中小企業診断士の過去問
令和元年度(2019年)
経営法務 問8

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和元年度(2019年) 問8 (訂正依頼・報告はこちら)

下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)に関する記述として、最も不適切なものはどれか。なお、親事業者、下請事業者の範囲を定める取引当事者の資本金の要件は考慮しないものとする。
  • 自社の社内研修をコンサルティング会社に委託することは、下請法の対象となる役務提供委託に該当する。
  • 製造業者が、自社の工場で使用している工具の修理を自社で行っている場合に、その修理の一部を修理業者に委託することは、下請法の対象となる修理委託に該当する。
  • 大規模小売業者が、自社のプライベート・ブランド商品の製造を食品加工業者に委託することは、下請法の対象となる製造委託に該当する。
  • 放送事業者が、放送するテレビ番組の制作を番組制作業者に委託することは、下請法の対象となる情報成果物の作成委託に該当する。

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この過去問の解説 (2件)

01

正解は1です。

下請代金支払遅延等防止法は、下請代金の支払遅延等を防止することによって、親事業者の下請事業者に対する取引を公正にし、下請事業者の利益を保護し、国民経済の健全な発達に寄与することを目的とした法律です。

1→下請法の「役務提供委託」とは、委託事業者が他社に提供する役務の全てまたは一部を第三者に委託することを言います。本肢の自社の社内研修をコンサルティング会社に委託する場合は、自社のことを第三者に委託することなので当てはまりません。
よって誤りのため、正解です。

2→修理委託とは、事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいいます。(下請法第2条2項)
よって、自社の工場で使用している工具の修理を自社で行っている製造業者が、その修理の一部を修理業者に委託することは、下請法の対象となる修理委託に該当します。よって正しいです。

3→製造委託とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいいます。(下請法第2条1項)
大規模小売業者が、自社のプライベート・ブランド商品の製造を食品加工業者に委託することは、事業者が業として行う販売の目的物たる物品の製造を他の事業者に委託することに該当します。よって正しいです。

4→情報成果物の作成委託とは、事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいいます。(下請法第2条3項)
ここで、放送事業者が、放送するテレビ番組の制作を番組制作業者に委託することは、事業者が業として行う提供の目的たる情報成果物の作成を他の事業者に委託することに該当します。よって正しいです。

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02

【基礎知識】

下請法の対象取引を問う問題です。中小企業庁のポイント解説下請法を見ると、以下のように整理されています。

適用の対象となる下請取引の範囲を①取引当事者の資本金(又は出資金の総額。以下同じ。)の区分と②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託)の両面から定めています。

① 資本金による分類

・ 物品の製造、物品の修理、プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理

(発注元)3億1円以上の場合、(下請事業者)3億円以下 → 対象

(発注元)1千万1円~3億円の場合、(下請事業者)1千万円以下 →対象

・プログラム以外の情報成果物、運送、物品の倉庫保管、情報処理以外の役務提供

(発注元)5千万1円以上の場合、(下請事業者)5千万円以下 → 対象

(発注元)1千万1円~5千万円の場合、(下請事業者)1千万円以下 →対象

②取引の内容

・製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託

※ あくまで発注元が消費者や顧客に提供するサービスや商品の一部を下請事業者が請け負う場合に下請法が適用される。

問題の条件の中に、資本金による分類は下請法対象であるとなっているため、取引の内容から判断する必要があります。

選択肢1. 自社の社内研修をコンサルティング会社に委託することは、下請法の対象となる役務提供委託に該当する。

発注元の従業員の研修は発注元の提供するサービスまたは商品の一部、または全部を請け負うわけではないので、下請法の対象ではない。よって正しい。

選択肢2. 製造業者が、自社の工場で使用している工具の修理を自社で行っている場合に、その修理の一部を修理業者に委託することは、下請法の対象となる修理委託に該当する。

工具の修理というサービスの一部を下請事業者に委託しているため、対象。よって誤り。

選択肢3. 大規模小売業者が、自社のプライベート・ブランド商品の製造を食品加工業者に委託することは、下請法の対象となる製造委託に該当する。

発注元が販売する商品の製造を委託しているため、対象。よって誤り。

選択肢4. 放送事業者が、放送するテレビ番組の制作を番組制作業者に委託することは、下請法の対象となる情報成果物の作成委託に該当する。

情報成果物(ここではテレビ番組)を委託しているため、対象。よって誤り。

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