中小企業診断士 過去問
令和元年度(2019年)
問142 (経営法務 問7)

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問題

中小企業診断士試験 令和元年度(2019年) 問142(経営法務 問7) (訂正依頼・報告はこちら)

X株式会社(以下「X社」という。)は、取締役会及び監査役会を設置している会社(公開会社ではなく、かつ大会社ではない)である。
中小企業診断士であるあなたは、2019年 1月に、今年(2019年)の株主総会のスケジュール等について、X社の株主総会担当者の甲氏から相談を受けた。以下の会話は、その相談の際のものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。

甲氏 :「当社の事業年度は、4月1日から翌年3月31日までです。2019年は6月27日(木)に株主総会を開催したいと考えています。株主総会の招集通知はいつまでに発送すればよいですか。」
あなた:「御社では、株主総会に出席しない株主に、書面による議決権の行使や、電磁的方法による議決権の行使を認める制度を設けていますか。」
甲氏 :「いいえ。設けていません。」
あなた:「そうすると、御社は、取締役会を設置している会社ですが、公開会社ではありませんし、また、書面による議決権の行使や、電磁的方法による議決権の行使を認める制度を設けていないので、( A )までに招集通知を発送する必要があります。」
甲氏 :「分かりました。ところで、今回の株主総会でも、昨年と同様、3 年前まで当社の取締役であった乙氏が、「自分を取締役に選任しろ」という議案を株主提案として提出してくると聞いています。どのような点に注意した方がよいでしょうか。」
あなた:「御社では、定款で株主提案に関する何らかの規定は設けていますか。」
甲氏 :「いいえ。定款では特に規定は設けていません。」
あなた:「( B )」

会話の中の空欄Bに入る記述として、最も適切なものはどれか。
  • 御社の場合、株主が、株主提案について、議案の要領を株主に通知することを求めるには、株主総会の日の 6 週間前までに請求することが必要です。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、この要件を満たしているのかを確認してください。
  • 御社の場合、株主が、株主提案について、議案の要領を株主に通知することを求めるには、総株主の議決権の 100分の3 以上の議決権又は 300 個以上の議決権を、6 か月前から引き続き有していることが要件となります。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、この要件を満たしているかを確認してください。
  • 株主の提案する議案が、実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の 10分の1 以上の賛成を得られなかった日から 3 年を経過していない場合は、会社は、その株主提案を拒絶することができます。乙氏は、昨年の株主総会でも同様の株主提案をしてきたとのことですので、乙氏が株主提案をしてきた場合は、まず昨年の賛否の状況を確認してください。
  • 株主の提案する議案が、法令や定款に違反する議案の場合であっても、株主提案は、株主の基本的な権利ですので、議案の要領を株主に通知する必要があります。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、その提案が法令に違反するものであっても、必ず、議案の要領を株主に通知してください。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は3です。

1→株主提案について、議案の要領を株主に通知することを求めるには、株主総会の日の「8 週間前」までに請求することが必要です。よって誤りです。

2→株主が、株主提案について、議案の要領を株主に通知することを求めるには、少数株主権の要件として、総株主の議決権の「100 分の1」 以上の議決権又は300 個以上の議決権を保有している株主かどうかが必要となります。
6 か月前から引き続き有していることが要件となるのは、公開会社のみです。よって誤りです。

3→株主の議案提案権は、実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の10 分の1 以上の賛成を得られなかった日から3 年を経過していない場合は、行使できず、会社はその株主提案を拒絶することができます。よって正解です。

4→株主の議案提案権は、株主の基本的権利ではありますが、法令や定款に違反する議案の場合は、権利を行使することはできません。よって議案の要領を株主に通知することもできません。よって誤りです。

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02

【基礎知識】

株主提案権とは一定の株式を保有する株主が株主総会での新たな議案、議題を提案・要求できる権利です。

総会で扱う議案に目的のものがない場合に、新たな議題の提案を行う議題提案権、すでに議案が目的のものがあり、その中で新たな議案を提案する議案提出権があります

(少しややこしいですが、議題は大きい概念で、ある議題の中の一つのテーマを議案と言います)。

また、株主提案権は公開会社では6か月以上株主であることが要件になっています。瞬間に保有し、様々な提案をしてくる悪意のある株主を防止するためです。

非公開会社では株式が公開されていないことと、株主がわかっており、基本リスクが低いのでこういった要件はありません。

・ 議題提案権、議案提出権(双方条件は同じ)

