社会保険労務士の過去問
第53回(令和3年度)
労働基準法及び労働安全衛生法 問3
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問題
社労士試験 第53回(令和3年度) 択一式 労働基準法及び労働安全衛生法 問3 (訂正依頼・報告はこちら)
労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア 使用者は、退職手当の支払については、現金の保管、持ち運び等に伴う危険を回避するため、労働者の同意を得なくても、当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができるほか、銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手を当該労働者に交付することによることができる。
イ 賃金を通貨以外のもので支払うことができる旨の労働協約の定めがある場合には、当該労働協約の適用を受けない労働者を含め当該事業場のすべての労働者について、賃金を通貨以外のもので支払うことができる。
ウ 使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することに、労働者がその自由な意思に基づき同意した場合においては、「右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定〔労働基準法第24条第1項のいわゆる賃金全額払の原則〕に違反するものとはいえないものと解するのが相当である」が、「右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。
エ 労働基準法第24条第1項の禁止するところではないと解するのが相当と解される「許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。
オ 労働基準法第25条により労働者が非常時払を請求しうる事由には、「労働者の収入によつて生計を維持する者」の出産、疾病、災害も含まれるが、「労働者の収入によつて生計を維持する者」とは、労働者が扶養の義務を負っている親族のみに限らず、労働者の収入で生計を営む者であれば、親族でなく同居人であっても差し支えない。
ア 使用者は、退職手当の支払については、現金の保管、持ち運び等に伴う危険を回避するため、労働者の同意を得なくても、当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができるほか、銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手を当該労働者に交付することによることができる。
イ 賃金を通貨以外のもので支払うことができる旨の労働協約の定めがある場合には、当該労働協約の適用を受けない労働者を含め当該事業場のすべての労働者について、賃金を通貨以外のもので支払うことができる。
ウ 使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することに、労働者がその自由な意思に基づき同意した場合においては、「右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定〔労働基準法第24条第1項のいわゆる賃金全額払の原則〕に違反するものとはいえないものと解するのが相当である」が、「右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。
エ 労働基準法第24条第1項の禁止するところではないと解するのが相当と解される「許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。
オ 労働基準法第25条により労働者が非常時払を請求しうる事由には、「労働者の収入によつて生計を維持する者」の出産、疾病、災害も含まれるが、「労働者の収入によつて生計を維持する者」とは、労働者が扶養の義務を負っている親族のみに限らず、労働者の収入で生計を営む者であれば、親族でなく同居人であっても差し支えない。
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この過去問の解説 (3件)
01
ア.誤
使用者は、退職手当の支払については、現金の保管、持ち運び等に伴う危険を回避するため、労働者の同意を得なくても、当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができるほか、銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手を当該労働者に交付することによることができる。
労働者の同意が必要となります。通貨以外のもので賃金を支払うことができる場合として以下ががあります。
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
第七条の二
使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について次の方法によることができる。
一 当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込み
イ.誤
賃金を通貨以外のもので支払うことができる旨の労働協約の定めがある場合には、当該労働協約の適用を受けない労働者を含め当該事業場のすべての労働者について、賃金を通貨以外のもので支払うことができる。
本問では労働協約の原則を問うものです。労働協約の効果は、当該協約の適用を受ける労働者に限られます。
労働組合法第17条において、「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。」とされています。
労働協約は原則として、労働協約の締結当事者である使用者並びに労働組合及びその構成員のみに適用されるものですが、本条は、労働協約が所定の要件を満たす場合には、その労働者側の適用範囲を協約の当事者以外の者にも拡張するというものです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/roudoukumiai/index_00004.html
ウ.正
「合理的な理由が客観的に存在する」はキーワードになります。以下が参照できます。平成2年11月26日最高裁判例
(中略)使用者が労働者に対して有する債権と労働者の賃金債権とを相殺することについて、労働者が自由な意思に基づいて同意した場合、この同意に基づく相殺は全額払い原則に反するものではない。これは、賃金債権の放棄に関する合意についても同様である(シンガー・ソーイング・メシーン・カムパニー事件 最二小判昭48.1.19 民集27-1-27)。もちろん、このような同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならない。
https://www.jil.go.jp/hanrei/conts/05/27.html
エ.正
合理的に接着した時期、労働者の経済生活の安定を脅かさない、はキーワードになります。
一、賃金過払による不当利得返還請求権を自働債権とし、その後に支払われる賃金の支払請求権を受働債権としてする相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、かつ、あらかじめ労働者に予告されるとかその額が多額にわたらない等労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのないものであるときは、労働基準法二四条一項の規定に違反しない。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51878
オ.正
労働基準法25条則9は以下です。労働者の収入により生計を維持する者であれば、親族ではなく同居人でも構いませんが、親族でも独立して生計を維持するものは含みません。
第九条 法第二十五条に規定する非常の場合は、次に掲げるものとする。
一 労働者の収入によつて生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合
二 労働者又はその収入によつて生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合
三 労働者又はその収入によつて生計を維持する者がやむを得ない事由により一週間以上にわたつて帰郷する場合
正解はウ、エ、オの三つです。
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02
解答:「 三つ(ウ・エ・オ)」が正解です。
ア ×
賃金(退職金)は、通貨で直接労働者に支払わなくてはなりません。
「労働者の同意を得た」場合は、銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手で交付することができます。
イ ×
賃金を通貨以外のもので支払うことができるのは、労働協約の適用を受ける労働者に限られます。
ウ 〇
使用者が一方的に労働者の賃金債権と相殺することは賃金の全額払いの原則違反として許されませんが、労働者がその自由な意思に基づいて相殺に同意をしたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときには、合意を得てした相殺は有効です。
エ 〇
過払賃金の清算のための調整的相殺は、下記の要件に該当する時は「全額払いの原則」違反には該当しません。
1.過払いのあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期
2.労働者にあらかじめ予告
3.その額が多額にわたらない
4.労働者の経済生活の安定を脅かす恐れがない
オ 〇
賃金の非常時払は、「労働者の収入で生計を営む者」であれば親族でなく同居人であっても該当します。
また、まだ労務提供のない期間に対する賃金は支払う義務はありません。
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03
ア 誤りです。
賃金(退職金)は、通貨で直接労働者に支払わなくてはなりませんが、労働者の同意を得た場合は、銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手で交付することができます。
イ 誤りです。
賃金を通貨以外のもので支払うことができるのは、労働協約の適用を受ける労働者のみに限られます。
ウ 記述のとおり正しいです。
使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することに、労働者がその自由な意思に基づき同意した場合においては、「右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定〔労働基準法第24条第1項のいわゆる賃金全額払の原則〕に違反するものとはいえないものと解するのが相当である」が、同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければなりません。
エ 記述のとおり正しいです。
労働基準法第24条第1項の禁止するところではないと解するのが相当と解される「許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない」とする。
オ 記述のとおり正しいです。
労働基準法第25条により労働者が非常時払を請求しうる事由には、「労働者の収入によつて生計を維持する者」の出産、疾病、災害も含まれるが、「労働者の収入によつて生計を維持する者」とは、労働者が扶養の義務を負っている親族のみに限らず、労働者の収入で生計を営む者であれば、親族でなく同居人であっても差し支えないとされています。
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