精神保健福祉士 過去問
第26回(令和5年度)
問115 (精神保健福祉相談援助の基盤 問12)

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問題

精神保健福祉士試験 第26回(令和5年度) 問115(精神保健福祉相談援助の基盤 問12) (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、(※3)について、L精神保健福祉士の一連の関わりの背景にある理念として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
L精神保健福祉士は、精神障害者を主な利用者とする就労継続支援B型事業所で働いている。作業が終わると利用者数人が集まり、人付き合いや生活上の困りごと、夢や願いなど様々なことを互いに話し合っていた。その話し合いの場は徐々に広がりを見せ、他の事業所の利用者も加わるようになっていった。L精神保健福祉士は、その活動の代表となったMさんから話し合いの場所について相談を受け、公民館を紹介した。しばらくの間、L精神保健福祉士が会場予約を代わりにしていたが、Mさんたちは集まる時間や回数、ルールなどを決め、会場予約を含めて自分たちで運営するようになっていった。そして自分たちの活動に「α」と名前を付けた。(※1)
ある日、L精神保健福祉士は、市の社会福祉協議会のA社会福祉士から「精神障害への理解と関わり」をテーマに市民を対象とした研修会の講師を依頼された。研修会でL精神保健福祉士は、精神疾患の発症頻度や症状、リカバリーの考え方などについて講義した。受講者からは、「精神疾患について初めて学ぶ機会を得た」「町内に障害者の事業所があるが、ほとんど交流がない」などの感想が述べられた。そこでL精神保健福祉士とA社会福祉士は、精神障害についての理解が地域ではなかなか得られにくく、見えない壁があると考え、次は当事者にも講師を担当してもらい研修会を企画しようと話し合った。L精神保健福祉士が「α」のメンバーに相談したところ、自分たちの経験を発信する機会にしたいと賛同が得られた。「α」のメンバーとL精神保健福祉士は、地域への発信の内容や方法をそれぞれの立場から学び合い、皆で考え準備を進めた。(※2)
半年後に「α」のメンバーが講師に加わった新たな研修会を開いた。研修会後、受講者から、「同じ地域社会の中で共に生活している人だと感じた」「一緒に町内のイベントなど何かをやれそうに思う、やってみたい」などの感想が寄せられた。(※3)
  • ソーシャルインクルージョンの実現
  • メインストリーミングの保障
  • インテグレーションの確立
  • バリアフリーの推進
  • アクセシビリティの向上

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この過去問の解説 (3件)

01

本設問では、各選択肢に挙げられている単語の意味を正確に理解する事で正答にたどりつく事が出来ます。

選択肢1. ソーシャルインクルージョンの実現

〇 ソーシャルインクルージョンの実現とは、全ての人が孤独になったり孤立したりせず、社会から排除されずに健康で文化的な生活を送れる世界の実現を目指す事を言います。

本設問では、研修の参加者から「同じ地域社会の中で共に生活している人だと感じた」という言葉が聞かれており、ソーシャルインクルージョンの実現という理念に基づいた活動であり、その結果も得られていると言えます。

選択肢2. メインストリーミングの保障

✕ メインストリーミングの保障とは、障害がある人と障害が無い人を分離せず、なるべく同じ教育を受けられるように合流させようとする事を言います。本設問においては、メインストリーミングの保障という理念に基づいた活動を行っている訳ではないため、適切な内容とは言えません。

選択肢3. インテグレーションの確立

✕ インテグレーションには「異なる物の統合」という意味があります。選択肢に挙げられているインテグレーションの確立とは、障害を持つ人と障害が無い人を分けずに同じ場所で活動が出来るよう支援する事を言います。

本設問においては「α」のメンバーが講師として加わり、当事者として地域住民に自分達の思いなどを伝える事が出来ていますが、その行動はインテグレーションの確立という理念を背景とした行動とは言えません。

選択肢4. バリアフリーの推進

〇 バリアフリーとは、社会に参加する上で障壁となるものを排除する事を言います。障壁とは物理的なものだけを指すのではなく、社会的・制度的・心理的なもの全てを指します。

本設問では、L精神保健福祉士は「精神障害についての理解が地域ではなかなか得られにくく、見えない壁がある」と考えているため、それを解消しようと働きかけています。この行動はバリアフリーの理念に基づいていると言えます。

