精神保健福祉士の過去問
第25回(令和4年度)
精神保健福祉の理論と相談援助の展開 問19

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問題

第25回(令和4年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉の理論と相談援助の展開 問19 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
Cさん(25歳、男性)は、19歳の時に友人に勧められて覚醒剤を使用し、警察に逮捕され、その後、保護観察処分を受けた。保護観察期間が終わってからは、その友人とも距離を置き、就職して23歳の時に結婚して子どもも生まれた。ところが新しい上司との相性が悪く、ミスを叱責されたことから口論となって仕事を辞め、再び覚醒剤を勧めた友人と会うようになった。働かずブラブラしているCさんをみた妻は、子どもを連れて家を出てしまった。Cさんは、失意と孤独から抑うつ状態に陥り、覚醒剤を再使用したいという欲求にかられ、精神科クリニックを訪れた。診察した医師はクリニックで実施しているSMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)への参加を勧め、担当のD精神保健福祉士がプログラム導入のための面接を行った。Cさんは、面接室に座るなり、「保護観察の時にも更生プログラムを受けた。本当に効果があるんですか」と疑心暗鬼な様子で尋ねた。D精神保健福祉士はCさんがクリニックに来たことをねぎらい、面接を始めた。(※1)
Cさんは、D精神保健福祉士との面接を経て、プログラムに参加することになった。プログラムを始めたばかりのCさんは、身体もつらそうで緊張した面持ちだったが、
「妻からは、『覚醒剤を勧めた友人と縁を切って、働くようになったらまた一緒に暮らしても良い』と言われた。頑張って妻と子どもに回復した姿を見せたい」と週1回の参加を続けた。4週目には、薬物の再使用の「引き金」について考えるプログラムに参加した。Cさんは自分の「引き金」が対人関係のつまずきと考え、D精神保健福祉士やほかのメンバーと一緒にその対処方法について確認した。(※2)
その後、順調にみえていたCさんだったが、プログラムが始まって2か月が過ぎた頃からイライラしてプログラムのメンバーと何度か言い争う姿がみられた。心配したD精神保健福祉士が、Cさんと面談すると、「妻と子どものことを考えると、もう絶対覚醒剤はやってはいけないと思うが、ふとした時にまた無性に覚醒剤を使いたいと思うことがある」「妻と子どもに会いたい」と訴えた。(※3)

次の記述のうち、(※3)のCさんの訴えに対するD精神保健福祉士の対応として、適切なものを1つ選びなさい。
  • プログラムで、今の気持ちをメンバーと共有することを提案する。
  • 保護観察処分を受けたことがあるため、保護観察所に対応の指示を得る。
  • クリニックでのプログラムを中止し、司法のプログラムに変更することを伝える。
  • クリニックへの立入りを制限し、底つき体験を促す。
  • 妻に連絡し、Cさんに会いに行くよう依頼する。

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この過去問の解説 (3件)

01

薬物使用歴があり、再使用の欲求を感じる患者(Cさん)がSMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)の受講中、薬物を使用したい気持ちをD精神保健福祉士に訴える場面です。

SMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)とは、2006年に旧せりがや病院で開発され、その後全国に普及した薬物再使用防止プログラムです。

Cさんの置かれている状況をよく考えながら解答するとともに、薬物再使用防止プログラムの内容も理解しておきましょう。

選択肢1. プログラムで、今の気持ちをメンバーと共有することを提案する。

適切です。SMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)も集団療法の一つと考えることができ、グループの力動=相互作用によってグループ・個人の成長・成熟につながる側面があります。Cさんのつらい気持ち、再使用に対する欲求をメンバー間で共有することにより、Cさんの気持ちの前向きな変化に期待できる可能性があります。

選択肢2. 保護観察処分を受けたことがあるため、保護観察所に対応の指示を得る。

適切ではありません。Cさんは保護観察期間をすでに終えています。SMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)内で取り組むべき課題といえます。

選択肢3. クリニックでのプログラムを中止し、司法のプログラムに変更することを伝える。

適切ではありません。Cさんは保護観察期間をすでに終えています。保護観察所おける保護観察官が行う「薬物再乱用防止プログラム」の対象外と考えられます。

選択肢4. クリニックへの立入りを制限し、底つき体験を促す。

適切ではありません。Cさんのイライラ、他の参加者とのいさかい、薬物使用への渇望はプログラムの想定内の出来事と考えられます。プログラムを中断し、クリニックの利用を制限するほどの内容ではないと考えられます。

