精神保健福祉士の過去問
第25回(令和4年度)
精神保健福祉の理論と相談援助の展開 問17
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問題
第25回(令和4年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉の理論と相談援助の展開 問17 (訂正依頼・報告はこちら)
次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
Cさん(25歳、男性)は、19歳の時に友人に勧められて覚醒剤を使用し、警察に逮捕され、その後、保護観察処分を受けた。保護観察期間が終わってからは、その友人とも距離を置き、就職して23歳の時に結婚して子どもも生まれた。ところが新しい上司との相性が悪く、ミスを叱責されたことから口論となって仕事を辞め、再び覚醒剤を勧めた友人と会うようになった。働かずブラブラしているCさんをみた妻は、子どもを連れて家を出てしまった。Cさんは、失意と孤独から抑うつ状態に陥り、覚醒剤を再使用したいという欲求にかられ、精神科クリニックを訪れた。診察した医師はクリニックで実施しているSMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)への参加を勧め、担当のD精神保健福祉士がプログラム導入のための面接を行った。Cさんは、面接室に座るなり、「保護観察の時にも更生プログラムを受けた。本当に効果があるんですか」と疑心暗鬼な様子で尋ねた。D精神保健福祉士はCさんがクリニックに来たことをねぎらい、面接を始めた。(※1)
Cさんは、D精神保健福祉士との面接を経て、プログラムに参加することになった。プログラムを始めたばかりのCさんは、身体もつらそうで緊張した面持ちだったが、
「妻からは、『覚醒剤を勧めた友人と縁を切って、働くようになったらまた一緒に暮らしても良い』と言われた。頑張って妻と子どもに回復した姿を見せたい」と週1回の参加を続けた。4週目には、薬物の再使用の「引き金」について考えるプログラムに参加した。Cさんは自分の「引き金」が対人関係のつまずきと考え、D精神保健福祉士やほかのメンバーと一緒にその対処方法について確認した。(※2)
その後、順調にみえていたCさんだったが、プログラムが始まって2か月が過ぎた頃からイライラしてプログラムのメンバーと何度か言い争う姿がみられた。心配したD精神保健福祉士が、Cさんと面談すると、「妻と子どものことを考えると、もう絶対覚醒剤はやってはいけないと思うが、ふとした時にまた無性に覚醒剤を使いたいと思うことがある」「妻と子どもに会いたい」と訴えた。(※3)
次の記述のうち、(※1)の面談時のD精神保健福祉士のCさんへの発言として、適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Cさん(25歳、男性)は、19歳の時に友人に勧められて覚醒剤を使用し、警察に逮捕され、その後、保護観察処分を受けた。保護観察期間が終わってからは、その友人とも距離を置き、就職して23歳の時に結婚して子どもも生まれた。ところが新しい上司との相性が悪く、ミスを叱責されたことから口論となって仕事を辞め、再び覚醒剤を勧めた友人と会うようになった。働かずブラブラしているCさんをみた妻は、子どもを連れて家を出てしまった。Cさんは、失意と孤独から抑うつ状態に陥り、覚醒剤を再使用したいという欲求にかられ、精神科クリニックを訪れた。診察した医師はクリニックで実施しているSMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)への参加を勧め、担当のD精神保健福祉士がプログラム導入のための面接を行った。Cさんは、面接室に座るなり、「保護観察の時にも更生プログラムを受けた。本当に効果があるんですか」と疑心暗鬼な様子で尋ねた。D精神保健福祉士はCさんがクリニックに来たことをねぎらい、面接を始めた。(※1)
Cさんは、D精神保健福祉士との面接を経て、プログラムに参加することになった。プログラムを始めたばかりのCさんは、身体もつらそうで緊張した面持ちだったが、
「妻からは、『覚醒剤を勧めた友人と縁を切って、働くようになったらまた一緒に暮らしても良い』と言われた。頑張って妻と子どもに回復した姿を見せたい」と週1回の参加を続けた。4週目には、薬物の再使用の「引き金」について考えるプログラムに参加した。Cさんは自分の「引き金」が対人関係のつまずきと考え、D精神保健福祉士やほかのメンバーと一緒にその対処方法について確認した。(※2)
その後、順調にみえていたCさんだったが、プログラムが始まって2か月が過ぎた頃からイライラしてプログラムのメンバーと何度か言い争う姿がみられた。心配したD精神保健福祉士が、Cさんと面談すると、「妻と子どものことを考えると、もう絶対覚醒剤はやってはいけないと思うが、ふとした時にまた無性に覚醒剤を使いたいと思うことがある」「妻と子どもに会いたい」と訴えた。(※3)
次の記述のうち、(※1)の面談時のD精神保健福祉士のCさんへの発言として、適切なものを1つ選びなさい。
- 「覚醒剤がいかに危険なものか分かっていますか」
- 「覚醒剤を使うことをどのように思っていますか」
- 「最初に、治療プログラムについて説明します」
- 「あなたがしたことで、ご家族がどんな思いをしたか考えてください」