選択肢5. アクセシビリティの向上

✕ アクセシビリティとは、どんな人も必要な情報に簡単にたどりつけ、その情報を活用できる状態の事を言います。

本設問におけるL精神保健福祉士の活動で、アクセシビリティを意識した活動は見られていません。

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02

精神保健福祉士は、常にソーシャルワークの価値と理念を意識して、業務にあたることが求められています。

 

・個人としての尊厳

・自己決定・自己実現

・社会的復権

・権利擁護

・ウェルビーイング

・ノーマライゼーション

・ソーシャルインクルージョン

 

などの理念とその内容などを理解しておくようにしましょう。

選択肢1. ソーシャルインクルージョンの実現

適切です。

 


ソーシャルインクルージョンは、社会的包摂とも訳され、「すべての人が社会の一員として尊重され、自分らしく生きることができる環境を整えること」を指します。

 

受講者の「同じ地域社会の中で共に生活している人だと感じた」との発言は、上記の理念の体現であると考えられます。

 

 

 

選択肢2. メインストリーミングの保障

適切ではありません。

 

「メインストリーミングの保障」とは、社会の主流に属さない者(障害者、マイノリティ、生活困窮者など)が社会的活動に参加できるようになるさまざまな取り組みの実行と理解できます。

 

L精神保健福祉士、A社会福祉士、「α」のメンバーの関係性・行動が当初より「主流」「非主流」といった区別があるというよりは、対等性が感じられるので、この選択肢は「不適切」としました。

選択肢3. インテグレーションの確立

適切ではありません。

 

「インテグレーションの確立」とは、多様な人々が制度・文化に組み込まれていく過程を意味するとされ、インクリューションより、実践的な段階(社会制度の確立、文化の融合など)を指すとされています。

 

L精神保健福祉士、A社会福祉士、「α」のメンバーの活動は、制度の確立を目的としているよりも、協働することを目的としているように感じられるため、この選択肢は「不適切」としました。

選択肢4. バリアフリーの推進

適切です。

 

「バリアフリーの推進」とは、さまざまなバリア・障壁(物理的・制度的・情緒的・意識的など)をなくし、すべての人が平等にアクセスできる状態を推進することと理解できます。

 

L精神保健福祉士とA社会福祉士は、「精神障害についての理解が地域ではなかなか得られにくく、見えない壁があると考えた」との記述があることから、「情緒的・意識的なバリア」をなくすことが行動の主眼にあったものと思われます。

選択肢5. アクセシビリティの向上

適切ではありません。

 

「アクセシビリティの向上」は、すべての人がサービス・情報に平等にアクセスできる状態を目指すものです。

 

「α」のメンバーの方々は、すでに自身らの当事者活動を通じて、サービス・情報にある程度アクセスできる状態にあると推察されます。

 

また、研修会は、「α」のメンバー自身も研修会の講師になるなど、支援者と当事者が対等な立場で協働しているものと思います。

 

そうしたことから、「アクセシビリティの向上」を企図しているとは考えられません。

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03

研修会後の感想から、どのような効果があったかを問われています。感想の内容を読み取ることと、選択肢の用語の意味を理解しておくことが求められます。

選択肢1. ソーシャルインクルージョンの実現

適切です。ソーシャルインクルージョンは、社会的包摂を意味します。事例に「受講者から『同じ地域社会の中で共に生活している人だと感じた』」とあることから、適切です。

選択肢2. メインストリーミングの保障

不適切です。事例から、そのような内容を読み取ることはできません。

選択肢3. インテグレーションの確立

不適切です。インテグレーションとは、障害を持つ方が地域生活を送ることができるよう支援することを意味します。事例から、そのような内容を読み取ることはできません。

選択肢4. バリアフリーの推進

適切です。研修会前は、「見えない壁があると考え」られていましたが、研修会後は「一緒に町内のイベントなど何かをやれそうに思う」といった感想が出ていたことから、適切であると考えられます。

選択肢5. アクセシビリティの向上

不適切です。アクセシビリティとは、サービス等の利用のしやすさを意味します。事例から、そのような内容を読み取ることはできません。

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