中小企業診断士 過去問
令和元年度(2019年)
問139 (経営法務 問4)

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問題

中小企業診断士試験 令和元年度(2019年) 問139(経営法務 問4) (訂正依頼・報告はこちら)

Aは、X株式会社の代表取締役であったが、昨年(2018年)12月 30日に死亡した。Aには配偶者B、嫡出子C、D、Eがいる(下図参照)。

Aの遺産の額は 1億 4,000万円であり、配偶者Bには特別受益として 400 万円の生前贈与、子Eには特別受益として 200 万円の生前贈与があり、子Dには寄与分が 500 万円あった。この場合の相続分(取得額)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、相続人の中で、相続欠格者、相続廃除者、相続放棄者はおらず、また、遺産分割協議は成立していない。
問題文の画像
  • Bの相続分(取得額)は 6,650 万円となる。
  • Cの相続分(取得額)は 3,500 万円となる。
  • Dの相続分(取得額)は 2,350 万円となる。
  • Eの相続分(取得額)は 2,550 万円となる。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は1です。

相続における生前贈与とは、生存している個人から別の個人へ財産を渡すことです。
寄与分とは、共同相続人のうち、被相続人の財産の維持又は増加について特別の貢献をした相続人に、その貢献に応じ、法定相続分に寄与分を加えて財産を取得させる制度を指します。

相続における法定相続分は、配偶者1/2、子1/3となります。配偶者・子が対象となる本問の場合、配偶者1/2、子はそれぞれ残りの1/2×1/3で、1/6となります。
法定相続分についてまとめると、以下となります。
(1)配偶者と子供が相続人の場合、配偶者1/2 子(2人以上のときは全員で)1/2
(2)配偶者と直系尊属が相続人の場合、配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)
1/3 ※直系尊属は親
(3)配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合、配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)
1/4

相続分(取得額)の算出にあたっては、まず相続財産の基礎財産を算定し、法定相続分に分け、生前贈与分と寄与分を調整して、各相続人の金額を確定します。
基礎財産は、遺産に生前贈与分を足し戻し、寄与分を引いて算定します。
本問の基礎財産は、
1億4000万円+400万円(配偶者B)+200万円(子E)-500万(子D)=1億4100万円となります。
これを上記の法定相続分で計算すると、
配偶者Bは7050万円(1/2)、子はそれぞれ2350万円(1/6)ずつとなります。
最後に、生前贈与分は既に対象者に渡っているため差し引き、寄与分は加算します。
計算すると、配偶者Bは6650万円、子Cは2350万円、子Dは2850万円、子Eは2150万円となります。

1→上記より、正解です。

2→上記より、誤りです。

3→上記より、誤りです。

4→上記より、誤りです。

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02

【基礎知識】

問題の最後に「相続欠落者、相続廃除者、相続放棄者はおらず、遺産分割協議は成立していない」とあります。

これは、相続対象者で除外される人、権利がなくなっている人はいないし、遺産分割協議で相続人で相続してから皆で考えて分け合うということも成立していない、つまり、法定相続だけですという条件付けになります。

法定相続の対象となる人を整理します。

まず、どんなことがあっても相続権を持つのは、配偶者になります。相続の対象は配偶者がいる場合は、配偶者+以下の3順位までの高順位の対象となります。

第3順位までの対象は、優先順位の高い人がいなかった場合に次の順位に相続権が移ります。

第1順位:被相続人の子供。子供がいない場合はその直系卑属(被相続人の孫等)の一番世代の近いもの。

第2順位:被相続人の親。親がいない場合はその直系尊属で一番世代の近いもの。

第3順位:被相続人の兄弟姉妹。兄弟姉妹がいない場合はその直系卑属(甥、姪など)

相続の割合も以下のように決まっています。

配偶者+第1順位の場合 配偶者:1/2、第1順位の全員分:1/2

配偶者+第2順位の場合 配偶者:2/3、第2順位全員分:1/3

配偶者+第1順位の場合 配偶者:3/4、第3順位全員分:1/4

生前贈与とは、贈与対象分を被相続者が生きているうちに相続者に渡していくもので、税制上のメリット等を得れる場合があります。

110万円/年までは非課税で贈与することができます。

ただし、あまり定期的にすると税金がかかってしまうことや、被相続人が死亡する3年前までの分は死んだ後に税金がかかってきますので、注意が必要です。この生前贈与された分は、最終的に法定相続分としてカウントされます。

一方、寄与とは、相続人が特別な取り組みを行い(例えば相続財産を運用して増やした、親の面倒を外部に委託せずに一人で見たなど)、特別な貢献をした場合に渡される取り分であり、法定相続とは別の計算となります。通常遺産分割協議などで取りまとめられます。

