中小企業診断士 過去問
令和4年度(2022年)
問8 (経済学・経済政策 問7(1))
問題文
下図には、右下がりの総需要曲線ADと垂直な総供給曲線ASが描かれている。
YFは完全雇用GDPである。
この図に基づいて、下記の設問に答えよ。
古典派モデルにおける総需要曲線ADと総供給曲線ASに関する記述として、最も適切なものはどれか。
YFは完全雇用GDPである。
この図に基づいて、下記の設問に答えよ。
古典派モデルにおける総需要曲線ADと総供給曲線ASに関する記述として、最も適切なものはどれか。

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問題
中小企業診断士試験 第1次試験 経済学・経済政策 令和4年度(2022年) 問8(経済学・経済政策 問7(1)) (訂正依頼・報告はこちら)
下図には、右下がりの総需要曲線ADと垂直な総供給曲線ASが描かれている。
YFは完全雇用GDPである。
この図に基づいて、下記の設問に答えよ。
古典派モデルにおける総需要曲線ADと総供給曲線ASに関する記述として、最も適切なものはどれか。
YFは完全雇用GDPである。
この図に基づいて、下記の設問に答えよ。
古典派モデルにおける総需要曲線ADと総供給曲線ASに関する記述として、最も適切なものはどれか。

- 利子率の低下は貨幣需要を増加させる。したがって、物価水準の上昇は、実質利子率の低下による実質投資支出の増加をもたらし、総需要を増加させる。
- 利子率は貨幣需要に影響を与えない。したがって、物価水準の上昇は、実質利子率の低下による実質投資支出の増加を通じて、総需要を増加させる。
- 利子率は貨幣需要に影響を与えない。したがって、物価水準の上昇は、実質利子率を低下させるが、実質投資支出に影響を与えず、総需要も変化しない。
- 労働市場においては実質賃金率の調整によって完全雇用が実現する。したがって、物価水準が上昇すると、実質賃金率の下落による労働需要の増加を通じて総供給が増加する。
- 労働市場は完全雇用水準で均衡している。したがって、物価水準が変化しても、名目賃金率が同率で変化するので、雇用量が変化することはなく、生産量も完全雇用水準で維持されたままであり、総供給も変化しない。
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この過去問の解説 (3件)
01
(基本知識)
総需要総供給分析の問題です。AD(総需要曲線)、AS(総供給曲線)とは何でしょうか?
・総需要曲線→財市場と貨幣市場をともに均衡させる実質所得、物価水準の
組み合わせ、IS-LM分析の均衡点をまとめたものになります。
・総供給曲線→労働市場を均衡させる実質所得、物価水準の組み合わせ
このように色んな市場分析を含んでおり、幅広い視点での均衡を探っていく分析となります。
ただ、幅広く各市場が入っているため、何らかの指標が変化した場合の影響等は、単に総需要曲線と総供給曲線を見ているだけでは難しく、その裏にある個別の市場分析、つまりIS-LM分析、労働市場の動きを抑えることで見えてきます。以下の内容を押さえて、グラフを見ていただければお分かりいただけると思います。
まず、IS-LM分析ですが、縦軸にr(利子率)、横軸にY(実質所得、GDP)のグラフになります。
ISは財市場を均衡させるrとYの関係を見るもので、Y=C(消費)+I(投資)+G(政府支出)で表すことができます。ここでCはYの関数になります。また、Iは利子率が下がるとお金が借りやすくなり、投資が増えますのでrに反比例するグラフとなります。Gは基本政策で決まりますので、定数と置くことができます。つまり、ISは縦軸をr、横軸をYとするグラフで右下がりの曲線となります。
次に貨幣市場のLMです。LMは貨幣市場を均衡させるrとYの関係を見るものになります。貨幣需要はL=kY-hrで表されます。このとき、Lは貨幣需要、k、hは正の定数、Yは所得、rは利子率です。当然所得が上がれば給与とか、消費も増えますので、貨幣に対する需要が増えます。一方で、利子率が上がると、あまりお金を使わずに貯金して利子を獲得する意向が働きますので貨幣需要は減ります。貨幣供給は実質貨幣供給量になりますので、M/P(M:名目貨幣供給量、P:物価)となり、貨幣市場の均衡は
kY-hr=M/P で表すことができます。rとYのグラフですので、式を変形して、
r=(k/h)Y-(M/P)/h と表すことができます。よって、r利子率はY所得に比例する右上がりのグラフであることがわかります。
