精神保健福祉士 過去問
第27回(令和6年度)
問118 (ソーシャルワークの理論と方法(専門) 問7)
問題文
〔事例〕
Aさん(53歳、男性)は、35歳の時「誰かが自分の悪口を言っている」と訴えたことから、両親に付き添われてB精神科病院を受診した。そこで統合失調症と診断され、1年間入院した。退院後は両親と暮らしながら治療を続けた。その間に父親が亡くなり、49歳の時に母親が認知症を発症し、Aさんが母親の世話をすることになった。50歳の時にAさんは介護のストレスから病状が悪化し「自分の悪口がテレビで流れている」と夜中に大声を出してテレビを自宅前に放り出し、近所を巻き込む騒ぎとなり、今回の入院となった。Aさんの入院後、母親は民生委員から見守り支援を受けていたが、高齢者施設へ入所した。入院から1年経過した後、病棟担当になったC精神保健福祉士は、前任者から「Aさんは退院可能だが、退院に消極的」と引継ぎを受け、Aさんと面談をした。Aさんは「不都合なこともないし、このままでいい。自宅は誰も居ないし、一人暮らしは経験がないし、人と話すのは苦手だから無理」と話した。(※1)
C精神保健福祉士は、地域移行支援を利用して退院したDさんをAさんに紹介し、体験談を話してもらった。Dさんとの交流が半年ほど続き、Aさんは「自分も退院できるかな」とC精神保健福祉士に話した。そこで、C精神保健福祉士はAさんを地域移行支援の利用につなげ、指定一般相談支援事業所のE精神保健福祉士が支援を開始した。E精神保健福祉士は、初回面談でAさんから退院への期待や不安などの揺れ動く気持ちを聞いた。それを踏まえ、Aさんに対して支援を行った。(※2)
AさんはE精神保健福祉士とグループホームを見学したが、ほかの入居者との交流に負担を感じたため、自宅への退院も考え始めた。E精神保健福祉士と共に数度自宅へ外出をした後、1人で外泊した。外泊後、E精神保健福祉士と面談したAさんは「家の中は何とかなるかもしれない。でも、近所に迷惑を掛けたので、近所の目が怖い。本当は買物にも行きたいのだけど」と話した。(※3)
その後、Aさんは退院し、障害福祉サービスを利用して一人暮らしを続けている。
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問題
精神保健福祉士試験 第27回(令和6年度) 問118(ソーシャルワークの理論と方法(専門) 問7) (訂正依頼・報告はこちら)
〔事例〕
Aさん(53歳、男性)は、35歳の時「誰かが自分の悪口を言っている」と訴えたことから、両親に付き添われてB精神科病院を受診した。そこで統合失調症と診断され、1年間入院した。退院後は両親と暮らしながら治療を続けた。その間に父親が亡くなり、49歳の時に母親が認知症を発症し、Aさんが母親の世話をすることになった。50歳の時にAさんは介護のストレスから病状が悪化し「自分の悪口がテレビで流れている」と夜中に大声を出してテレビを自宅前に放り出し、近所を巻き込む騒ぎとなり、今回の入院となった。Aさんの入院後、母親は民生委員から見守り支援を受けていたが、高齢者施設へ入所した。入院から1年経過した後、病棟担当になったC精神保健福祉士は、前任者から「Aさんは退院可能だが、退院に消極的」と引継ぎを受け、Aさんと面談をした。Aさんは「不都合なこともないし、このままでいい。自宅は誰も居ないし、一人暮らしは経験がないし、人と話すのは苦手だから無理」と話した。(※1)
C精神保健福祉士は、地域移行支援を利用して退院したDさんをAさんに紹介し、体験談を話してもらった。Dさんとの交流が半年ほど続き、Aさんは「自分も退院できるかな」とC精神保健福祉士に話した。そこで、C精神保健福祉士はAさんを地域移行支援の利用につなげ、指定一般相談支援事業所のE精神保健福祉士が支援を開始した。E精神保健福祉士は、初回面談でAさんから退院への期待や不安などの揺れ動く気持ちを聞いた。それを踏まえ、Aさんに対して支援を行った。(※2)
AさんはE精神保健福祉士とグループホームを見学したが、ほかの入居者との交流に負担を感じたため、自宅への退院も考え始めた。E精神保健福祉士と共に数度自宅へ外出をした後、1人で外泊した。外泊後、E精神保健福祉士と面談したAさんは「家の中は何とかなるかもしれない。でも、近所に迷惑を掛けたので、近所の目が怖い。本当は買物にも行きたいのだけど」と話した。(※3)
その後、Aさんは退院し、障害福祉サービスを利用して一人暮らしを続けている。
- 「不都合がないなら、今のままでも悪くはないですね」
- 「では、退院先をグループホームにしましょう」
- 「退院後の生活を考えると、不安を感じるのですね」
- 「まだ50代だから、退院を諦めてはいけませんよ」
- 「退院して、あなたはどこで誰と暮らしていますか」
