中小企業診断士 過去問
令和5年度 再試験(2023年)
問6 (経済学・経済政策 問6)

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

中小企業診断士試験 令和5年度 再試験(2023年) 問6(経済学・経済政策 問6) (訂正依頼・報告はこちら)

投資の決定に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ケインズの投資理論では、利子率の低下、投資費用の増加、投資から見込まれる将来収益の増加に応じて投資支出が増加することになる。
  • 新古典派の投資理論では、最適資本量と既存の資本量のギャップを埋めるように投資が行われ、資本のレンタル・コストの上昇や労働投入量の増加に応じて最適資本量も増加することになる。
  • 投資の加速度原理では、生産量が拡大するほどストックとしての投資支出も増加することになる。
  • トービンの q 理論では、株式市場における企業の市場価値が上昇するほど、また、資本の再取得価格が下落するほど、投資支出が増加することになる。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (2件)

01

この問題は、投資の決定に関する4つの経済理論に基づいた記述を読み、その中から最も適切なものを選ぶ問題です。ここではケインズ、加速度原理、新古典派、トービンのq理論に関連する理論が登場しています。特に投資決定に関わる要因として、利子率、資本のコスト、生産量の変化、株式市場の動きなどが重要なポイントです。

選択肢1. ケインズの投資理論では、利子率の低下、投資費用の増加、投資から見込まれる将来収益の増加に応じて投資支出が増加することになる。

この記述は一部誤りです。ケインズの投資理論では、利子率が低下すれば投資が増加することは正しいですが、「投資費用の増加によって投資が増加する」という部分が不正確です。一般的に、投資費用が増加すれば投資は抑制されるはずです。したがって、正確な記述とは言えません。

選択肢2. 新古典派の投資理論では、最適資本量と既存の資本量のギャップを埋めるように投資が行われ、資本のレンタル・コストの上昇や労働投入量の増加に応じて最適資本量も増加することになる。

この記述も一部誤りです。新古典派の投資理論では、資本コストが上昇すれば投資は抑制されるのが基本的な考え方です。したがって、「資本のレンタル・コストの上昇に応じて最適資本量も増加する」という部分は誤りです。資本コストが上がると投資の魅力は減少します。

選択肢3. 投資の加速度原理では、生産量が拡大するほどストックとしての投資支出も増加することになる。

この記述は誤りです。加速度原理では、「投資はGDPの増加分に比例する」 とされています。つまり、生産量そのものの大きさではなく、生産量やGDPが**「どれだけ増えたか」** に応じて投資が行われます。したがって、「生産量が拡大するほど投資支出が増加する」という記述は不正確です。正しくは「GDPや生産の増加分に比例して投資が増加する」ということです。

選択肢4. トービンの q 理論では、株式市場における企業の市場価値が上昇するほど、また、資本の再取得価格が下落するほど、投資支出が増加することになる。

この記述が正しいです。トービンのq理論では、qは「企業の市場価値/資本の再取得価格」として定義されます。qが1を超えると、企業の市場価値が資本の再取得コストを上回るため、企業は投資を積極的に行います。逆に、qが1未満であれば、企業の市場価値が資本のコストを下回るため、新規投資が抑制されます。記述の「市場価値が上昇するほど、投資支出が増加する」という点と「資本の再取得価格が下落するほど投資が増加する」という点は正確であり、最も適切な回答です。

まとめ

各経済理論における投資の決定要因を正確に理解することが重要です。特に、トービンのq理論のように、市場価値と資本コストの関係が投資にどのように影響するかを理解しておくと、実際の経済活動の理解にも役立ちます。

参考になった数33

02

投資の決定に関する問題です。

 

4つの選択肢ともに過去問題での出題があり、非常にオーソドックスな内容です。是非とも正答したいところです。

選択肢1. ケインズの投資理論では、利子率の低下、投資費用の増加、投資から見込まれる将来収益の増加に応じて投資支出が増加することになる。

ケインズの投資理論では、利子率の低下、投資から見込まれる将来収益の増加に応じて投資支出が増加することになりますが、投資費用の増加は投資支出が増加要因ではないため不適切な選択肢です。

 

※投資費用の増加は、むしろ投資を抑制する要因となります。

選択肢2. 新古典派の投資理論では、最適資本量と既存の資本量のギャップを埋めるように投資が行われ、資本のレンタル・コストの上昇や労働投入量の増加に応じて最適資本量も増加することになる。

新古典派の投資理論では、限界利益が限界費用と等しくなるまで投資を行い、資本の限界生産性が資本の使用者費用と等しくなる点で利益が最大化されると仮定します。 

 

つまり、資本のレンタル・コストの上昇や労働投入量の増加に応じて最適資本量も増加するのではないため不適切な選択肢です。

 

※限界費用とは、ある財を追加で1単位生産する際に発生する費用です。

限界利益>限界費用の状態では追加で1単位生産するほど利益が増加するため、企業は投資を続けます。

限界利益=限界費用の状態になると損益がゼロになるため、企業はここで投資を止めます。

(限界利益=限界費用の状態になった後も追加で1単位生産し続けていると限界利益<限界費用の状態になり、損失が増加するためです)

選択肢3. 投資の加速度原理では、生産量が拡大するほどストックとしての投資支出も増加することになる。

投資の加速度原理では、需要が拡大するほどストックとしての投資支出も増加することになるため不適切な選択肢です。

 

生産量が拡大するためには、それに見合うだけの需要が必要です。需要の拡大なくして生産量が拡大することはありません。

選択肢4. トービンの q 理論では、株式市場における企業の市場価値が上昇するほど、また、資本の再取得価格が下落するほど、投資支出が増加することになる。

トービンのqの計算式は「企業の市場価値/資産の再取得価格(資本の再調達費用)」であり、q>1であれば企業は投資を行い、q<1であれば投資を控えるというものです。

 

株式市場における企業の市場価値が上昇するほど(分子が大きいほど)

また、

資本の再取得価格が下落するほど(分母が小さいほど)

いずれの場合もq>1となり投資支出が増加することになるため正解の選択肢となります。

まとめ

【補足】

 

類問として、平成29年度第8問があります。

 

平成29年度第8問では、4つの解答群のうち正しい記述の組み合わせが問われていますが、その4つの解答群の内容が本問と非常に似ているため復習には最適と思われます。

参考になった数1