次に総供給曲線です。
まず労働市場ですが、これも労働需要と労働供給の一致する点で均衡します。
労働需要Ldは実質賃金:W(名目賃金)/P(物価)が高くなると減り、低くなると増えます。労働需要とは、労働を欲しがる側の曲線、つまり、雇用する企業側のニーズです。当然給与水準が下がる=労働の金額が減る(安くなる)と企業は労働を増やそうとしますので需要は増えます。
一方で労働供給Lsは逆に実質賃金W/Pが上がると増え、下がると減ります。Ld,Lsの均衡点が完全雇用水準、つまり均衡点の実質賃金水準で働きたい人は全員働くことができている状態になり、これ以上労働を増やすことは困難な状態ということになります。
この総供給曲線のとらえ方がケインズ派、古典派で異なります。古典派では名目賃金が伸縮的であり(ある程度物価に連動するということ)、W/Pは一定、つまり問題のような直線となります。例えば物価Pが上昇した場合を考えます。このとき、W/Pの実質所得水準は下落しますが、古典派では、物価の動きを踏まえ、名目賃金Wも変動すると考えています。その結果、Pの上昇と合わせてWも上昇するため、結果W/Pは変わらないという考え方です。
一方でケインズはある一定レベルまでWが下がると、それ以上は下がらないとしています(下方硬直性)。その結果、総供給曲線は基本右上がりを示すとしています。
利子率の低下は投資を減少させ、IS曲線のYを減少させます。よって前半は正しいです。物価水準が上昇すると、実質貨幣供給量M/Pが減少するため、LM曲線が左に移動してしまい、ISLM分析では金利が上昇してしまいます。よって誤りです。
貨幣需要は利子率に反比例するため、影響を与えないは誤りです。
貨幣需要は利子率に反比例するため、影響を与えないは誤りです。
古典派では物価の上昇に伴い、名目賃金も上昇するため、W/Pは一定となります。よって誤りです。
古典派の総供給曲線の考え方です。よって正解です。
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02
「古典派」の考え方に基づくAD-AS分析に関する出題です。
AD(総需要曲線)とは、IS曲線(財市場において、市場が均衡する場合の国民所得と利子率の組み合わせを表す曲線)とLM曲線(貨幣市場において、市場が均衡する場合の国民所得と利子率の組み合わせを表す曲線)を用いて、財市場と貨幣市場における物価水準と国民所得との関係を表す曲線を言います。
一方AS(総供給曲線)とは、労働市場における物価水準と国民所得の組み合わせを表す曲線を言います。
AS曲線はケインズ経済学の場合と古典派経済学の場合とでは曲線の形が異なります。
AD-AS分析で使用される図では、ADは右下がりの曲線ですが、古典派の考えによるとASは完全雇用を表すGDPの点において垂直の曲線となります。垂直の曲線となる理由は、古典派経済学では完全雇用を前提としているからです。
「古典派」では、物価水準が変わっても働きたい人の総数は変わらない(=完全雇用が実現している)ため、物価水準が高くなって実質賃金が高くなっても国民所得の水準は変わらないと考えます。
この内容を踏まえて選択肢を見ると、労働市場では完全雇用水準で均衡している、とするものが正解になります。
物価水準の上昇は実質利子率の上昇を招きますので誤りです。
利子率の変化により貨幣需要も変化するので、誤りです。
利子率の変化により貨幣需要も変化するので、誤りです。
実質賃金率の調整は完全雇用に実質無関係なので誤りです。
冒頭の説明の通り、正解です。
AD-AS分析に関する出題でした。マクロ経済学分野の出題のクライマックス的な位置付けといってもよい分野ですが、本問は基本的な内容なので、正答できなかった場合はしっかり復習しましょう。
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03
古典派モデルにおける総需要曲線ADと総供給曲線ASに関する問題です。
不適切です。
物価水準の上昇は、実質利子率の上昇につながります。
不適切です。
利子率は貨幣需要に影響を与え、利子率の低下は貨幣需要を増加させます。
不適切です。
利子率は貨幣需要に影響を与え、利子率の低下は貨幣需要を増加させます。
不適切です。
物価水準が上昇すると、実質賃金率の上昇につながります。
適切です。
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