通関士の過去問
第53回(令和元年)
通関書類の作成要領その他通関手続の実務 問48

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問題

通関士試験 第53回(令和元年) 通関書類の作成要領その他通関手続の実務 問48 (訂正依頼・報告はこちら)

次の取引内容に係る輸入貨物の課税価格を計算し、その額をマークしなさい。

1  本邦の精密機器販売会社M(輸入者M)は、A国の精密機器加工会社X(輸出者X)との間で、Mが提供した材料(精密機器20台)をXがA国にあるXの工場において特殊加工し、当該特殊加工によってできた製品(特殊精密機器20台)をMが取得することを内容とする契約を締結し、Mは当該契約に基づき当該製品(特殊精密機器)を輸入する。
2  当該材料(精密機器)は、MがA国の精密機器製造業者Yから購入し、無償でXに提供するものとする。
3  Mは、当該特殊加工の対価としてXに3,000,000円を、当該材料(精密機器)の取得に要する費用としてYに1,500,000円を、Yから取得した当該材料(精密機器)をXに提供するために要した運賃として運送会社に50,000円をそれぞれ支払う。
4  Mは、当該特殊加工のために必要とされた技術を本邦において開発した開発者Zから1,000,000円で取得し、無償でXに提供するものとする。なお、Zが当該開発に要した費用は700,000円である。
5  Mは、上記費用とは別に当該製品(特殊精密機器)の輸入に関し、次に掲げる費用を負担する。
 イ  A国の輸出の際に税関手続に要した費用・・・・・・・・・・・・・・・19,000円
 ロ  輸出港において要したコンテナー・サービス・チャージ・・・・・・・・10,000円
 ハ  Xの工場から輸入港までの運送に要する運賃・・・・・・・・・・・・・150,000円
 ニ  輸入港からMの販売店までの運送に要する運賃・・・・・・・・・・・・52,000円
 ホ  Xの工場から輸入港までの運送に要する保険料・・・・・・・・・・・・27,000円
6  上記の者のいずれの間にも特殊関係はない。
  • 4755000
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  • 4757000
  • 4758000
  • 4760000

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は4,756,000円

【解説】

 関税定率法第4条第3項に、委託加工契約に関する記載があります。委託加工契約は通常の売買契約とは異なり輸入取引にはなりませんが、関税定率法の規定により輸入取引とみなすとされております。従って加工等の費用として支払われる価格とは別に、その含まれていない運賃や材料の費用を加えた価格が課税価格(関税を課する時の計算の基礎となる価格)となります。

1: 現実支払価格

(設問3)から現実支払価格(輸入者Mから輸出者Xに支払っている価格)は3,000,000円になります。・・・➀

2: 加算要素

(設問3) 関税定率法第4条第1項第3号イ及び同法施行令第1条の5第2項により、Xに無償提供した材料の取得費用及び当該材料の提供費用は加算になります。

1,500,000円+50,000円=1,550,000円・・・②

(設問5 イ)同法基本通達4-8(5)ロより、A国の輸出の際に税関手続きに要した費用は加算になります。19,000円・・・③

(設問5 ロ)同法基本通達4-8(5)ハより、輸出港において要したコンテナー・サービス・チャージは加算になります。10,000円・・・④

(設問5 ハ)同法第4条第1項第1号にXの工場から輸入港までの輸送に要する運賃は加算になります。150,000円・・・⑤

(設問5 ホ)同法第4条第1項第1号にXの工場から輸入港までの輸送に要する保険料は加算になります。27,000円・・・⑥

3: 非加算の費用

(設問4) 関税定率法第4条第1項第3号ニ及び同法施行令第1条の5第3項により、本邦で開発した技術及びその取得費用は、無償提供されていたとしても加算されることはありません。

(設問5 ロ)同法基本通達4-8(7)ハより、輸入港からMの販売店までの運送に要する運賃は非加算になります。

従って、課税価格は➀+②+③+④+⑤+⑥=4,756,000円

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02

輸入貨物の課税価格を計算する関税評価に関する問題です。

選択肢2. 4756000

現実支払価格

問3)

・3,000,000円

加算要素

問3)

