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中小企業診断士の過去問 令和4年度(2022年) 経済学・経済政策 問7(2)

問題

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下図には、右下がりの総需要曲線ADと垂直な総供給曲線ASが描かれている。
YFは完全雇用GDPである。
この図に基づいて、下記の設問に答えよ。

財政・金融政策の効果に関する記述として、最も適切なものはどれか。
問題文の画像
   1 .
政府支出の増加は、総需要を変化させないが、総供給を増加させる。
   2 .
政府支出の増加は、物価水準の下落を通じて、実質GDPを増加させる。
   3 .
名目貨幣供給の増加は、物価と名目賃金率を同率で引き上げ、実質GDPには影響を与えない。
   4 .
名目貨幣供給の増加は、実質貨幣供給を一定に保つように物価を引き上げるとともに、実質GDPを増加させる。
( 中小企業診断士試験 第1次試験 経済学・経済政策 令和4年度(2022年) 問7(2) )
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この過去問の解説 (3件)

7

(基本知識)

総需要総供給分析の問題です。AD(総需要曲線)、AS(総供給曲線)とは何でしょうか?

・総需要曲線→財市場と貨幣市場をともに均衡させる実質所得、物価水準の

 組み合わせ、IS-LM分析の均衡点をまとめたものになります。

・総供給曲線→労働市場を均衡させる実質所得、物価水準の組み合わせ

このように色んな市場分析を含んでおり、幅広い視点での均衡を探っていく分析となります。

ただ、幅広く各市場が入っているため、何らかの指標が変化した場合の影響等は、単に総需要曲線と総供給曲線を見ているだけでは難しく、その裏にある個別の市場分析、つまりIS-LM分析、労働市場の動きを抑えることで見えてきます。以下の内容を押さえて、グラフを見ていただければお分かりいただけると思います。

まず、IS-LM分析ですが、縦軸にr(利子率)、横軸にY(実質所得、GDP)のグラフになります。

ISは財市場を均衡させるrとYの関係を見るもので、Y=C(消費)+I(投資)+G(政府支出)で表すことができます。ここでCはYの関数になります。また、Iは利子率が下がるとお金が借りやすくなり、投資が増えますのでrに反比例するグラフとなります。Gは基本政策で決まりますので、定数と置くことができます。つまり、ISは縦軸をr、横軸をYとするグラフで右下がりの曲線となります。

次に貨幣市場のLMです。LMは貨幣市場を均衡させるrとYの関係を見るものになります。貨幣需要はL=kY-hrで表されます。このとき、Lは貨幣需要、k、hは正の定数、Yは所得、rは利子率です。当然所得が上がれば給与とか、消費も増えますので、貨幣に対する需要が増えます。一方で、利子率が上がると、あまりお金を使わずに貯金して利子を獲得する意向が働きますので貨幣需要は減ります。貨幣供給は実質貨幣供給量になりますので、M/P(M:名目貨幣供給量、P:物価)となり、貨幣市場の均衡は

kY-hr=M/P で表すことができます。rとYのグラフですので、式を変形して、

 r=(k/h)Y-(M/P)/h と表すことができます。よって、r利子率はY所得に比例する右上がりのグラフであることがわかります。

       

次に総供給曲線です。

まず労働市場ですが、これも労働需要と労働供給の一致する点で均衡します。

労働需要Ldは実質賃金:W(名目賃金)/P(物価)が高くなると減り、低くなると増えます。ここでややこしいのですが、労働需要とは、労働を欲しがる側の曲線、つまり、雇用する企業側のニーズです。当然給与水準が下がる=労働の金額が減ると労働を増やそうとしますので需要は増えます。

一方で労働供給Lsは逆にW/Pが上がると増え、下がると減ります。Ld,Lsの均衡点が完全雇用水準、つまり均衡点の実質賃金水準で働きたい人は全員働くことができている状態になり、これ以上労働を増やすことは困難な状態ということになります。

この総供給曲線のとらえ方がケインズ派、古典派で異なります。古典派では名目賃金が伸縮的であり(ある程度物価に連動するということ)、W/Pは一定、つまり問題のような直線となります。例えば物価Pが上昇した場合を考えます。このとき、W/Pの実質所得水準は下落しますが、古典派では、物価の動きを踏まえ、名目賃金Wも変動すると考えています。その結果、Pの上昇と合わせてWも上昇するため、結果W/Pは変わらないという考え方です。

