精神保健福祉士 過去問
第26回(令和5年度)
問87 (精神疾患とその治療 問4)
問題文
Aさん(74歳、女性)は、2年前に母親が亡くなった頃からふさぎ込むようになり、物忘れが徐々に目立ってきた。物忘れは、ついさっきのことを忘れることが多く、本人の物忘れへの自覚は乏しかった。数ヵ月前から、「お母さんが来ているでしょう」と夜中に何度も夫を起こすようになった。昼間は比較的しっかりしているが、時折、「誰かが財布を盗んだ」と訴えて、険しい表情になることがある。次のうち、Aさんに疑われる診断名として、適切なものを1つ選びなさい。
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問題
精神保健福祉士国家試験 第26回(令和5年度) 問87(精神疾患とその治療 問4) (訂正依頼・報告はこちら)
Aさん(74歳、女性)は、2年前に母親が亡くなった頃からふさぎ込むようになり、物忘れが徐々に目立ってきた。物忘れは、ついさっきのことを忘れることが多く、本人の物忘れへの自覚は乏しかった。数ヵ月前から、「お母さんが来ているでしょう」と夜中に何度も夫を起こすようになった。昼間は比較的しっかりしているが、時折、「誰かが財布を盗んだ」と訴えて、険しい表情になることがある。次のうち、Aさんに疑われる診断名として、適切なものを1つ選びなさい。
- 全般性不安症
- 認知症
- うつ病
- 統合失調症
- 妄想症
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この過去問の解説 (2件)
01
本設問では、Aさんが発症している症状に着目し、答えを導き出す必要があります。
✕ 全般性不安症とは、毎日の生活の中で漠然とした不安や心配を慢性的に持ち続ける病気の事を言います。全般性不安症は、常に不安を感じる事で落ち着きが無くなったり、集中力が低下するなどの症状が見られますが、本事例ではそのような症状が見られないため、不適切です。
〇 認知症とは、一度正常に発達した知能が脳の障害により低下し、日常生活に支障をきたすようになった状態の事を言います。
認知症の症状として、記憶障害や失見当・妄想などもあり、その自覚症状も乏しいです。Aさんの症状に当てはまるため、適切な内容と言えます。
✕ うつ病は、日常生活に支障が出る程の気分の落ち込みや、意欲の低下などが見られる病気です。
Aさんは母親が亡くなった事をきっかけに、気分の落ち込みが見られるようになり、記憶障害や物盗られ妄想が出現しています。うつ病では気分の落ち込みや記憶障害の発生、妄想の出現も見られますが、うつ病による妄想は心気妄想・罪業妄想・貧困妄想などであり、本設問の妄想とは異なります。
よって、本選択肢は不適切です。
✕ 統合失調症は、幻覚や妄想が出現する事が特徴の病気です。統合失調症では陰性症状(感情鈍麻・意欲の欠如等)と陽性症状(妄想・幻覚等)が現れ、寛解と増悪を繰り返す事が多く、発症する年齢も10~20代が大半です。
Aさんは70代であり、症状の繰り返しも見られない事から、統合失調症ではないと考えられます。
✕ 妄想症とは、1か月以上続く妄想の存在と、その他の精神症状が無いという事が診断の基準となります。
Aさんは妄想の他に記憶障害も見られるため、診断基準と合致しません。よって、妄想症ではないと考えられます。
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02
選択肢に掲げられている疾患・状態について、どういった特徴があるのか、整理して理解するようにしましょう。
適切ではありません。
全般性不安症(全般性不安障害)は、漠然とした不安が持続的に見られるという特徴を持つ疾患です。
緊張・神経の亢進・疲労・集中困難・心の空白・易怒性・睡眠障害などの症状があらわれる場合があります。
Aさんの症状である物忘れは、全般性不安症の特徴的な症状とされていません。
適切です。
認知症は、脳の病気・障害などの原因によって認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態をいいます。
Aさんの
・「物忘れが徐々に目立つ」「本人の物忘れへの自覚は乏しい」 → 記憶障害
・体験全体を忘れる物忘れ
・「夜中に何度も夫を起こす」 → 睡眠障害
・「誰かが財布を盗んだ」 → 物盗られ妄想
は、認知症を疑うに十分な資料となります。
適切ではありません。
うつ病は、一般に
・身体の不調として、睡眠障害、疲労感・けん怠感、首・肩のこり、頭が重い、頭痛など
・心の不調として、意欲・興味の減退、仕事能力の低下、抑うつ気分、不安など
の症状をともないます。
Aさんの記憶障害、物盗られ妄想などは、うつ病の特徴的な症状とはされていません。
適切ではありません。
統合失調症は
・陽性症状として幻覚、妄想、精神運動興奮、昏迷など
・陰性症状として抑うつ、無気力、倦怠感、感情の平板化など
が表れる疾患です。
Aさんの記憶障害、物盗られ妄想などは、統合失調症の特徴的な症状とはされていません。
適切ではありません。
妄想症(妄想性障害)の症状の特徴的な部分は、明確で現実離れした妄想が存在することです。
また、妄想以外では、生活の困難さや奇異さは目立たないとされています。
Aさんの妄想は、現実離れした妄想と評価することはできず、またAさんには生活の困難さが予想されることから、Aさんの症状を妄想症と疑うことに十分な材料がありません。
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