・1,500,000円 輸入者Xに無償提供した材料の取得に要する費用 

・50,000円 Yから取得した当該材料をXに提供するために要した運賃 

問5)

・19,000円 イ, A国の輸出の際に税関手続に要した費用

・10,000円 ロ, 輸出港において要したコンテナー・サービス・チャージ

・150,000円 ハ, Xの工場から輸入港までの運送に要する運賃

・27,000円 ホ, Xの工場から輸入港までの運送に要する保険料

※ 特殊加工のために必要とされた技術を本邦において開発したことによる発生する開発費用は、加算されません。

※ 問5 二) 輸入港からMの販売店までの運送に要する運賃は、加算されません。

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03

本問は、委託加工貿易において材料を無償提供した場合の課税価格の求め方について問う問題です。

選択肢2. 4756000

正しい選択肢です。

 

1.  まず、現実支払価格3,000,000円です。

(Mにより特殊加工の対価としてXに対し支払われた金額、問題文3より)

 

2.   次に、本問に挙げられた各費用が加算要素に該当するか検討します。

 問題文3

 材料(精密機器)の取得に要する費用としてMがYに支払った1,500,000円

  →加算要素に該当

  輸入貨物に組み込まれている材料、部分品等(関税定率法4条1項3号イ)に該当

 

 取得した材料(精密機器)をXに提供するためにMが運送会社に支払った運賃50,000円

  →加算要素に該当

  輸入貨物に組み込まれている材料、部分品等(関税定率法4条1項3号イ)に該当

 

 問題文4

 特殊加工のために必要な技術を取得するため、Mが開発者Zに支払った1,000,000円

  →加算要素に該当しません

  関税定率法4条1項3号柱書の「当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により無償で又は値引きをして直接又は間接に提供された物品又は役務」に要する費用ではありますが、「技術、設計その他当該輸入貨物の生産に関する役務で政令で定めるもの」(関税定率法4条1項3号ニ)は、「当該輸入貨物の生産のために必要とされた技術、設計、考案、工芸及び意匠であって本邦以外において開発されたもの」とされています(関税定率法施行令1条の5)。

 

 問題文5

 Mが負担したその他の費用

  イ A国の輸出の際に税関手続に要した費用 19,000円

  →加算要素に該当

 「その他当該運送に関連する費用」(関税定率法4条1項1号)に該当(関税定率法基本通達4-8(5)ロより)

 

  ロ 輸出港において要したコンテナー・サービス・チャージ 10,000円

  →加算要素に該当

 「その他当該運送に関連する費用」(関税定率法4条1項1号)に該当(関税定率法基本通達4-8(5)ハより)

 

  ハ Xの工場から輸入港までの運送に要する運賃 150,000円

  →加算要素に該当

 「当該輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃」(関税定率法4条1項1号)に該当

 

  ニ 輸入港からMの販売店までの運送に要する運賃 52,000円

  →加算要素に該当しない

 「輸入港までの運賃等は、次に掲げるような輸入貨物の輸入港到着後の運賃等を含まない」(関税定率法基本通達4-8(7)より)

                                                                               

  ホ Xの工場から輸入港までの運送に要する保険料 27,000円

  →加算要素に該当

 「輸入港に到着するまでの運送に要する(中略)保険料」(関税定率法4条1項1号)に該当

 

 以上より、加算要素に該当する費用の合計額は、

 1,500,000+50,000+19,000+10,000+150,000+27,000=1,756,000円

 

3. 課税価格は現実支払価格+加算要素に該当する費用の合計額なので、

 3,000,000+1,756,000=4,756,000円となります。

 

 

※課税価格は、原則として、「現実に支払われた又は支払われるべき価格」に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格(取引価格)とすることが規定されています(関税定率法4条1項柱書)。

そして、本問のように、本邦にある委託者から委託を受けた受託者が、委託者から提供された材料を外国において加工等して、委託者ができた製品を取得することを内容とする取引(委託加工契約)に基づき当該製品が本邦に到着することとなる場合について、

委託加工契約を輸入取引、当該委託者を買手、当該受託者を売手、当該加工等の対価として現実に支払われた又は支払われるべき額を輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格とみなすことが規定されています(関税定率法4条3項)。

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