精神保健福祉士 過去問
第27回(令和6年度)
問110 (精神保健福祉の原理 問8)
問題文
〔事例〕
会社を定年退職したAさん(60代後半)は、昨年妻を事故で亡くし、一人息子(30代)と二人で暮らしている。息子は仕事でのトラブル等が重なり、自宅にひきこもって3年になる。Aさんは息子を一度強く叱責し拒絶されてからは話し掛けることもできなくなり、息子を心配しながら一人で家事を担い、日々を過ごしていた。最近Aさんは生活の中で年齢を感じることが増え、自分に何かあったら息子はどうなるだろうとの思いから、県のホームページで見付けたひきこもり地域支援センター(以下「センター」という。)に電話をかけた。息子とうまく関係を築けず拒絶されているように感じること、3年もひきこもっている息子の将来についての心配などをAさんはしっかりした口調で話した。電話を受けたB精神保健福祉士はその話を傾聴し、Aさんをねぎらい、センターとして関わりたいことを伝え、情報を整理した。(※1)
センターの対応に安堵(あんど)したAさんは、B精神保健福祉士とであれば息子のことについて進展を得られるように感じ、時折センターに出向くようになった。そのうちAさんは、いつまでこの状態が続くのか、自分の息子だけなぜこうなのかなど、悩みを具体的に語るようになった。そこでB精神保健福祉士は、センターで行われている「ひきこもり家族の会」(以下「家族会」という。)への参加をAさんに勧めた。(※2)
家族会に参加したAさんは、そこでの学びからセンターに行った感想を添えたメッセージや「名刺の人が話をしてみたいそうだ」とB精神保健福祉士の名刺を添えたセンターのチラシを台所のテーブルに置くようになった。息子はそれらを夜中に台所で読んでいるようだった。ある日、B精神保健福祉士のところに電話がかかってきた。B精神保健福祉士は、その名前からAさんの息子からであることに気付いた。Aさんの息子は、仕事も続かず、職場でも家でも誰ともうまくやれないこと、学生時代もそうだったことなどを語った。(※3)
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問題
精神保健福祉士試験 第27回(令和6年度) 問110(精神保健福祉の原理 問8) (訂正依頼・報告はこちら)
〔事例〕
会社を定年退職したAさん(60代後半)は、昨年妻を事故で亡くし、一人息子(30代)と二人で暮らしている。息子は仕事でのトラブル等が重なり、自宅にひきこもって3年になる。Aさんは息子を一度強く叱責し拒絶されてからは話し掛けることもできなくなり、息子を心配しながら一人で家事を担い、日々を過ごしていた。最近Aさんは生活の中で年齢を感じることが増え、自分に何かあったら息子はどうなるだろうとの思いから、県のホームページで見付けたひきこもり地域支援センター(以下「センター」という。)に電話をかけた。息子とうまく関係を築けず拒絶されているように感じること、3年もひきこもっている息子の将来についての心配などをAさんはしっかりした口調で話した。電話を受けたB精神保健福祉士はその話を傾聴し、Aさんをねぎらい、センターとして関わりたいことを伝え、情報を整理した。(※1)
センターの対応に安堵(あんど)したAさんは、B精神保健福祉士とであれば息子のことについて進展を得られるように感じ、時折センターに出向くようになった。そのうちAさんは、いつまでこの状態が続くのか、自分の息子だけなぜこうなのかなど、悩みを具体的に語るようになった。そこでB精神保健福祉士は、センターで行われている「ひきこもり家族の会」(以下「家族会」という。)への参加をAさんに勧めた。(※2)
家族会に参加したAさんは、そこでの学びからセンターに行った感想を添えたメッセージや「名刺の人が話をしてみたいそうだ」とB精神保健福祉士の名刺を添えたセンターのチラシを台所のテーブルに置くようになった。息子はそれらを夜中に台所で読んでいるようだった。ある日、B精神保健福祉士のところに電話がかかってきた。B精神保健福祉士は、その名前からAさんの息子からであることに気付いた。Aさんの息子は、仕事も続かず、職場でも家でも誰ともうまくやれないこと、学生時代もそうだったことなどを語った。(※3)
- 体験を共有する場を提供するため。
- グリーフケアのため。
- 若者支援の社会活動に参加してもらうため。
- コミュニケーション能力を高めるため。
- 家族会のファシリテーターになってもらうため。
