中小企業診断士 過去問
令和5年度 再試験(2023年)
問7 (経済学・経済政策 問7(1))

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問題

中小企業診断士試験 令和5年度 再試験(2023年) 問7(経済学・経済政策 問7(1)) (訂正依頼・報告はこちら)

ケインズの有効需要の原理を考える。
いま、総需要ADが
AD = C + I
で与えられるとする。
このうち、消費支出Cは
C = C0 + cY
であり、C0:独立消費、c:限界消費性向( 0 < c < 1 )、Y:GDP(所得)とする。
また、投資支出Iは
I = I0 - ir
で示され、I0:独立投資、i:投資の利子感応度、r:利子率とする。
さらに、所得の処分式は
Y = C + S
で表され、S:貯蓄とする。
ここから、貯蓄-投資図を用いて均衡GDPの決定を描くと、下図のようになる。
なお、Y0が均衡GDPに当たる。
この図に基づき、下記の設問に答えよ。

貯蓄-投資図の見方や均衡GDPの決定に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

a  平均貯蓄性向は所得の増加に応じて上昇する。
b  GDPがY1の水準にあるとき、生産物市場は超過需要の状態にある。
c  S線の傾きは限界貯蓄性向に等しい。
d  生産物市場に超過供給が生じた場合、価格の下落を通じて均衡GDP(Y0)に到達する。
問題文の画像
  • a:正  b:正  c:正  d:誤
  • a:正  b:正  c:誤  d:正
  • a:正  b:誤  c:正  d:誤
  • a:誤  b:正  c:正  d:誤
  • a:誤  b:誤  c:正  d:正

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この過去問の解説 (3件)

01

この問題は、ケインズの有効需要理論に基づき、貯蓄・投資図と均衡GDPの決定に関する記述の正誤を問う問題です。貯蓄と投資の均衡によってGDPの水準が決まり、ケインズの理論では、価格調整や所得分配が重要な役割を果たします。

【選択肢ごとの解説】

 a. 平均貯蓄性向は所得の増加に応じて上昇する。

  これは正しいです。平均貯蓄性向とは、所得全体に対する貯蓄の割合を示します。所得が増加すると、消費も増加しますが、貯蓄の割合(平均貯蓄性向)も上昇する傾向があります。ケインズ理論では、所得が増えると消費に回る割合が減り、貯蓄に回る割合が増加するため、平均貯蓄性向は所得の増加に伴い上昇するとされています。

 b. GDPがY1の水準にあるとき、生産物市場は超過需要の状態にある。

  これは誤りです。Y1の水準では、貯蓄(S)が投資(I)を上回ります。予定された支出より生産量が多いため、財が売れ残り、超過供給状態にあります。この在庫を解消しようと企業は生産を減らし、GDPは均衡水準Y0へ近づきます。反対に、超過需要はS<IとなるY0未満の水準で発生します。超過需要が発生するのは、GDPが均衡水準を下回るときです。

 c. S線の傾きは限界貯蓄性向に等しい。

  これは正しいです。S線(貯蓄線)の傾きは限界貯蓄性向を表しています。限界貯蓄性向は、所得が1単位増えたときに貯蓄がどれだけ増えるかを示す指標です。このため、貯蓄線の傾きは限界貯蓄性向に等しいと言えます。

 d. 生産物市場に超過供給が生じた場合、価格の下落を通じて均衡GDP(Y0)に到達する。

  これは誤りです。ケインズの理論では、価格の柔軟な調整による超過供給の解消は強調されていません。ケインズ経済学では、価格よりも総需要がGDPを決定する重要な要因とされており、価格の下落で均衡GDPに到達するという考え方は、一般的には古典派経済学の概念です。したがって、この記述は誤りです。

選択肢1. a:正  b:正  c:正  d:誤

bは誤です。

選択肢2. a:正  b:正  c:誤  d:正

bは誤です。cは正です。dは誤です。

選択肢3. a:正  b:誤  c:正  d:誤

正しい選択肢です。

選択肢4. a:誤  b:正  c:正  d:誤

aは正です。bは誤です。

選択肢5. a:誤  b:誤  c:正  d:正

aは正です。dは誤です。

まとめ

この問題では、貯蓄性向やケインズ理論における均衡の考え方が重要です。特に、貯蓄性向の変化や超過需要・超過供給の状態に関する理解が求められます。

平均貯蓄性向:所得全体に対する貯蓄の割合で、所得が増加すると平均貯蓄性向は上昇する傾向があります。

限界貯蓄性向:所得が1単位増加したときに、貯蓄に回る部分の割合を示します。S線の傾きはこれを表しています。

ケインズの有効需要理論:価格の柔軟な調整ではなく、総需要の変化がGDPに影響を与えることを重視します。

参考になった数25

02

ケインズの有効需要の原理から、財市場の均衡を考えていく問題です。かなり難易度の高い問題と言えます。

 

ケインズの有効需要理論のポイントは以下の2つです。

 

平均貯蓄性向:平均貯蓄性向は平均消費性向と合計して1になる。

限界貯蓄性向:限界貯蓄性向は限界消費性向と合計して1になる。

 

これが今回の問題を読み解くポイントです。

 

a 平均貯蓄性向とは、所得全体に対する貯蓄の割合を示したものです。

所得が増加すると、消費も増加します。ですが同時に貯蓄の割合も上昇傾向を示すのです。ケインズ理論から考えると、所得の増加は消費の増加だけでなく、貯蓄に回る割合も増加しますので正しいと言えるでしょう.

