精神保健福祉士 過去問
第27回(令和6年度)
問111 (精神保健福祉の原理 問9)

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問題

精神保健福祉士試験 第27回(令和6年度) 問111(精神保健福祉の原理 問9) (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで、(※3)の段階でB精神保健福祉士が考えた関わりの内容として、適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕
会社を定年退職したAさん(60代後半)は、昨年妻を事故で亡くし、一人息子(30代)と二人で暮らしている。息子は仕事でのトラブル等が重なり、自宅にひきこもって3年になる。Aさんは息子を一度強く叱責し拒絶されてからは話し掛けることもできなくなり、息子を心配しながら一人で家事を担い、日々を過ごしていた。最近Aさんは生活の中で年齢を感じることが増え、自分に何かあったら息子はどうなるだろうとの思いから、県のホームページで見付けたひきこもり地域支援センター(以下「センター」という。)に電話をかけた。息子とうまく関係を築けず拒絶されているように感じること、3年もひきこもっている息子の将来についての心配などをAさんはしっかりした口調で話した。電話を受けたB精神保健福祉士はその話を傾聴し、Aさんをねぎらい、センターとして関わりたいことを伝え、情報を整理した。(※1)
センターの対応に安堵(あんど)したAさんは、B精神保健福祉士とであれば息子のことについて進展を得られるように感じ、時折センターに出向くようになった。そのうちAさんは、いつまでこの状態が続くのか、自分の息子だけなぜこうなのかなど、悩みを具体的に語るようになった。そこでB精神保健福祉士は、センターで行われている「ひきこもり家族の会」(以下「家族会」という。)への参加をAさんに勧めた。(※2)
家族会に参加したAさんは、そこでの学びからセンターに行った感想を添えたメッセージや「名刺の人が話をしてみたいそうだ」とB精神保健福祉士の名刺を添えたセンターのチラシを台所のテーブルに置くようになった。息子はそれらを夜中に台所で読んでいるようだった。ある日、B精神保健福祉士のところに電話がかかってきた。B精神保健福祉士は、その名前からAさんの息子からであることに気付いた。Aさんの息子は、仕事も続かず、職場でも家でも誰ともうまくやれないこと、学生時代もそうだったことなどを語った。(※3)
  • ひきこもり対応として、外出する場面を設定する。
  • 社会的な役割を得るために、当事者の会の立ち上げを促す。
  • 就労支援を始めるために、職業評価を受けるよう提案する。
  • 父親に自分の気持ちを伝えるために、社会生活技能訓練(SST)を行う。
  • 支援者として関係を築くために、無知の姿勢をとる。

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この過去問の解説 (2件)

01

家族会に参加したAさんの作戦が功を奏し

Aさんの息子さんが引きこもり支援センターに興味をもった場面です。

 

まずは、Aさんの息子さんの視点で、どのような思いで引きこもり支援センターに電話をかけたのか、困っていることはないか、など丁寧にききとる必要があります。

選択肢1. ひきこもり対応として、外出する場面を設定する。

適切ではありません。

 

Aさんの作戦が奏功したこともあり、Aさんの息子さんとB精神保健福祉士が初めてコンタクトをとった場面です。

 

Aさんからの息子さんについての情報は十分といえても、息子さん自身が提供する情報はまだ十分とはいえません。

 

Aさんの息子さんが話すこともベースに加え、じっくりアセスメントをとる段階と言え、

 

外出の対応を設定するのは時期尚早と判断できます。

選択肢2. 社会的な役割を得るために、当事者の会の立ち上げを促す。

適切ではありません。

 

Aさんの作戦が奏功したこともあり、Aさんの息子さんとB精神保健福祉士が初めてコンタクトをとった場面です。

 

Aさんからの息子さんについての情報は十分といえても、息子さん自身が提供する情報はまだ十分とはいえません。

 

Aさんの息子さんが話すこともベースに加え、じっくりアセスメントをとる段階と言え、

 

社会的な役割を得るために、当事者の会の立ち上げを促す。」と提案するのは時期尚早です。

選択肢3. 就労支援を始めるために、職業評価を受けるよう提案する。

適切ではありません。

 

Aさんの作戦が奏功したこともあり、Aさんの息子さんとB精神保健福祉士が初めてコンタクトをとった場面です。

 

Aさんからの息子さんについての情報は十分といえても、息子さん自身が提供する情報はまだ十分とはいえません。

 

