精神保健福祉士 過去問
第27回(令和6年度)
問120 (ソーシャルワークの理論と方法(専門) 問9)
問題文
〔事例〕
Aさん(53歳、男性)は、35歳の時「誰かが自分の悪口を言っている」と訴えたことから、両親に付き添われてB精神科病院を受診した。そこで統合失調症と診断され、1年間入院した。退院後は両親と暮らしながら治療を続けた。その間に父親が亡くなり、49歳の時に母親が認知症を発症し、Aさんが母親の世話をすることになった。50歳の時にAさんは介護のストレスから病状が悪化し「自分の悪口がテレビで流れている」と夜中に大声を出してテレビを自宅前に放り出し、近所を巻き込む騒ぎとなり、今回の入院となった。Aさんの入院後、母親は民生委員から見守り支援を受けていたが、高齢者施設へ入所した。入院から1年経過した後、病棟担当になったC精神保健福祉士は、前任者から「Aさんは退院可能だが、退院に消極的」と引継ぎを受け、Aさんと面談をした。Aさんは「不都合なこともないし、このままでいい。自宅は誰も居ないし、一人暮らしは経験がないし、人と話すのは苦手だから無理」と話した。(※1)
C精神保健福祉士は、地域移行支援を利用して退院したDさんをAさんに紹介し、体験談を話してもらった。Dさんとの交流が半年ほど続き、Aさんは「自分も退院できるかな」とC精神保健福祉士に話した。そこで、C精神保健福祉士はAさんを地域移行支援の利用につなげ、指定一般相談支援事業所のE精神保健福祉士が支援を開始した。E精神保健福祉士は、初回面談でAさんから退院への期待や不安などの揺れ動く気持ちを聞いた。それを踏まえ、Aさんに対して支援を行った。(※2)
AさんはE精神保健福祉士とグループホームを見学したが、ほかの入居者との交流に負担を感じたため、自宅への退院も考え始めた。E精神保健福祉士と共に数度自宅へ外出をした後、1人で外泊した。外泊後、E精神保健福祉士と面談したAさんは「家の中は何とかなるかもしれない。でも、近所に迷惑を掛けたので、近所の目が怖い。本当は買物にも行きたいのだけど」と話した。(※3)
その後、Aさんは退院し、障害福祉サービスを利用して一人暮らしを続けている。
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問題
精神保健福祉士試験 第27回(令和6年度) 問120(ソーシャルワークの理論と方法(専門) 問9) (訂正依頼・報告はこちら)
〔事例〕
Aさん(53歳、男性)は、35歳の時「誰かが自分の悪口を言っている」と訴えたことから、両親に付き添われてB精神科病院を受診した。そこで統合失調症と診断され、1年間入院した。退院後は両親と暮らしながら治療を続けた。その間に父親が亡くなり、49歳の時に母親が認知症を発症し、Aさんが母親の世話をすることになった。50歳の時にAさんは介護のストレスから病状が悪化し「自分の悪口がテレビで流れている」と夜中に大声を出してテレビを自宅前に放り出し、近所を巻き込む騒ぎとなり、今回の入院となった。Aさんの入院後、母親は民生委員から見守り支援を受けていたが、高齢者施設へ入所した。入院から1年経過した後、病棟担当になったC精神保健福祉士は、前任者から「Aさんは退院可能だが、退院に消極的」と引継ぎを受け、Aさんと面談をした。Aさんは「不都合なこともないし、このままでいい。自宅は誰も居ないし、一人暮らしは経験がないし、人と話すのは苦手だから無理」と話した。(※1)
C精神保健福祉士は、地域移行支援を利用して退院したDさんをAさんに紹介し、体験談を話してもらった。Dさんとの交流が半年ほど続き、Aさんは「自分も退院できるかな」とC精神保健福祉士に話した。そこで、C精神保健福祉士はAさんを地域移行支援の利用につなげ、指定一般相談支援事業所のE精神保健福祉士が支援を開始した。E精神保健福祉士は、初回面談でAさんから退院への期待や不安などの揺れ動く気持ちを聞いた。それを踏まえ、Aさんに対して支援を行った。(※2)
AさんはE精神保健福祉士とグループホームを見学したが、ほかの入居者との交流に負担を感じたため、自宅への退院も考え始めた。E精神保健福祉士と共に数度自宅へ外出をした後、1人で外泊した。外泊後、E精神保健福祉士と面談したAさんは「家の中は何とかなるかもしれない。でも、近所に迷惑を掛けたので、近所の目が怖い。本当は買物にも行きたいのだけど」と話した。(※3)
その後、Aさんは退院し、障害福祉サービスを利用して一人暮らしを続けている。
- 近所の目が怖くなくなってから退院することを提案する。
- Aさんが外泊する際、Dさんに付き添ってもらうよう調整する。
- 近所との関係修復を図るために、1軒ずつお詫(わ)びに回る。
- 次回の外泊時には外出しないで済むよう、必要な物をAさんと事前に準備する。
- Aさんと一緒に、民生委員に近所付き合いのサポートを依頼しに行く。