一方でケインズはある一定レベルまでWが下がると、それ以上は下がらないとしています(下方硬直性)。その結果、総供給曲線は基本右上がりを示すとしています。

選択肢1. 政府支出の増加は、総需要を変化させないが、総供給を増加させる。

政府支出の増加はIS曲線の需要が動きますので誤りです。

選択肢2. 政府支出の増加は、物価水準の下落を通じて、実質GDPを増加させる。

政府支出の増加はIS曲線を右側にシフトさせ、利子率を低下させます。利子率の低下は貨幣需要の増加をもたらし、全体的に需要が増加し、所得が増えるというメカニズムですので、この記載は誤りです。

選択肢3. 名目貨幣供給の増加は、物価と名目賃金率を同率で引き上げ、実質GDPには影響を与えない。

名目貨幣供給量が増加するとLM曲線が右側にシフトします。その結果総需要曲線ADも右側にシフトしますが、古典派のAS曲線は垂直なため、物価が上昇してしまい、名目貨幣供給量の増加と同率で上昇して結果M/Pの実質貨幣供給量は一定になり、実質GDPに影響を与えません。よって正しいです。

選択肢4. 名目貨幣供給の増加は、実質貨幣供給を一定に保つように物価を引き上げるとともに、実質GDPを増加させる。

前半は正しいですが、AS曲線が垂直であるため、実質GDPへの影響を消してしまいますので、後半は誤っています。

付箋メモを残すことが出来ます。
4

「古典派」の考え方に基づくAD-AS分析に関する出題です。

AD(総需要曲線)とは、IS曲線(財市場において、市場が均衡する場合の国民所得と利子率の組み合わせを表す曲線)とLM曲線(貨幣市場において、市場が均衡する場合の国民所得と利子率の組み合わせを表す曲線)を用いて、財市場と貨幣市場における物価水準と国民所得との関係を表す曲線を言います。

一方AS(総供給曲線)とは、労働市場における物価水準と国民所得の組み合わせを表す曲線を言います。

AS曲線はケインズ経済学の場合と古典派経済学の場合とでは曲線の形が異なります。

AD-AS分析で使用される図では、ADは右下がりの曲線ですが、古典派の考えによるとASは完全雇用を表すGDPの点において垂直の曲線となります。垂直の曲線となる理由は、古典派経済学では完全雇用を前提としているからです。

「古典派」では、物価水準が変わっても働きたい人の総数は変わらない(=完全雇用が実現している)ため、物価水準が高くなって実質賃金が高くなっても国民所得の水準は変わらないと考えます。

古典派経済学におけるAS曲線は上記の説明の通り垂直な曲線として表され、総需要の変化に影響を受けません。この内容を踏まえて選択肢を見ると、「名目貨幣供給の増加は、物価と名目賃金率を同率で引き上げ、実質GDPには影響を与えない」とするものが正解となります。

選択肢1. 政府支出の増加は、総需要を変化させないが、総供給を増加させる。

政府支出の増加は総需要も上昇させますので、誤りです。

選択肢2. 政府支出の増加は、物価水準の下落を通じて、実質GDPを増加させる。

政府支出の増加により利子率低下、需要の増加、物価水準の上昇、GDPの増加といったプロセスをたどりますので、誤りです。

選択肢3. 名目貨幣供給の増加は、物価と名目賃金率を同率で引き上げ、実質GDPには影響を与えない。

冒頭の説明の通り正解です。

選択肢4. 名目貨幣供給の増加は、実質貨幣供給を一定に保つように物価を引き上げるとともに、実質GDPを増加させる。

AS曲線は垂直なので、物価の上昇があっても実質GDPの増加にはつながらないので誤りです。

まとめ

AD-AS分析に関する出題でした。本問も基本的な内容ですのでしっかり復習しておきましょう。

1

財政・金融政策の効果に関する問題です。

選択肢1. 政府支出の増加は、総需要を変化させないが、総供給を増加させる。

不適切です。

政府支出の増加により総需要も増加します。

選択肢2. 政府支出の増加は、物価水準の下落を通じて、実質GDPを増加させる。

不適切です。

政府支出の増加は物価水準の上昇につながります。

選択肢3. 名目貨幣供給の増加は、物価と名目賃金率を同率で引き上げ、実質GDPには影響を与えない。

適切です。

選択肢4. 名目貨幣供給の増加は、実質貨幣供給を一定に保つように物価を引き上げるとともに、実質GDPを増加させる。

不適切です。

名目貨幣供給の増加は総需要曲線を右方へシフトさせますが、総供給曲線が垂直のため、実質GDPは増加しません。

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