精神保健福祉士 過去問
第26回(令和5年度)
問113 (精神保健福祉相談援助の基盤 問10)

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問題

精神保健福祉士国家試験 第26回(令和5年度) 問113(精神保健福祉相談援助の基盤 問10) (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、(※1)の活動を表すものとして、適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
L精神保健福祉士は、精神障害者を主な利用者とする就労継続支援B型事業所で働いている。作業が終わると利用者数人が集まり、人付き合いや生活上の困りごと、夢や願いなど様々なことを互いに話し合っていた。その話し合いの場は徐々に広がりを見せ、他の事業所の利用者も加わるようになっていった。L精神保健福祉士は、その活動の代表となったMさんから話し合いの場所について相談を受け、公民館を紹介した。しばらくの間、L精神保健福祉士が会場予約を代わりにしていたが、Mさんたちは集まる時間や回数、ルールなどを決め、会場予約を含めて自分たちで運営するようになっていった。そして自分たちの活動に「α」と名前を付けた。(※1)
ある日、L精神保健福祉士は、市の社会福祉協議会のA社会福祉士から「精神障害への理解と関わり」をテーマに市民を対象とした研修会の講師を依頼された。研修会でL精神保健福祉士は、精神疾患の発症頻度や症状、リカバリーの考え方などについて講義した。受講者からは、「精神疾患について初めて学ぶ機会を得た」「町内に障害者の事業所があるが、ほとんど交流がない」などの感想が述べられた。そこでL精神保健福祉士とA社会福祉士は、精神障害についての理解が地域ではなかなか得られにくく、見えない壁があると考え、次は当事者にも講師を担当してもらい研修会を企画しようと話し合った。L精神保健福祉士が「α」のメンバーに相談したところ、自分たちの経験を発信する機会にしたいと賛同が得られた。「α」のメンバーとL精神保健福祉士は、地域への発信の内容や方法をそれぞれの立場から学び合い、皆で考え準備を進めた。(※2)
半年後に「α」のメンバーが講師に加わった新たな研修会を開いた。研修会後、受講者から、「同じ地域社会の中で共に生活している人だと感じた」「一緒に町内のイベントなど何かをやれそうに思う、やってみたい」などの感想が寄せられた。(※3)
  • 当事者研究
  • リカバリーカレッジ
  • セルフヘルプグループ
  • 元気回復行動プラン
  • ソーシャルファーム

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この過去問の解説 (2件)

01

本設問では、当事者同士が集まり行っている活動内容について問われています。選択肢の単語の意味を知識として持っておく事が必要となります。

選択肢1. 当事者研究

✕ 当事者研究とは、当事者が自分で感じている生きづらさについて、自分自身で研究を行い、自分を助ける方法について理解したり、その方法を創造したりする事を言います。

本事例では、自分自身の困りごとをお互いに話していますが、その対処方法について自分自身で研究しているという描写はないため、当事者研究には当てはまりません。

選択肢2. リカバリーカレッジ

✕ リカバリーカレッジは、当事者や家族、専門職などに関わらず、全ての人が同じように主体的にリカバリーについて学ぶ事を言います。リカバリーカレッジでは参加者が固定の役割を担う事が無く、皆で学び合う事が基本となります。

本事例では、お互いの事を話してはいますが、学び合いの場としての機能は持っていませんので、適切ではありません。

選択肢3. セルフヘルプグループ

〇 セルフヘルプグループとは、自助グループなどとも呼ばれます。自助グループは、同じ状況に置かれている人同士が、お互いの事を支援しあう事を目的に行われる活動を言います。

本事例の活動に当てはまる内容であり、適切な選択肢です。

選択肢4. 元気回復行動プラン

✕ 元気回復行動プランとは、毎日を自分らしく元気に過ごすために作成されるプランの事を言います。調子が優れない時のために、自分で出来る対処方法を仲間と一緒にあらかじめ作成しておき、まとめておく事も含まれます。

本事例では、当事者が自分達の事を話し合い、お互いを支え合う場として運営しており、元気回復行動プランとは異なります。

選択肢5. ソーシャルファーム

✕ ソーシャルファームとは、就労困難な人を雇用し、他の従業員と一緒に働く場を作り、事業収入を主な財源として運営する企業の事を言います。

本事例の活動は、企業の形を取っているものではなく、人を雇用している訳でもないため、不適切です。

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02

各用語の意義を整理し事例にあてはめながら検討するようにしましょう。

選択肢1. 当事者研究

適切ではありません。

 

当事者研究とは

「障害、依存症、貧困、被災、子育て、介護など、さまざまな困難を抱えた当事者が、その困難の解釈や対処を専門家に丸投げするのではなく自ら引き受けるべき研究対象としてとらえなおし仲間とともに、経験を言語化し、困難の解釈や対処法を探求する取り組み」

と捉えられています。

 

北海道浦河町の「べてるの家」で取り組みがはじまり、各地に広まっていったとされます。

 

事例の活動は、自らを研究対象として対処法などを検討するなどの性質が見られません。

選択肢2. リカバリーカレッジ

適切ではありません。

 

リカバリーカレッジとは、2000年頃から英国において行われるようになった精神保健福祉プログラムです。

 

リカバリーの考え方を教育的アプローチによって当事者に伝達することを特徴としています。

 

事例の活動の性質とは異なるものと考えられます。

選択肢3. セルフヘルプグループ

適切です。

 

セルフヘルプグループとは

・障害や困難、悩みを抱えた人が同様の問題を抱えている個人や家族とともに当事者同士の自発的なつながりで結びついた集団

・専門家にグループの運営をゆだねず、あくまで当事者の主体性を大切に活動を行う

などをその特徴とします。

 

事例の活動の特徴と合致すると考えます。

選択肢4. 元気回復行動プラン

適切ではありません。

 

元気回復行動プラン(WRAP)は、アメリカのコープランド博士によって考案されたプログラムです。

・つらい感情・行動を観察し、対処方法を作成、その対処方法を通して、不快な感情を軽減・改善・解消するための構造化されたシステム

・長年にわたって精神疾患を抱えている当事者が、日常生活をよりよく送ることができるように開発

などの特徴をもっています。

 

事例の活動の成り立ちや内容は、構造化されたシステムに基づくものとは評価できません。

選択肢5. ソーシャルファーム

適切ではありません。

 

ソーシャルファームとは

・障害者など通常の労働市場では就労の機会が得にくい人びとが対象

・そうした人々に仕事の場を創出することを目的

とした社会的企業とされます。

 

事例の活動は、ソーシャルファームとは評価できません。

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