【選択肢評価】正解はBが6,650万円の選択肢です。

まず、遺産額全体を計算します。

1億4,000万円+400万円(Bへの生前贈与)+200万円(Eへの生前贈与)-500万円(Dへの寄与分)=1億4,100万円 が遺産相続全体額となります。

法定相続では、配偶者+第1順位のパターンですので、Bの相続分は

1億4,100万円×1/2 = 7,050万円 となります。

よって、Bはすでにもらっている生前贈与を引くと、7,050万円―400万円で6,650万円となります。

第1順位はC、D、Eの3名になりますので、一人あたりは

7,050万円 ÷ 3 = 2,350万円 となります。よってCは2,350万円となります。

Eはすでに生前贈与されている分を除いて2,350万円-200万円=2,150万円となります。

Dは寄与分がありますので、2,350万円+500万円=2,850万円となります。

選択肢1. Bの相続分(取得額)は 6,650 万円となる。

正解です。

選択肢2. Cの相続分(取得額)は 3,500 万円となる。

上記説明より、不適切です。

選択肢3. Dの相続分(取得額)は 2,350 万円となる。

上記説明より、不適切です。

選択肢4. Eの相続分(取得額)は 2,550 万円となる。

上記説明より、不適切です。

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03

相続に関する問題です。

 

前年2018年に超難問の相続の問題が出題されました(詳細は、解説のまとめを参照してください)が、本問も生前贈与や寄与分のデータが与えられており、なかなか面倒な設定になっています。

 

生前贈与された額は、相続が発生すると法定相続額として考慮されます。(生前贈与された額を全体の遺産相続額に加えて、生前贈与を受けた法定相続人の相続額から差し引く)

 

寄与分とは、生前献身的に介護をしたなど、被相続人に対して特別な貢献をした相続人に金銭で報いることです。(寄与分については全体の遺産相続額から差し引き、寄与分の対象となる法定相続人の相続額に加えます)

生前贈与と寄与分では、加減算が全く逆となります。

 

全体の遺産相続額は、1億4,000万円にBへの生前贈与400万円とEへの生前贈与200万円を加え、Dへの寄与分500万円を差し引いた1億4,100万円となります。

 

以上を踏まえて、まずオーソドックスに配偶者Bから相続額を計算します。(配偶者が存在する場合、「配偶者は常に相続人となる」という原則があります)

 

配偶者B

1億4,100万円×0.5(2分の1)-生前贈与400万円より、6,650万円となります。

 

直系尊属C、D、E

3名いますので、残りの2分の1を3等分します。

1億4,100万円×0.5(配偶者Bを除いた、残りの2分の1)÷3より、各自2,350万円ずつ

 

ただし、Eについては生前贈与200万円を差し引き2,150万円

Dについては寄与分500万円を加えて2,850万円

Cは生前贈与も寄与分もないため、2,350万円のまま

となります。

選択肢1. Bの相続分(取得額)は 6,650 万円となる。

冒頭の解説より、Bの相続分(取得額)は6,650万円となるため正解の選択肢となります。

 

※相続の問題では、最初に配偶者の相続額から算出するため、本問ではいきなり正解ということになります。したがって、直系尊属C、D、Eについては計算不要になります。(生前贈与や寄与分について知識がないと不安になると思いますが、時間節約のためこの時点で次の問題に進んでください)

選択肢2. Cの相続分(取得額)は 3,500 万円となる。

冒頭の解説より、Cの相続分(取得額)は2,350万円となるため不適切な選択肢です。

 

生前贈与や寄与分の条件がない場合でも、この金額とは大きく乖離するため、検算しなくても誤りと推定できます。

選択肢3. Dの相続分(取得額)は 2,350 万円となる。

冒頭の解説より、Dの相続分(取得額)は寄与分500万円を加えて2,850万円となるため不適切な選択肢です。

選択肢4. Eの相続分(取得額)は 2,550 万円となる。

冒頭の解説より、Eの相続分(取得額)は生前贈与200万円を差し引き2,150万円となるため不適切な選択肢です。

まとめ

【補足】

 

同種の問題に2018年(平成30年)度の問20がありますが、登場人物が非常に多い上に設定が複雑な超難問であるため、この問題は復習する必要はありません。(本問も複雑な設定のため、生前贈与や寄与分の知識を確認する程度で結構です)

 

解説者も2018年(平成30年)度に経営法務を受験しましたが、同年の経営法務の科目合格者が極めて低かった(と想定される)ため、同年の経営法務の受験者全員に8点加点する得点調整が行なわれています。

 

※他の科目を含めて4点加点した例は何度かありますが、8点加点した例はこの1回しかありません。

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