 

b GPPがY1の水準であるということは、貯蓄と投資が均衡している状態です。市場も健康状態になることから、超過需要は発生しません。超過需要が発生するのはGDPが均衡水準を下回ったときですので間違いです。

 

c S線とは貯蓄線のことで、傾きは限界貯蓄性向を表しますので正解です。

 

d 生産市場に超過供給が生じた場合には、生産計画は縮小されていくことになるでしょう。この場合の、「価格の下落で均衡GDPに到達する」という考え方は、古典派経済学の考え方です。つまりケインズの理論ではないため誤りです。

選択肢1. a:正  b:正  c:正  d:誤

違います。

選択肢2. a:正  b:正  c:誤  d:正

違います。

選択肢3. a:正  b:誤  c:正  d:誤

正解です。

選択肢4. a:誤  b:正  c:正  d:誤

違います。

選択肢5. a:誤  b:誤  c:正  d:正

違います。

まとめ

ケインズ経済学と古典派経済学の概念は必ずセットで覚えておかなければいけません。どこが違うのかが分かればそれだけで答えが見つかることも出てくるからです。

さらに特定のキーワードがいくつかあります。今回の出題で見ると平均貯蓄性向や限界貯蓄性向に関しては、必ず押さえておくべきキーワードです。言葉が理解できるだけでも解答が導き出せます。

もちろん計算式から答えを導き出すこともできますが、実際には出題されているキーワードを抑えているだけで、解答にたどり着ける問題でした。

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03

45度線分析に関する問題ですが、与えられた貯蓄-投資図からだけでも正答に辿り着くことは可能です。

以下、正誤に関わらず解説します。

 

a.平均貯蓄性向は所得の増加に応じて上昇する。

→貯蓄線Sが右肩上がりになっており、横軸GDPがY0→Y1所得が増加するにつれて平均貯蓄性向は上昇しています。


b.GDPがY1の水準にあるとき、生産物市場は超過需要の状態にある。

→.GDPがY1の水準では貯蓄線Sが投資利子感応度線Iを上回っており、生産物市場は超過供給の状態にあります。

 

※貯蓄線S、投資利子感応度線Iという用語が分かりにくいと思いますが、投資利子感応度線Iを需要と読み換えれば貯蓄>需要の状態なので超過需要の状態ではないことは判断できます。


c.S線の傾きは限界貯蓄性向に等しい。

→S線は貯蓄線Sのため、S線の傾きは限界貯蓄性向に等しいです。

 

なお、ここまでで選択肢は1つに絞り込まれます。

残りの解答群dはケインズ派の知識がなければ正答できないので、暗記してください。


d.生産物市場に超過供給が生じた場合、価格の下落を通じて均衡GDP(Y0)に到達する。

→本解答群は古典派の理論です。与件文に「ケインズの有効需要の原理」とありますので、ケインズ派では価格の上昇を通じて均衡GDP(Y0)に到達すると考えます。

選択肢1. a:正  b:正  c:正  d:誤

冒頭の解説より、「a:正 b: c:正 d:誤」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢2. a:正  b:正  c:誤  d:正

冒頭の解説より、「a:正 b: c: d:」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢3. a:正  b:誤  c:正  d:誤

冒頭の解説より、「a:正 b:誤 c:正 d:誤」の組み合わせであるため正解の選択肢となります。

選択肢4. a:誤  b:正  c:正  d:誤

冒頭の解説より、「a: b: c:正 d:誤」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢5. a:誤  b:誤  c:正  d:正

冒頭の解説より、「a: b:誤 c:正 d:」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

まとめ

【補足】

 

・45度線分析とは財市場を分析するモデルであり、生産、分配、支出の3要素が国民所得をどのように決定するのかを表しています。

・総需要と総供給が一致した点が、均衡国民所得になります。

・45度分析に貨幣市場を加えるとIS-LM分析となり、労働市場と貨幣市場を考慮したモデルがAD-AS分析です。

というのが教科書的な解説になりますが、筆者は中小企業診断士になった今でも45度線のことがよく分かりません。

 

本科目は2次試験では全くと言っていいほど関係がないため、学習しても理解できない論点に時間を使うよりは、頻出かつ理解できる論点で確実に60点を取れるような学習をする方が賢明です。私も、IS-LM分析やAD-AS分析など他の論点で得点を稼いで科目合格できました。

 

中小企業診断士試験は満点を取れる内容ではなく、満点を目指す必要もありません。(高得点を取ったからといって表彰されるわけでもなく、2次試験が免除されるわけでもありません)

 

頻出かつ理解できる論点で確実に60点取ることを最優先に学習した方が、モチベーションも上がります。

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