Aさんの息子さんが話すこともベースに加え、じっくりアセスメントをとる段階と言え、

 

就労支援を始めるために、職業評価を受けるよう提案する。」のは時期尚早です。

 

選択肢4. 父親に自分の気持ちを伝えるために、社会生活技能訓練(SST)を行う。

適切ではありません。

 

Aさんの作戦が奏功したこともあり、Aさんの息子さんとB精神保健福祉士が初めてコンタクトをとった場面です。

 

Aさんからの息子さんについての情報は十分といえても、息子さん自身が提供する情報はまだ十分とはいえません。

 

Aさんの息子さんが話すこともベースに加え、じっくりアセスメントをとる段階と言え、

 

父親に自分の気持ちを伝えるために、社会生活技能訓練(SST)を行う。」のは時期尚早です。

選択肢5. 支援者として関係を築くために、無知の姿勢をとる。

適切です。

 

Aさんの作戦が奏功したこともあり、Aさんの息子さんとB精神保健福祉士が初めてコンタクトをとった場面です。

 

Aさんからの息子さんについての情報は十分といえても、息子さん自身が提供する情報はまだ十分とはいえません。

 

Aさんの息子さんが話すこともベースに加え、じっくりアセスメントをとる段階と言えます。

 

さらに、B精神保健福祉士は、Aさんからすでに情報提供を受けていることであっても、息子さん自身をクライアントとしてクライアントの語る言葉の内容をしっかりと受け止める必要があります。

 

「すでにお父さんからうかがっています」などと、息子さんの発言を遮らずに、息子さんの話に傾聴すべきです。

 

 

 

 

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02

この問題では、息子が自らB精神保健福祉士に電話をかけてきた時の、B精神保健福祉士の対応が問われています。

非常にデリケートな局面であり、関わり方を間違えると、支援のミスにつながるかもしれません。

専門職として正しい立ち位置での対応が求められています。

選択肢1. ひきこもり対応として、外出する場面を設定する。

外出はひきこもりからの回復における重要なステップですが、まだ介入の初期段階であるため、性急に行うべきものではありません。

息子はまだ自らの困難を語り始めたばかりであり、信頼関係が十分に構築されていない時に具体的な行動を促すことは、かえって抵抗感を強め、支援から遠ざかってしまう可能性があります。

選択肢2. 社会的な役割を得るために、当事者の会の立ち上げを促す。

当事者の会自体は息子に有効な支援ですが、今はまだ、息子との関係構築の初期段階です。

すぐに社会的な役割を求めたり、会の立ち上げを提案するのは不適切です。

選択肢3. 就労支援を始めるために、職業評価を受けるよう提案する。

息子は仕事が続かないことでひきこもりになっているため、今すぐに就労支援を始めるのは息子にとって大きなプレッシャーになると考えられます。

現段階でB精神保健福祉士に求められるのは、息子の話をじっくりと傾聴し、状況の把握とともに、つらい気持ちを共有し、信頼関係を構築することです。

具体的な支援はその後からになります。

選択肢4. 父親に自分の気持ちを伝えるために、社会生活技能訓練(SST)を行う。

SSTは息子にとっても有効なスキル訓練ですが、息子が自ら「父親に自分の気持ちを伝えたい」と意欲を示した段階で提案されるべきものです。

意欲がない時に、無理に気持ちを述べさせたり、訓練を勧めたりするのは、息子との信頼関係を崩してしまう可能性があります。

選択肢5. 支援者として関係を築くために、無知の姿勢をとる。

息子が自ら電話をかけてきたのは大きな一歩ですが、何もかもを知っているという態度で、意見や助言を一方的に行うのは、信頼関係を築くうえでマイナスに働きます。

まずは支援者として、息子との信頼関係を築くために「無知の姿勢」で注意深く傾聴することが大切です。

感情の反映などの傾聴技法を駆使して、息子の話に深く共感し、「自分のことを理解しようとしてくれている」と感じさせることが優先されます。

まとめ

息子は過去の経験から、他者との関係構築に強い不安や抵抗があることが推測されます。

その息子が自ら電話をかけてきたのは貴重な機会ですが、焦って行動を促したり、助言したりするのは控え、息子の話をしっかりと傾聴し、信頼関係を丁寧に築いていくことが大切です。

そのために、支援者は「無知の姿勢」で対応することも必要になります。

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