取締役会非設置会社→1単位以上保有する株主であれば、権利を持つ

取締役会設置会社→総株主の議決権の100分の1以上の議決権、または300個以上の議決権を有する場合権利を持つ。

※ 議題請求は総会の8週間前に行う必要がある。

議案提出権は以下の場合に、企業側が拒否することが可能です。

①法令や定款に違反する内容

② 実質的に同一内容で株主総会で総株主に議決権の10分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合、その割合)以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合

選択肢1. 御社の場合、株主が、株主提案について、議案の要領を株主に通知することを求めるには、株主総会の日の 6 週間前までに請求することが必要です。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、この要件を満たしているのかを確認してください。

8週間前までに請求が必要です。誤り。

選択肢2. 御社の場合、株主が、株主提案について、議案の要領を株主に通知することを求めるには、総株主の議決権の 100分の3 以上の議決権又は 300 個以上の議決権を、6 か月前から引き続き有していることが要件となります。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、この要件を満たしているかを確認してください。

取締役会設置会社ですので議決権は100分の1以上になります。また、非公開会社ですので、厳密には6か月の保有要件はありません。よって誤り。

選択肢3. 株主の提案する議案が、実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の 10分の1 以上の賛成を得られなかった日から 3 年を経過していない場合は、会社は、その株主提案を拒絶することができます。乙氏は、昨年の株主総会でも同様の株主提案をしてきたとのことですので、乙氏が株主提案をしてきた場合は、まず昨年の賛否の状況を確認してください。

拒否できる場合の②のパターンです。正しい。

選択肢4. 株主の提案する議案が、法令や定款に違反する議案の場合であっても、株主提案は、株主の基本的な権利ですので、議案の要領を株主に通知する必要があります。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、その提案が法令に違反するものであっても、必ず、議案の要領を株主に通知してください。

拒否できる①のパターンに反しています。よって誤り。

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03

株主提案に関する問題です。前問からの続きで2問構成となっています。

 

前問で、X社は

・非公開会社(公開会社ではなく、かつ大会社ではない)

・取締役会設置会社

であることは確認済みであると思います。

 

さらに、「株主提案に関する規定を設けていない」ことも確認できます。

選択肢1. 御社の場合、株主が、株主提案について、議案の要領を株主に通知することを求めるには、株主総会の日の 6 週間前までに請求することが必要です。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、この要件を満たしているのかを確認してください。

冒頭の解説よりX社は「株主提案に関する規定を設けていない」ため、議案の要領を株主に通知することを求めるには株主総会の日の8週間前までに請求することが必要となり不適切な選択肢です。

 

※定款に定めがある場合、8週間より短い期間にすることが可能です。

選択肢2. 御社の場合、株主が、株主提案について、議案の要領を株主に通知することを求めるには、総株主の議決権の 100分の3 以上の議決権又は 300 個以上の議決権を、6 か月前から引き続き有していることが要件となります。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、この要件を満たしているかを確認してください。

冒頭の解説より、X社は非公開会社です。

 

「総株主の議決権の100分の3以上の議決権」および「6か月前から引き続き有していること」が要件になるのは公開会社の場合であり、不適切な選択肢です。

 

※非公開会社の場合、総株主の議決権の100分の1以上の議決権又は300個以上の議決権が要件です。(そのため、「300個以上の議決権」についてのみ正しいです)

選択肢3. 株主の提案する議案が、実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の 10分の1 以上の賛成を得られなかった日から 3 年を経過していない場合は、会社は、その株主提案を拒絶することができます。乙氏は、昨年の株主総会でも同様の株主提案をしてきたとのことですので、乙氏が株主提案をしてきた場合は、まず昨年の賛否の状況を確認してください。

本選択肢の総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合は、会社はその株主提案を拒絶することができます」という記述が正解になります。(後半部分は、昨年の実例を述べているだけです)

 

※情報量が多いため、他の選択肢を先に正誤判断して消去法で正解と判断できればOKです。

選択肢4. 株主の提案する議案が、法令や定款に違反する議案の場合であっても、株主提案は、株主の基本的な権利ですので、議案の要領を株主に通知する必要があります。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、その提案が法令に違反するものであっても、必ず、議案の要領を株主に通知してください。

株主提案は株主の基本的な権利であっても、法令や定款に違反する議案は認められないため不適切な選択肢です。

 

※本問は「公序良俗に反するものでも認められる」と主張しているようなものであり、違和感を感じて不適切と判断できれば十分です。

まとめ

【補足】

 

本問は各選択肢の情報量が多いですが、問われている部分は基本的に過去問題と同じで数字の部分が問われています。

 

そのため、与件文で与えられているX社についての情報を確認した上で、選択肢の数字の部分を確認すれば選択肢を絞り込めます。

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