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この過去問の解説 (2件)
01
まずは、Aさんの状況を整理してみましょう。
・18年前に統合失調症を発症
・1年間の入院の後、自宅両親と生活を続ける
・父の他界後、4年前に母が認知症を発症
・統合失調症の症状が憎悪し、2度目の入院(現在1年ほど経過)
・母は高齢者施設に入所
・C精神保健福祉士は、前任者から「Aさんは退院可能」と引継ぎを受ける
・Aさん自身は退院について、一人暮らしの寂しさ、不安、他者との交流の不安を口にし消極的
これらの状況をもとに
C精神保健福祉士の適切な声掛けを検討していきます。
適切ではありません。
「不都合がないなら、今のままでも悪くはないですね」との声かけは、Aさんの発言を受けてのものですが
Aさんの不安に対して、きっちりと受け止めた発言とはとらえられません。
Aさんの不安の先にある本心、本当の気持ちにうまくリーチすることができていません。
適切ではありません。
「では、退院先をグループホームにしましょう」は
Aさんの「一人暮らしは不安」との発言を受けてのものですが
Aさんの不安に対して、きっちりと受け止めた発言とはとらえられません。
Aさんの不安の先にある本心、本当の気持ちにうまくリーチすることができていません。
適切です。
Aさんの不安に寄り添い、話を傾聴し、実際のところ、退院についてどのように考えているのか
協働作業で解決策を見出す必要があります。
適切ではありません。
「まだ50代だから、退院を諦めてはいけませんよ」とは
Aさんの不安について、寄り添った発言ではありません。
葛藤の奥にある本心、本当の気持ちにうまくリーチすることができません。
適切ではありません。
事例の状況から、Aさんには葛藤が見られるのではないかと思われます。
「退院して、あなたはどこで誰と暮らしていますか」との声かけは
そうした葛藤の先にある本心、本当の気持ちにうまくリーチすることができないと考えます。
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02
この問題では、C精神保健福祉士が退院に消極的なAさんに対し、初回面談でどのような言葉をかけるのが適切かを問われています。
Aさんは「不都合なこともないし、このままでいい。自宅は誰も居ないし、一人暮らしは経験がないし、人と話すのは苦手だから無理」と、退院への不安を示しています。
このような状況では、援助者がクライエントの言葉をどのように受け止め、次のステップへつなげるかがポイントになります。
性急に解決策を提示したり、退院を促したりするのではなく、まずはその気持ちを受容し、共感を示すことが大切です。
✕
この返答は、Aさんの退院への消極的な姿勢を追認する形になり、今後のAさんの可能性を閉ざしてしまうことにもつながります。
Aさんが退院に消極的である理由を確認することなく、退院の可能性をなくし、現状維持を目標と結論づけてしまうのは不適切です。
✕
これは、Aさんの意向を十分に確認せずに、援助者側が一方的に解決策を提示しているように見えます。
まだ初回面談であり、この段階で具体的な退院先を決定しようとすることは時期尚早であり、Aさんの抵抗感をさらに強めてしまう恐れがあるため不適切です。
◯
Aさんの「不都合なこともないし、このままでいい。自宅は誰も居ないし、一人暮らしは経験がないし、人と話すのは苦手だから無理」という言葉には、退院後の生活に対する漠然とした不安や、具体的な困難への懸念が込められています。
C精神保健福祉士がこの不安を的確に捉え、言語化して返すことで、Aさんは「自分の気持ちを理解してもらえた」と感じ、安心感を得ることにつながります。
これは、傾聴技法の一つである感情の反映であり、クライエントの主体性を尊重して、自己探索を促す上で非常に重要な返答といえます。
✕
この返答では、Aさんの気持ちを否定し、 退院を強制しようとしているように感じられます。
一見、「諦めてはいけない」と励ましているように見えますが、援助者側の「退院するべき」との一方的な意見をクライエントに押し付けることは、かえって信頼関係を損ね、退院への意欲を下げることにもつながるでしょう。
✕
この返答は、退院に消極的なAさんの発言を無視し、勝手に話を進めようとしています。
この段階では、Aさんの気持ちを汲み取ることが優先されるため、設問の選択肢としては不適切です。
最も適切なのは、クライエントの言葉の背景にある不安や抵抗といった感情を言語化し、受容することです。
これにより、クライエントは安心して自身の気持ちを率直に語れるようになり、信頼関係が構築され、その後の具体的な支援へとつながっていきます。
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