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この過去問の解説 (2件)
01
息子の引きこもりを含めた悩みについて、B精神保健福祉士に相談するにつれ、Aさん自身の安心感をやや得られてきた段階です。
その安心感を維持し、将来に対する展望をもっていただくためにも、ひきこもり支援センターの精神保健福祉士としてどのようなことが提案できるか、問われています。
適切です。
同じような体験を持つ他の家族と交流することによって、相互の支え合いや情報交換のきっかけをつかめるチャンスにもなり得ます。
また、家族の会を通しての学び、あるいは他の家族との連携がAさんに必要と判断したものと思われます。
適切ではありません。
息子のひきこもりについて、Aさんはネガティブな感情をもっていることと推測されます。
ですが、「人が亡くなる」ほどの悲嘆を感じているようには事例中からは読み解けません。
あくまで、息子のひきこもりについて、解決の糸口を探そうとしているAさんに必要なのは、グリーフケアではありません。
適切ではありません。
家族の会では、若者支援の社会活動に参加することも、考えられなくはないですが、あくまで他の家族との情報交換、交流、連携などを意図しているものと思われます。
適切ではありません。
Aさん自身のコミュニケーションの問題で、息子のひきこもりが発生、継続しているとは思えません。
Aさんの悩みなどを、他の家族との交流や学びと通して、少しずつ解決の糸口を見つけるために勧めたものと判断できます。
適切ではありません。
Aさん自身は、ようやく引きこもり支援センターの相談につながった状態です。
「家族会のファシリテーターになる」は時期早々と考えます。
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02
Aさんは、息子のひきこもりに関して「いつまでこの状態が続くのか、自分の息子だけなぜこうなのか」といった具体的な悩みを語り始めています。
これは、ひきこもり問題を抱える家族にとって共通の悩みであり、Aさんには同じような経験を持つ他者との交流が必要になると考えられます。
◯
Aさんは、「自分の息子だけなぜこうなのか」と落胆と孤独感に苛まれている状態です。
「ひきこもり家族の会」では、このような同じ経験を持つ家族が集まり、それぞれの体験や悩み、アプローチの方法について率直に語り合い、情報交換を行うとともに、孤独感の解消を目指すものです。
Aさんにとって最も必要な支援であると考えられます。
✕
グリーフとは「悲嘆」のことで、昨年妻をなくしているAさんにとって悲しみを抱えている可能性はありますが、今回Aさんが参加するのは「ひきこもり家族の会」であり、妻をなくしたグリーフケアを目的とはしていません。
息子のひきこもりに関する悩みの解消が最優先です。
✕
ひきこもり家族の会への参加は、Aさん自身の抱える問題を解決し、孤独感を軽減させることです。
Aさんを若者支援の社会活動に参加させることは、設問の中に記載がありません。
✕
Aさんは一度、息子を強く叱責し、拒絶されたとあり、コミュニケーション能力の向上が必要と考えるかもしれませんが、B精神保健福祉士に対して、しっかりとした口調で自身の悩みを説明できていることから、コミュニケーションにおける大きな問題を抱えているとは考えにくいです。
引きこもり家族の会への参加は、同じ悩みを持つもの同士で情報交換やノウハウを得られる機会でもありますが、何より最優先なのは、Aさんの孤独を理解し、分かち合うことになります。
✕
ファシリテーターとは、会の進行役や議論の調整役であり、特定のスキルや経験が必要です。
Aさんが家族会に参加する理由は、Aさんと同じ悩みを持つ人々同士で、孤独を理解し、分かち合うことです。
いきなりファシリテーターになってもらうのは現実的ではありません。
まずは参加者として、自身の課題解決に焦点を当てることが優先されます。
Aさんが抱える「いつまで続くのか」「なぜ自分の息子だけ」といった悩みは、ひきこもり問題に直面する多くの家族が共通して抱える感情です。
このような状況において、「ひきこもり家族の会」は、同じような体験を持つもの同士が互いの経験を共有し、支え合うために開かれた場です。
B精神保健福祉士がAさんに家族会の参加を勧めた理由は、そのような体験を共有する機会の提供にあると考えられます。
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