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この過去問の解説 (2件)
01
まずは、Aさんの状況を整理してみましょう。
・18年前に統合失調症を発症
・1年間の入院の後、自宅両親と生活を続ける
・父の他界後、4年前に母が認知症を発症
・統合失調症の症状が憎悪し、2度目の入院(現在1年ほど経過)
・母は高齢者施設に入所
・C精神保健福祉士は、前任者から「Aさんは退院可能」と引継ぎを受ける
・Aさん自身は退院について、一人暮らしの寂しさ、不安、他者との交流の不安を口にし消極的
・C精神保健福祉士は、当事者のDさんを紹介(Dさんは地域移行支援を利用)
・Dさんとの交流の後Aさんは地域移行支援の利用を決意
・E精神保健福祉士(指定一般相談支援事業所、地域移行担当)とのAさんとの初回面談実施
・グループホーム見学、Aさん「入居者との交流が負担」
・自宅への退院を検討
・自宅へ外泊体験
・Aさんは「近所に迷惑を掛けたので、近所の目が怖い。本当は買物にも行きたいのだけど」と不安をもらす。
これらの状況をもとに
E精神保健福祉士の適切な支援について検討していきます。
適切ではありません。
「近所の目が怖くなくなってから」との条件は、裏をかえせば、必要のない入院を継続させてしまう状況になりかねません。
適切ではありません。
Aさんの自宅での継続的な生活がテーマになっています。
一時的な外泊がテーマではありません。
適切ではありません。
Aさんの症状悪化で「近所に迷惑をかけた」のは事実ですが、Aさんの故意や過失によって迷惑をかけたわけではありません。
「1軒ずつお詫(わ)びに回る。」という行為は、あまりにAさんにとっては過酷に過ぎます。
「近所との関係修復」には、別の方法で時間をかけて行うべきことかと考えます。
適切ではありません。
Aさんの自宅での継続的な生活がテーマになっています。
一時的な外泊がテーマではありません。
適切です。
民生委員に過度な期待は禁物ですが、これまでの状況を適切な範囲でお伝えし、支援をお願いするのは、適切な支援と考えます。
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02
Aさんは「家の中は何とかなるかもしれない。でも、近所に迷惑を掛けたので、近所の目が怖い。本当は買物にも行きたいのだけど」と話しており、自宅での生活は可能だと感じつつも、近隣との関係や外出への不安を抱えていることがわかります。
E精神保健福祉士には、Aさんが近所付き合いを円滑に行えるようになるための支援を行う必要があります。
✕
クライエントの不安がなくなるまで退院を待つというアプローチは、退院時期をいたずらに引き延ばすことにもなりかねません。
クライエントを急かす必要はありませんが、不安を抱えながらも、具体的な行動を通じて段階的に克服していくことが自立を促す上で重要であるため、不適切です。
✕
Aさんが不安に感じているのは外出そのものではなく、近所付き合いが難しいことによる近所の目です。
誰かが付き添うことで外出自体は可能になっても、Aさんが抱えている問題の根本原因の解決には至りません。
そのため、回答としては不適切です。
✕
Aさんの近所付き合いを困難にしている原因は過去のトラブルですが、1軒ずつお詫びに回るのはAさん自身の心理的負担も大きく、おすすめできません。
Aさんの抱えている不安を受け止め、より負担の少ない形で地域との関係性を再構築する方法を検討するべきと考えられるため、回答としては不適切です。
✕
Aさんは「買い物に行きたい」と外出への意欲を示していますが、この選択肢では外出そのものを避けさせることになり、外出の機会を奪うことになります。
不安はあっても、少しずつできることを増やしていくための支援がE精神保健福祉士には求められます。
◯
Aさんは過去のトラブルにより、「近所の目が怖い」と感じています。
この不安を解消し、地域での生活を円滑にするためには、地域住民との関係の再構築や地域でのサポート体制の確立が必要です。
民生委員は、地域住民と行政・福祉サービスをつなぐ役割を担っており、Aさんが地域で孤立せず、安心して暮らすための支援を提供できます。
これによってAさんは地域生活のための具体的な支援を得ることができ、将来的には地域での安定した生活が可能になると考えられます。
Aさんに必要な支援は、不安を軽減しつつ、地域住民との関係を再構築するためのサポートです。
外出そのものをなくしたり、誰かに付き添ってもらって対応することは、根本原因の解決にはつながりません。
地域における重要な支援者である民生委員に協力を依頼することで、自宅で暮らすAさんの安心感を高め、安定した地域生活につながると考えられます。
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