- 「そのような態度では、覚醒剤を再使用してしまいますよ」
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この過去問の解説 (3件)
01
失意、孤独、抑うつ状態、覚醒剤を再使用したいという欲求にかられていると言ったキーワードが事例に出てきます。今、Cさんが置かれている状況を理解し、Cさんの思いを確認しましょう。
不適切です。Cさんは治療について疑心暗鬼であるものの、一歩踏み出して精神科クリニックを訪れています。まずはCさんの思いを確認しましょう。
適切です。Cさんとの初回面接の場面です。まずはCさんが覚醒剤についてどのように考えているかを確認することは必要です。
不適切です。D精神保健福祉士としては、説明をすることよりも、まずはCさんがどのように考えているのかなどを確認し、信頼関係の構築を目指す必要があります。
不適切です。Cさんを否定するような発言をするべきではありません。事例にある通り、クリニックに来たことをねぎらい、Cさんの思いを確認することから始めます。
不適切です。Cさんを否定するような発言をするべきではありません。治療についてどのように思っているかなど、Cさんの思いを確認しましょう。
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02
薬物使用歴があり、再使用の欲求を感じる患者(Cさん)がSMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)の導入のため、D精神保健福祉士の面接を受ける場面です。
SMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)とは、2006年に旧せりがや病院で開発され、その後全国に普及した薬物再使用防止プログラムです。
Cさんの置かれている状況をよく考えながら解答するとともに、薬物再使用防止プログラムの内容も理解しておきましょう。
適切ではありません。薬物再使用防止プログラム導入のための初回面談としては、やや強引な印象を受け、CさんとD精神保健福祉士の信頼関係の構築に水を差す質問ととらえられます。また、薬物中毒者の多くは薬物の危険性を十分に理解している場合が多いとされています。
適切です。薬物再使用防止プログラム導入のための初回面談として、Cさんが薬物とどのように向き合っているか知ることは、プログラム参加の判断のために必要な情報です。
適切ではありません。Cさんは「保護観察の時にも更生プログラムを受けた」と話しており、また同時にその効果に疑問をもっている状態です。まずは、形式的な説明よりも、Cさんが薬物とどのように向き合っているかを知ることが、優先すると考えられます。
適切ではありません。薬物再使用防止プログラム導入のための初回面談として、やや強引な印象を受け、CさんとD精神保健福祉士の信頼関係の構築に水を差す質問ととらえられます。
適切ではありません。薬物再使用防止プログラム導入のための初回面談として、やや強引な印象を受け、CさんとD精神保健福祉士の信頼関係の構築に水を差す質問ととらえられます。「態度」が「再使用」と結びつく因果関係も不明ですし、Cさんのこれまでの歩みや現在の薬物についての向き合い方を聞かずに、このように発言するのは不適切です。
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03
本事例で挙げられている「SMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)」は、グループで行われる薬物依存症の治療を主とした認知療法です。Cさんは過去にも覚せい剤を使用した事があり、一時は使用を止める事が出来ましたが、様々な理由が重なり再度覚せい剤を使用してしまっています。覚せい剤の再使用に至ってしまったCさんの気持ちを受け止め、Cさんの未来が良い方向性に向いていくよう支援する事が重要です。
✕ Cさんはプログラムの効果に対して疑問を持っており、積極的に参加しようという気持ちにはいたっていません。現時点ではCさんにプログラムへ参加してもらえるよう働きかける必要があるため、選択肢のような声掛けは適切と言えません。
〇 Cさんは過去に覚せい剤を使用し、一度は使用を止める事が出来ていましたが、再度覚せい剤を使用するに至っています。覚せい剤を使用する事にはCさんなりの理由があると考えられ、覚せい剤を使用する事についてのCさんの気持ちを聞く事は適切な対応と言えます。
✕ 現時点で、Cさんは治療プログラムを受ける事に対して前向きな気持ちは持っていません。治療プログラムの内容を説明したとしても、興味を持ってもらえる可能性は低いと考えられます。
✕ CさんとD精神保健福祉士は初対面であり、信頼関係を築けている状態ではありません。その状態でD精神保健福祉士から選択肢の内容のようなCさんを責めるような発言をすれば、Cさんと信頼関係を築けず、プログラムへの参加の気持ちを持ってもらう事も難しくなると思われます。適切な声掛けとは言えません。
✕ Cさんはプログラムの効果に疑問を持っており、それを解消し、プログラムへの参加に繋げていく事を目標としています。よって選択肢のようにCさんを責めるような言葉を伝える事はCさんの心を理解しようとしているようには聞こえず、効果的ではないと考えられます。
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