社会保険労務士の過去問
第53回(令和3年度)
労働基準法及び労働安全衛生法 問4

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問題

社労士試験 第53回(令和3年度) 択一式 労働基準法及び労働安全衛生法 問4 (訂正依頼・報告はこちら)

労働基準法第26条(以下本問において「本条」という。)に定める休業手当に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 本条は、債権者の責に帰すべき事由によって債務を履行することができない場合、債務者は反対給付を受ける権利を失わないとする民法の一般原則では労働者の生活保障について不十分である事実にかんがみ、強行法規で平均賃金の100分の60までを保障しようとする趣旨の規定であるが、賃金債権を全額確保しうる民法の規定を排除する点において、労働者にとって不利なものになっている。
  • 使用者が本条によって休業手当を支払わなければならないのは、使用者の責に帰すべき事由によって休業した日から休業した最終の日までであり、その期間における労働基準法第35条の休日及び労働協約、就業規則又は労働契約によって定められた同法第35条によらない休日を含むものと解されている。
  • 就業規則で「会社の業務の都合によって必要と認めたときは本人を休職扱いとすることがある」と規定し、更に当該休職者に対しその休職期間中の賃金は月額の2分の1を支給する旨規定することは違法ではないので、その規定に従って賃金を支給する限りにおいては、使用者に本条の休業手当の支払義務は生じない。
  • 親会社からのみ資材資金の供給を受けて事業を営む下請工場において、現下の経済情勢から親会社自体が経営難のため資材資金の獲得に支障を来し、下請工場が所要の供給を受けることができず、しかも他よりの獲得もできないため休業した場合、その事由は本条の「使用者の責に帰すべき事由」とはならない。
  • 新規学卒者のいわゆる採用内定について、就労の始期が確定し、一定の事由による解約権を留保した労働契約が成立したとみられる場合、企業の都合によって就業の始期を繰り下げる、いわゆる自宅待機の措置をとるときは、その繰り下げられた期間について、本条に定める休業手当を支給すべきものと解されている。

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この過去問の解説 (3件)

01

解説は以下のとおりです。

選択肢1. 本条は、債権者の責に帰すべき事由によって債務を履行することができない場合、債務者は反対給付を受ける権利を失わないとする民法の一般原則では労働者の生活保障について不十分である事実にかんがみ、強行法規で平均賃金の100分の60までを保障しようとする趣旨の規定であるが、賃金債権を全額確保しうる民法の規定を排除する点において、労働者にとって不利なものになっている。

本条は、債権者の責に帰すべき事由によって債務を履行することができない場合、債務者は反対給付を受ける権利を失わないとする民法の一般原則では労働者の生活保障について不十分である事実にかんがみ、強行法規で平均賃金の100分の60までを保障しようとする趣旨の規定であるが、賃金債権を全額確保しうる民法の規定を排除する点において、労働者にとって不利なものになっている。

使用者の故意過失などにより使用者の責任で就業ができなかった場合、労働者は反対給付としての賃金の請求権を失わない(民法536)。しかし、使用者の故意過失とはまでは言えない状況で就労ができなくなった場合は賃金請求権は発生しない。そのような事態に備えて労働基準法26条で休業手当の定めをしておき、使用者は労働者に対して平均賃金の6割以上の休業手当を支払うことにより労働者の生活を保護する趣旨です。

選択肢2. 使用者が本条によって休業手当を支払わなければならないのは、使用者の責に帰すべき事由によって休業した日から休業した最終の日までであり、その期間における労働基準法第35条の休日及び労働協約、就業規則又は労働契約によって定められた同法第35条によらない休日を含むものと解されている。

休業手当の支払義務は労働者が労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日には生じない(S24.3.22基収4077)。

使用者が本条によって休業手当を支払わなければならないのは、使用者の責に帰すべき事由によって休業した日から休業した最終の日までであり、その期間における労働基準法第35条の休日及び労働協約、就業規則又は労働契約によって定められた同法第35条によらない休日を含むものと解されている。

選択肢3. 就業規則で「会社の業務の都合によって必要と認めたときは本人を休職扱いとすることがある」と規定し、更に当該休職者に対しその休職期間中の賃金は月額の2分の1を支給する旨規定することは違法ではないので、その規定に従って賃金を支給する限りにおいては、使用者に本条の休業手当の支払義務は生じない。

使用者の責に帰すべき事由による休業に対しては法第 26 条により平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければなら ない。従って「会社の業務の都合」が使用者の責に帰すべき事由による休業に該当する場合において、賃金規則に右に満たない額の 賃金を支給することを規定しても無効である(23.7.12 基発 1031)。

就業規則で「会社の業務の都合によって必要と認めたときは本人を休職扱いとすることがある」と規定し、更に当該休職者に対しその休職期間中の賃金は月額の2分の1を支給する旨規定することは違法ではないので、その規定に従って賃金を支給する限りにおいては、使用者に本条の休業手当の支払義務は生じない。

