院を訪問した仲間たちの間で、『このような活動を続けるために精神障害当事者の会を立ち上げたい』と話しているので相談に乗ってほしい」と伝えた。(※2)
K精神保健福祉士は、地域活動支援センターで一人静かに時を過ごし、「集い」に参加し始めた頃のJさんを思い出し、「Jさんは変わられましたね」と声をかけた。(※3)
(※3)において、K精神保健福祉士の発言の背景にある考え方として、適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Jさん(55歳、男性)は、高校生の時に統合失調症を発症したが、今は病状も落ち着き、通院しながらアパートで一人暮らしをしている。Jさんは、3年ほど前から、K精神保健福祉士が勤めている地域活動支援センターで週に1~2日過ごしているほか、昨年からは月に1度保健所で開かれている「精神保健福祉を考える集い」(以下「集い」という。)に参加している。「集い」では精神障害当事者のほか、病院や地域の精神保健福祉士や地域住民など20名ほどが集まり、その月の出来事などを語り合っている。「集い」の代表は統合失調症を経験したLさんであり、「集い」の運営や事務を行っている。人との交流の少ないJさんにとってはいろいろな人と出会う大切な機会となっている。ある日、K精神保健福祉士は暗い表情をしたJさんから、「Lさんが県外に転居することになった。Lさんがいなくなったら『集い』はどうなってしまうのだろう」と消え入るような声で相談を受けた。(※1)
Lさんの転居後約1年の間に、様々な広報活動の効果もあり、「集い」は精神障害当事者の参加が増え、病気を抱えながら生活する日々の出来事が前向きに捉え直されたり、元気づけられたり、また地域住民との間で共有される場面が多くなった。やがて「集い」には精神科病院から、「ここで話されているようなことを入院中の方とも話してほしい」という依頼が来るようになった。Jさんも数回精神科病院で入院中の方と話をした。ある日JさんはK精神保健福祉士に、「入院中の方に退院後の生活や自分の体験を話すことで自分が人の力になれるように感じた。精神科病院を訪問した仲間たちの間で、『このような活動を続けるために精神障害当事者の会を立ち上げたい』と話しているので相談に乗ってほしい」と伝えた。(※2)
K精神保健福祉士は、地域活動支援センターで一人静かに時を過ごし、「集い」に参加し始めた頃のJさんを思い出し、「Jさんは変わられましたね」と声をかけた。(※3)
(※3)において、K精神保健福祉士の発言の背景にある考え方として、適切なものを1つ選びなさい。
- リカバリー
- コ・プロダクション
- コンピテンス
- ライフヒストリー
- ワーカビリティ
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この過去問の解説 (3件)
01
K精神保健福祉士がJさんのどのような変化に着目して声をかけたのか考えてみましょう。各選択肢の用語についても一通り確認しましょう。
適切です。リカバリーには、多様な定義がありますが、ウィリアム・アンソニーによると「精神疾患の当事者が、たとえ精神症状や障害が続いていたとしても、新たな人生の意味や目的を見出して充実した人生を生きていく一人ひとりのプロセス」とされています。Jさんの行動・心理面の変化について、主体性を回復していく過程ととらえたK精神保健福祉士の発言です。
適切ではありません。コ・プロダクション(共同創造)とは、精神障害当事者と専門職とが対等なパートナーシップをもって、提供されるサービス等の内容に関与していくことを指します。Jさんの変化をとらえる発言の根拠として不適当です。
適切ではありません。コンピテンスとは、環境に対する適応能力をさす概念で、有能感とも訳されています。Jさんの変化をとらえる発言の根拠として不適当です。
適切ではありません。ライフヒストリーとは、個人の語ったライフストーリーや、日記や手紙などの文書資料を用いて個人史を再構築したものとされています。ライフヒストリーは生活史と訳されています。Jさんの変化をとらえる発言の根拠として不適当です。
適切ではありません。ワーカビリティとは、クライエントの持つ、問題解決に向けて主体的に取り組む力を指します。Jさんの変化をとらえる発言の根拠として不適当です。
選択肢の中には、近年になって注目を浴びるようになった概念もあります。一つひとつの用語について、その概念を理解することが必要です。
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02
Jさんの変化について、K精神保健福祉士が声をかけている場面です。それぞれの用語の意味を理解しておきましょう。
事例を読むと、Jさんが地域活動支援センターでの活動を通して、変化していることがわかります。
コ・プロダクションとは、当事者と支援者が共に新しいものを創っていくことです。そのような記述はありません。
コンピテンスとは、「能力」や「強み」を意味します。事例では、Jさんが「変わられましたね」とあるので、変わっていった過程に着目することが大切です。
ライフヒストリーとは、その人の生活の歴史です。ここでは、地域活動支援センターでの活動を通したことについて問われていますので、不適切です。
ワーカビリティとは、当事者が支援者の働きかけにより、自主的に課題解決に取り組もうとする能力のことです。ここでは、Jさんの変化が背景にありますので、不適切です。
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03
本設問においては、相談援助に関わる概念が選択肢として挙げられています。カタカナでの語句も多く、理解が困難ですが頻出問題のため覚えておくと良いでしょう。
〇 リカバリーには、病気そのものの改善を目指す「臨床的リカバリー」、患者自身が決めた目標に近づく事を目指す「パーソナル・リカバリー」、患者が望む場所で生活する事を目指す「社会的リカバリー」があります。本設問では、統合失調症という病気を持つJさんが、「精神障害当事者の会を立ち上げたい」と目標を持てるまでに考え方が変化した過程がパーソナルリカバリーを背景としたものと考えられます。
✕ コ・プロダクションとは、サービスの提供者と利用者が対等の立場に立って協働し、お互いにとって良いサービスを作っていく事を言います。本設問において、K精神保健福祉士とJさんはサービス作りをした訳ではなく、コ・プロダクションの理念に沿っているとは言えません。
✕ コンピテンスとは、様々な経験や体験を通して獲得する能力(協調性やコミュニケーション力等)の事を言います。K精神保健福祉士は、Jさんの考えを整頓する等の支援を行いましたが、能力の獲得を支援している様子は見られません。
✕ ライフヒストリーとは、個人の生きてきた歴史を記録した物を指します。本設問において、K精神保健福祉士がそれを意識して関わった様子は見受けられず、不適切です。
✕ ワーカビリティとは、クライエントが問題を解決するために主体的に取り組む事を指します。K精神保健福祉士は「集い」の今後に対して不安を感じるJさんの気持ちに寄り添い、その不安に対してどのように取り組んでいくかの方向性を考えられるような支援を行いましたが、ワーカビリティを高める支援を行っているとは言えず、適切な内容とは言えません。
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