選択肢5. 妻に連絡し、Cさんに会いに行くよう依頼する。

適切ではありません。Cさんの希望は、回復した自分の姿を妻子に見せたいというものであり、「妻からは、『覚醒剤を勧めた友人と縁を切って、働くようになったらまた一緒に暮らしても良い』と言われた」(Cさん談)ということにとどまることから、現時点で妻に連絡することは、時期尚早と考えられます。

参考になった数8

02

プログラムに参加しているCさんの気持ちが乱れ、プログラムの継続に支障が出る可能性が見られます。覚醒剤の使用を止めるために、プログラムの参加を継続できるよう支援する必要があります。

本設問においては、チームメンバーやCさんの家族など、Cさんを取り巻く人にも視点を向ける事が大切です。

選択肢1. プログラムで、今の気持ちをメンバーと共有することを提案する。

〇 Cさんの今の気持ちを他のメンバーと共有する事で、他のメンバーにCさんの気持ちを知ってもらう事が出来たり、他のメンバーが同様の体験をした時の対処法を学ぶ機会にもなるため、グループに対しても有効な支援と言えます。

選択肢2. 保護観察処分を受けたことがあるため、保護観察所に対応の指示を得る。

✕ Cさんは過去に保護観察処分を受けた事はありますが、保護観察期間は終了しており、保護観察所に対応の指示を得る必要はありません。

選択肢3. クリニックでのプログラムを中止し、司法のプログラムに変更することを伝える。

✕ 他のプログラム参加者と言い争いになっている事は問題の一つですが、プログラムの中断を希望している訳ではありません。Cさんの思いを聞き、その希望に沿った支援を行う事が必要となります。一方的に司法のプログラムへの変更を伝える事はCさんの希望に沿った支援とは言えず、適切な対応とは言えません。

選択肢4. クリニックへの立入りを制限し、底つき体験を促す。

✕ 底つき体験とは、家族の喪失などのどん底状態を体験する事を言い、その体験をきっかけとして、薬物やアルコール等を断ち切る行動を取り始める事があると言われています。しかしCさんは既に家族との離別を体験しており、孤独から薬物を再利用するに至っています。クリニックの立ち入りを制限する事はCさんの孤独に繋がってしまい、薬物の使用に繋げてしまう可能性も高く、適切な支援とは言えません。

選択肢5. 妻に連絡し、Cさんに会いに行くよう依頼する。

✕ 妻はCさんが薬物を勧めた友人と縁を切り、働くようになったら会いに行くという気持ちを持っています。Cさんは妻に会える事に喜びを感じるかもしれませんが、妻の気持ちを無視してしまう事に繋がるため、適切な支援とは言えません。

参考になった数1

03

自分の思いとは逆に、イライラが募っている場面です。D精神保健福祉士としては、Cさんの思いを受け止め、どのような対応が適切かの判断が求められます。

選択肢1. プログラムで、今の気持ちをメンバーと共有することを提案する。

適切です。Cさんの思いを、他のメンバーとも共有して一緒に考えることは重要です。

選択肢2. 保護観察処分を受けたことがあるため、保護観察所に対応の指示を得る。

不適切です。Cさんは「もう絶対覚醒剤はやってはいけないと思う」と理解しています。この時点で保護観察所に指示を求めることは不適切です。

選択肢3. クリニックでのプログラムを中止し、司法のプログラムに変更することを伝える。

不適切です。Cさんはイライラして他のメンバーと言い争う姿はみられているものの、他害行為を行ったわけではありません。まだプログラムを続行でき、何ができるかを考えることが重要です。

選択肢4. クリニックへの立入りを制限し、底つき体験を促す。

不適切です。「何度か言い争う姿がみられた」とありますが、まだプログラムは続行できる段階と判断できます。まず、プログラム内で何ができるかを検討することが優先されます。

選択肢5. 妻に連絡し、Cさんに会いに行くよう依頼する。

不適切です。Cさんは「妻と子どもに会いたい」と訴えていますが、まずはプログラム内で何ができるかを検討することが優先されます。

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