精神保健福祉士の過去問
第25回(令和4年度)
精神保健福祉に関する制度とサービス 問12

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問題

第25回(令和4年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉に関する制度とサービス 問12 (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
地元の中小企業で正社員として勤務するJさん(55歳、男性)は、学生時代に統合失調症を発症し、入院をした。退院後に、症状はほぼ消失したため、現在の会社に就職し、何度か再発の危機はあったが、その都度外来治療で乗り越えてきた。ある日、勤務中に、「誰かが自分の命を狙っている」「窓の外に誰かがいる」などの発言がみられるようになり、心配した勤務先の同僚に付き添われてY精神科病院を受診した。
Jさんは支離滅裂なことを言ったり、大きな声で叫んだことから、診察したK医師(精神保健指定医)は直ちに入院を必要とする状態と判断した。入院を勧めたが、Jさんは拒否したため、K医師は本人の意思によらない入院の手続を進めることとした。なお、Jさんの両親はすでに他界しており、兄弟等の親族もいない。(※1)
入院後間もなく、Jさんは徐々に落ち着きを取り戻した。ある日、Jさんは相談室のL精神保健福祉士に対して、「給与が出なくなり、経済的に不安だ」と訴えた。そこで、L精神保健福祉士は、Jさんに対して、健康保険法に基づく制度を紹介し、申請方法について説明した。その後のJさんは、この制度を利用できたことにより経済的な不安が解消し、退院後の自分の生活について考えられるようになった。(※2)
3か月後、JさんはY精神科病院を退院した。その後、外来時にJさんは相談室に寄りL精神保健福祉士に対し、「しばらくは働かずに、自宅で療養して過ごそうと思います。ただ、家に一人でいるのも不安があるので、誰かと話したり、趣味である絵を描いたりする場所が欲しいと思っています」と相談してきた。そこで、L精神保健福祉士は、「障害者総合支援法」において、創作的活動や生産活動の機会の提供、社会との交流の促進等を行うZセンターの紹介を検討した。(※3)
(注)「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

(※3)におけるZセンターに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
  • 市町村地域生活支援事業である。
  • 自立支援給付の介護給付である。
  • 自立支援給付の訓練等給付である。
  • 都道府県地域生活支援促進事業である。
  • 地域相談支援である。

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この過去問の解説 (3件)

01

退院後もJさんは「しばらくは働かずに、自宅で療養して過ごそうと思います。ただ、家に一人でいるのも不安があるので、誰かと話したり、趣味である絵を描いたりする場所が欲しいと思っています」と話しています。L精神保健福祉士は「障害者総合支援法」において、創作的活動や生産活動の機会の提供、社会との交流の促進等を行うZセンターの紹介を検討します。

「障害者総合支援法」「創作的活動や生産活動の機会の提供、社会との交流の促進等を行う」とのコメントから「地域活動支援センター」が頭に思い浮かびますが、「地域活動支援センター」が事業の分類としてどの事業に属しているか、問われています。

選択肢1. 市町村地域生活支援事業である。

適切です。「地域活動支援センター」は市町村の地域生活支援事業に該当します。市町村地域生活支援事業はほかに、成年後見制度利用支援、日常生活用具の給付・貸与、福祉ホーム、移動支援などが該当します。

選択肢2. 自立支援給付の介護給付である。

適切ではありません。介護給付には、居宅介護、同行支援、療養介護、短期入所、生活介護などが該当します。

選択肢3. 自立支援給付の訓練等給付である。

適切ではありません。訓練等給付には、自立訓練、就労移行、共同生活援助、就労継続施設などが該当します。

選択肢4. 都道府県地域生活支援促進事業である。

適切ではありません。都道府県地域生活支援促進事業としては、広域支援、専門性の高い人材の育成などが該当します。

選択肢5. 地域相談支援である。

適切ではありません。地域活動支援センターは、地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)を行う権能はありません。ただし、地域活動支援センターに相談支援事業所が併設されている場合も多々見受けられます。

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02

退院し自宅療養を行うJさんが、「誰かと話したり、趣味である絵を描いたりする場所が欲しい」とL精神保健福祉士に相談している場面です。L精神保健福祉士としては、問題に出てくるような制度に則った事業所の他に、インフォーマルな社会資源である地域の居場所等の情報も取得しておくことが求められます。

選択肢1. 市町村地域生活支援事業である。

適切です。事例の内容から地域生活支援事業の地域活動支援センターの紹介を検討していると読み取ることができます。

選択肢2. 自立支援給付の介護給付である。

不適切です。介護給付は、入浴や排泄等の介護が必要な方に給付されるため、Jさんには必要ないと考えられます。

選択肢3. 自立支援給付の訓練等給付である。

不適切です。訓練等給付は、生活能力の向上や就労の訓練が必要な方に給付されます。Jさんは「誰かと話したり、趣味である絵を描いたりする場所が欲しい」と話していますので、本人の意向に沿っていません。

選択肢4. 都道府県地域生活支援促進事業である。

不適切です。L精神保健福祉士は、具体的に「Zセンターの紹介を検討した」とあります。地域活動支援センターは市町村地域生活支援事業であるため、不適切です。

選択肢5. 地域相談支援である。

不適切です。問題では、「Zセンターに関する」とあり、L精神保健福祉士は、具体的に「Zセンターの紹介を検討した」とありますので、相談を行う地域相談支援ではないことがわかります。

参考になった数7

03

本設問に挙げられているZセンターは、障害者総合支援法第5条に定められている「地域活動支援センター」の事を指しています。

選択肢1. 市町村地域生活支援事業である。

〇 選択肢の通りです。地域活動支援センターは市町村地域生活支援事業です。

選択肢2. 自立支援給付の介護給付である。

✕ 自立支援給付の介護給付は、日常生活に必要な支援が位置付けられており、居宅介護や行動援護、施設入所支援などが挙げられます。地域活動支援センターは含まれません。

選択肢3. 自立支援給付の訓練等給付である。

✕ 自立支援給付の訓練等給付は、地域で生活するために一定の訓練を提供するサービスの事を言います。機能訓練や就労に関する支援などが挙げられますが、地域活動支援センターは含まれません。

選択肢4. 都道府県地域生活支援促進事業である。

✕ 地域活動支援センターの実施主体は市町村のため、都道府県地域生活支援促進事業ではありません。

選択肢5. 地域相談支援である。

✕ 地域相談支援は「地域移行支援」「地域定着支援」の二つです。Zセンターは地域活動支援センターであり、それらの事業を行う目的の事業所ではありません。

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