精神保健福祉士の過去問
第25回(令和4年度)
精神保健福祉に関する制度とサービス 問11

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問題

第25回(令和4年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉に関する制度とサービス 問11 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
地元の中小企業で正社員として勤務するJさん(55歳、男性)は、学生時代に統合失調症を発症し、入院をした。退院後に、症状はほぼ消失したため、現在の会社に就職し、何度か再発の危機はあったが、その都度外来治療で乗り越えてきた。ある日、勤務中に、「誰かが自分の命を狙っている」「窓の外に誰かがいる」などの発言がみられるようになり、心配した勤務先の同僚に付き添われてY精神科病院を受診した。
Jさんは支離滅裂なことを言ったり、大きな声で叫んだことから、診察したK医師(精神保健指定医)は直ちに入院を必要とする状態と判断した。入院を勧めたが、Jさんは拒否したため、K医師は本人の意思によらない入院の手続を進めることとした。なお、Jさんの両親はすでに他界しており、兄弟等の親族もいない。(※1)
入院後間もなく、Jさんは徐々に落ち着きを取り戻した。ある日、Jさんは相談室のL精神保健福祉士に対して、「給与が出なくなり、経済的に不安だ」と訴えた。そこで、L精神保健福祉士は、Jさんに対して、健康保険法に基づく制度を紹介し、申請方法について説明した。その後のJさんは、この制度を利用できたことにより経済的な不安が解消し、退院後の自分の生活について考えられるようになった。(※2)
3か月後、JさんはY精神科病院を退院した。その後、外来時にJさんは相談室に寄りL精神保健福祉士に対し、「しばらくは働かずに、自宅で療養して過ごそうと思います。ただ、家に一人でいるのも不安があるので、誰かと話したり、趣味である絵を描いたりする場所が欲しいと思っています」と相談してきた。そこで、L精神保健福祉士は、「障害者総合支援法」において、創作的活動や生産活動の機会の提供、社会との交流の促進等を行うZセンターの紹介を検討した。(※3)
(注)「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

次のうち、(※2)の時点でJさんが利用した制度として、最も適切なものを1つ選びなさい。
  • 障害基礎年金
  • 障害厚生年金
  • 傷病手当金
  • 自立支援医療(精神通院医療)
  • 一般求職者給付

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この過去問の解説 (3件)

01

事例から、入院後間もなく徐々にJさんは落ち着きを取り戻したこと、健康保険に加入していたこと、給与が出なくなって経済的に不安になっていることといったポイントが読み取れます。これらのことから、精神保健福祉士として提案する制度を考えることができます。

選択肢1. 障害基礎年金

不適切です。事例に「入院後間もなく」とあることから、障害認定日には達していないことが推測され、また障害年金が支給される状態であるか否かが事例では言及されていません。また、Jさんは「中小企業で正社員として勤務する」とありますので、どちらかと言えば、障害基礎年金よりも障害厚生年金の方が適切ではないかと推測することができます。

選択肢2. 障害厚生年金

不適切です。事例に「入院後間もなく」とあることから、障害認定日には達していないことが推測され、また障害年金が支給される状態であるか否かが事例では言及されていません。

選択肢3. 傷病手当金

適切です。傷病手当金は、健康保険に加入していれば、病気等で仕事を休むことになった際に申請することができます。その他の受給条件についても、確認しておきましょう。

選択肢4. 自立支援医療(精神通院医療)

不適切です。Jさんは現在入院しています。自立支援医療(精神通院医療)は、入院費については適用となりません。

選択肢5. 一般求職者給付

不適切です。Jさんが中小企業を退職したという記述はありません。一般求職者給付は、失業した方のための給付です。

参考になった数13

02

怪我や病気、障害などが原因で、経済的に困窮する事は珍しい事ではありません。経済的な不安を解消できるよう、公的制度の内容理解や対象者について学んでおく事は重要です。

選択肢1. 障害基礎年金

✕ 障害基礎年金の受給条件の一つとして、障害認定日に障害等級表に定める1級または2級に該当している事が挙げられています。本事例ではそのような記載はないため、条件に当てはまる制度ではありません。

選択肢2. 障害厚生年金

✕ 障害厚生年金の受給条件として、厚生年金の被保険者である期間内に障害の原因となった病気・怪我等の初診日がある事が条件となっています。Jさんが統合失調症を発症し、入院したのは学生時代であり、初診日は厚生年金の被保険者である期間ではありません。

選択肢3. 傷病手当金

〇 傷病手当金は、業務外の事由による病気・怪我等の療養のための休業であり、仕事に就く事が出来ない場合に支給される物です。健康保険法に基づく制度であり、条件に当てはまる制度と言えます。

選択肢4. 自立支援医療(精神通院医療)

✕ 自立支援医療(精神通院医療)は入院医療の費用は対象外であり、通院に関する医療が対象となる制度のため、入院中のJさんの経済的な不安の解消に繋がるとは言えません。また、自立支援医療は健康保険法に基づく制度ではないため、条件に当てはまる制度ではありません。

選択肢5. 一般求職者給付

✕ 一般求職者給付は、別名「失業保険」とも言われています。離職中の求職者が受給対象となる物であり、まだ会社に雇用されている状態のJさんは受給対象となりません。

参考になった数4

03

Jさんは、入院後間もなく落ち着きを取り戻しましたが、経済的な不安をL精神保健福祉士に訴えています。L精神保健福祉士はある制度の利用を提案しますが、その制度について「給与が出なくなる」「健康保険法に基づく制度」という言葉を手掛かりに解答していきましょう。

また、正答の制度以外にも、Jさんの経済的な負担を軽くする制度があります。あわせて学習するようにしましょう。

選択肢1. 障害基礎年金

適切ではありません。障害基礎年金は健康保険法に基づく制度ではありません。国民年金法等をその根拠としています。

選択肢2. 障害厚生年金

適切ではありません。障害厚生年金は健康保険法に基づく制度ではありません。厚生年金保険法等をその根拠にしています。

選択肢3. 傷病手当金

適切です。傷病手当金とは、被保険者が業務外の事由による療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間(上限1年6か月)、支給される金銭です。健康保険法にもとづく制度です。

選択肢4. 自立支援医療(精神通院医療)

適切ではありません。自立支援医療(精神通院医療)は健康保険法に基づく制度ではありません。障害者総合支援法等をその根拠にしています。

選択肢5. 一般求職者給付

適切ではありません。一般求職者給付とは、雇用保険の失業等給付の一つで、失業した労働者に対して行われる給付を指します。雇用保険法上の制度です。

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