選択肢4. 親会社からのみ資材資金の供給を受けて事業を営む下請工場において、現下の経済情勢から親会社自体が経営難のため資材資金の獲得に支障を来し、下請工場が所要の供給を受けることができず、しかも他よりの獲得もできないため休業した場合、その事由は本条の「使用者の責に帰すべき事由」とはならない。

一 労働基準法二六条の「使用者の責に帰すべき事由」は、民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55183

使用者の責めに帰すべき事由による休業(休業手当を支払義務がああり)

①親工場の経営難

②新卒採用の就労時期の繰下げ、自宅待機

③違法で無効な即時解雇

①に相当する。

選択肢5. 新規学卒者のいわゆる採用内定について、就労の始期が確定し、一定の事由による解約権を留保した労働契約が成立したとみられる場合、企業の都合によって就業の始期を繰り下げる、いわゆる自宅待機の措置をとるときは、その繰り下げられた期間について、本条に定める休業手当を支給すべきものと解されている。

一 労働基準法二六条の「使用者の責に帰すべき事由」は、民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む。

①親工場の経営難

②新卒採用の就労時期の繰下げ、自宅待機

③違法で無効な即時解雇

②に相当する。

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02

解答:「新規学卒者のいわゆる採用内定について・・・」が正解です。

選択肢1. 本条は、債権者の責に帰すべき事由によって債務を履行することができない場合、債務者は反対給付を受ける権利を失わないとする民法の一般原則では労働者の生活保障について不十分である事実にかんがみ、強行法規で平均賃金の100分の60までを保障しようとする趣旨の規定であるが、賃金債権を全額確保しうる民法の規定を排除する点において、労働者にとって不利なものになっている。

×

債権者(使用者)の責に帰すべき事由によって債務を履行することができない場合、債務者(労働者)は反対給付(賃金)を受ける権利を失わないこととなるが、

民法だけで賃金の支払いを確実に履行させるには不十分と考えられるので、強行法規である労働基準法で平均賃金の100分の60までを確実に保障させる事で、労働者の生活を保護しています。

賃金債権を全額確保しうる民法の規定を排除する規定ではありません。

選択肢2. 使用者が本条によって休業手当を支払わなければならないのは、使用者の責に帰すべき事由によって休業した日から休業した最終の日までであり、その期間における労働基準法第35条の休日及び労働協約、就業規則又は労働契約によって定められた同法第35条によらない休日を含むものと解されている。

×

休業手当を支払わなければならないのは、「労働の義務がある日」であって労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日は含みません。

選択肢3. 就業規則で「会社の業務の都合によって必要と認めたときは本人を休職扱いとすることがある」と規定し、更に当該休職者に対しその休職期間中の賃金は月額の2分の1を支給する旨規定することは違法ではないので、その規定に従って賃金を支給する限りにおいては、使用者に本条の休業手当の支払義務は生じない。

× 

休業手当の支払いは労働基準法で平均賃金の100分の60までが保障されており、会社の業務の都合によって休ませる場合は、平均賃金の100分の60の支払が必要となります。

選択肢4. 親会社からのみ資材資金の供給を受けて事業を営む下請工場において、現下の経済情勢から親会社自体が経営難のため資材資金の獲得に支障を来し、下請工場が所要の供給を受けることができず、しかも他よりの獲得もできないため休業した場合、その事由は本条の「使用者の責に帰すべき事由」とはならない。

×

親会社が経営難のため資材資金の獲得に支障が出て休業した場合は、「使用者の責に帰すべき事由」に該当します。

選択肢5. 新規学卒者のいわゆる採用内定について、就労の始期が確定し、一定の事由による解約権を留保した労働契約が成立したとみられる場合、企業の都合によって就業の始期を繰り下げる、いわゆる自宅待機の措置をとるときは、その繰り下げられた期間について、本条に定める休業手当を支給すべきものと解されている。

企業の都合によって就業の始期を繰り下げる自宅待機は「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するので休業手当の支給対象となります。

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03

1 誤りです。

強行法規で平均賃金の100分の60までを保障しているので、不利ではないとされています。

2 誤りです。

法定休日、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日は含みません。

3 誤りです。 

規定にかかわらず、休業に関しては平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければなりません。

4 誤りです。

本旨についても「使用者の責に帰すべき事由」に該当します。

5 設問のとおり正しいです。

新規学卒者のいわゆる採用内定について、就労の始期が確定し、一定の事由による解約権を留保した労働契約が成立したとみられる場合、企業の都合によって就業の始期を繰り下げる、いわゆる自宅待機の措置をとるときは、その繰り下げられた期間について、本条に定める休業手当を支給すべきものと解されています。

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